日本語論33 語源の語源 20180607
語源は語の由来をたずねる。語の来歴を知る。語源にその語の発生を知る。語源についての語源を考えると、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説によれば、語源etymology 個々の単語のいちばん初めの音形と意味、と、いうふうになるので、もともとでは日本語では、ないらしい。よくいうところの翻訳概念である。そして、同上事典の項目にいう。>語源学は古代ギリシアの時代からあり,「語源」という用語はギリシア語で「語の真の意味」 étymonに由来する。
語源を翻訳語というと、これで語源はわかったことになる。すると、日本語で語源を知ることはどうすることになるか。これもすでに、あたりまえのように、語の源 として、単語を分解し始めることで、そのひとつひとつの意味を明らかにしようとし、みなもとのことかと、わかったようなことになるが、すでにこの作業は、次のように言われる。世界大百科事典 第2版の解説であるから、その記述に意義を持つと認めることである。
>語原とも書く。日ごろ使っている言葉の一つ一つの語彙について,なぜそういうのかを問うことはほとんど意味がないし,また問う必要もない。なぜなら,我々はそれらの形を親の世代からただ継承しているにすぎず,また勝手にそれらを変更することも許されないからである。にもかかわらず語の語源etymology――これは古代ギリシア語のetymologia〈(語の)真の意味の探求〉に発する――を考えるということは,毎日なにげなく使っている言葉に対する歴史的な反省からはじまる。
語源を語原と書くのであるから、みなもと だけではなくて、はら なのであるとなると、ごの、はらっぱ とは、これはまた、わかったようでわからないことになる。始原に対して、原理原則である。あるいは、始源であるから、翻訳者の用字によって、同様の意味と判断しているから、そのもとは、日本語についてのことであって、そうではない淵源を持つことになる。翻訳を表記によって、語源学として考えることは、語源の語源についていえばできなくなる。さきの百科事典 第2版の解説には、続けて、次のように見える。
>語を構成する音と意味の結びつきは本来恣意的なものだから,その関係は時間とともにずれてくる。音が変化したり,意味が変わってくる。そこでこの関係を,長い歴史をもった言語の語彙について調べてみると,思わぬ結果がえられる。これが語源探索の大きな興味である。しかしその作業は必ずしも容易ではない。
"語源", 世界大百科事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2018-06-10)
語源また語原は百学連環に見える。日本語の辞書は語源説明をする場合に限られた語誌になってくることがあり、日本国語大辞典などの項目によって確かにすることがある。
>ごげん‐がく 【語源学・語原学】解説・用例〔名〕
語源を研究する学問。単語の形および意味・用法の起源と歴史を研究の対象とするもの。エティモロジー。
*百学連環〔1870〜71頃〕〈西周〉総論「語原学は Classic (上等の)Language, Greek and Latin 此の二語の中何レニても学ぶを好しとす」
日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2018-06-10)
なお、最近の研究に、次がある。日本国語大辞典を改版することがあり、そこに語誌の項目を記載した、その作業の成果である。
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日本語源大辞典
小学館発行の語源辞典。2005年刊行。前田富祺監修。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09501181
〈 書籍の内容 〉
約6000語を収録した、日本最大の本格的な語源辞典。日本語の語源について、古くからさまざまな人によって出されてきた諸説を、典拠とともに示して一覧できるようにしました。例えば、「猫」については、「ね」は鳴き声とする説、「ねこま」の略とする説、よく寝るから「寝子」とする説などなど。語源説は、上代の風土記をはじめ、各時代の注釈書・随筆・辞書・論文など約850の文献から採集。さらに、「参考」欄で、掲げられた語源説について補足説明も加えました。また、漢語や外来語を扱った「ことばのしおり」205編や、相撲・歌舞伎・食生活・方言などの「テーマで探ることばの由来」32編のコラムも充実。付録では、語源説の出典解説も付けました。