潮の満ち干である。
潮がみつることで都合が良いときには、その潮時であるし、その満ちていた潮が引くことになる潮時は、その都合をやめる、つまり終わるときである。
潮が引くのは引退するときのたとえであるし、潮によって助けられたことがあったりすれば、その引き際は、やはり、終わりであるわけだ。
この調査をよく読むと、質問の意図が見えて、潮時が、終わるときであったと解釈しても、それは致し方ないのではないか。
勘違いを起こすような問いかけである。
潮時の説明を日本国語大辞典、デジタル大辞泉によれば、その解釈は潮が満ちるときと、その潮のひけるときとを言う。
日本国語大辞典
しお‐どき[しほ:] 【潮時】
解説・用例〔名〕
(古く「しおとき」とも)
(1)潮水が満ちる時、また、引く時。
*伊勢記〔1186〕「しほときいかがあらむ、いまはみなとにはのぞみぬらむかし」
*言継集〔1574頃〕「いかにせむ塩時ならし浪の音の枕に高きしかの浦舟」
*浮世草子・好色一代女〔1686〕三・三「はや此舟すはりてさまざまうごかせども其甲斐なく〈略〉爰に汐時(シホドキ)まつとや」
(2)物事を行なったりやめたりするのに適する時。好機。
*雑俳・大黒柱〔1713〕「むりにまでしほ時の有る男にて」
*滑稽本・七偏人〔1857〜63〕二・下「其地此地尋ねさがすころは人も追々出盛りてよき汐時(シホトキ)とぞ成にける」
*或る女〔1919〕〈有島武郎〉後・二九「葉子はいい潮時を見計って巧みにも不承不承さうに倉地の言葉に折れた」
(3)時期。時間。特に出産や死亡の時についていう。
*俳諧・伊勢山田俳諧集〔1650〕寄合「車座にゐていらつ門出 塩時のよきとさいさいつけて来ぬ」
*俳諧・広原海〔1703〕一「愚さへ笑ふ汐時泣く知死期」
*大つごもり〔1894〕〈樋口一葉〉下「今朝よりのお苦るしみに潮時(シホドキ)は午後、初産なれば」
*生〔1908〕〈田山花袋〉二八「潮時といふことがあるもんださうだ」
*銀の匙〔1913〜15〕〈中勘助〉前・二「私の生れる時には母は殊のほかの難産で〈略〉ひたすら潮時をまってゐた」
(4)潮が変化し、魚がよく餌(え)を食うようになった時をいう。
デジタル大辞泉
しお‐どき〔しほ‐〕【潮時】
1 潮の満ちる時、また、引く時。
2 物事を始めたり終えたりするのに、適当な時機。好機。「―を待つ」「ピッチャー交代の―」
3 時間。特に、一日のうちで出産や死亡の多く起こる時間。潮の干満の時刻に合わせて起こるからという。
[補説]2について、文化庁が発表した平成24年度「国語に関する世論調査」では、本来の意味とされる「ちょうどいい時期」で使う人が60.0パーセント、本来の意味ではない「ものごとの終わり」で使う人が36.1パーセントという結果が出ている。
http://prmagazine.bunka.go.jp/rensai/kotoba/kotoba_003.html
「潮時」が来たら「終わり」なのか。
文化庁国語課
>
「潮時」とは,本来どのような意味なのでしょうか。
答 ちょうどいい時期,という意味です。
「潮時」を辞書で調べてみましょう。
「日本国語大辞典 第2版」(平成12~14年・小学館)
しおどき【潮時】 [名]物事を行ったりやめたりするのに適する時。好機。
「広辞苑 第6版」(平成20年・岩波書店)
しおどき【潮時】 [名]ある事をするための,ちょうどいい時期。好機。時期。
このように「潮時」は,本来,あることをするためのちょうどいい時期を表しており,「ものごとの終わり」という意味で使われる言葉ではありません
>では,本来とは違う意味で使われるようになっているのはなぜでしょうか。インターネット上の「潮時」を使った文章等を参考にして考えてみましょう。
まず,多く見られるのはスポーツ選手や政治家などの「引退」のタイミングに関する記述です。以下はニュースサイトの見出しにあったものを一部直したものです。
「W杯花道に…○○選手が代表引退「今が潮時」」
「○○選手,涙の引退会見…「潮時だと思った」」
「○○元大臣,政界引退を正式表明 「この辺が潮時」」
これらの見出しは,どれも本人のコメントを引用しているものです。それぞれ,引退するのにちょうどいいタイミング,という意味で「潮時」を使っているのかもしれませんが,この見出しだけを読むと,「潮時」=「引退の時期」というように解釈する人がいても不思議ではありません。
また,ネット上では,恋愛に関して「潮時」を用いている記述も目立ちます。次に挙げたのは,女性に向けた情報サイトなどの見出しに見られるような表現です。
「引き際が大切! …カップルの潮時」
「もうこれ以上は続かないかも 恋愛の潮時を見極める」
「もう潮時? …女性が別れを意識する恋人の言動」
恋愛では,「婚約の好機」や「結婚するタイミング」という意味で「潮時」を用いることもできるのですが,実際には,別れやつらい決断をしなければならない場合について使われることの方が多く,「ちょうどいい時期」という意味合いが薄れています。ここに挙げた例についても「潮時」=「別れのとき」として使われているように感じられます。
このように,「潮時」という言葉は,積極的な文脈に用いられることが余りなく,喜んで迎えるものではない「引退」や「別れ」などのタイミングについて使われることが多いようです。そのために「あることをするのに,ちょうどいい時期」という意味が伝わりにくくなり,「潮時」自体を「ものごとの終わり」という意味で読み取ってしまう人が増えているのかもしれません。
潮がみつることで都合が良いときには、その潮時であるし、その満ちていた潮が引くことになる潮時は、その都合をやめる、つまり終わるときである。
潮が引くのは引退するときのたとえであるし、潮によって助けられたことがあったりすれば、その引き際は、やはり、終わりであるわけだ。
この調査をよく読むと、質問の意図が見えて、潮時が、終わるときであったと解釈しても、それは致し方ないのではないか。
勘違いを起こすような問いかけである。
潮時の説明を日本国語大辞典、デジタル大辞泉によれば、その解釈は潮が満ちるときと、その潮のひけるときとを言う。
日本国語大辞典
しお‐どき[しほ:] 【潮時】
解説・用例〔名〕
(古く「しおとき」とも)
(1)潮水が満ちる時、また、引く時。
*伊勢記〔1186〕「しほときいかがあらむ、いまはみなとにはのぞみぬらむかし」
*言継集〔1574頃〕「いかにせむ塩時ならし浪の音の枕に高きしかの浦舟」
*浮世草子・好色一代女〔1686〕三・三「はや此舟すはりてさまざまうごかせども其甲斐なく〈略〉爰に汐時(シホドキ)まつとや」
(2)物事を行なったりやめたりするのに適する時。好機。
*雑俳・大黒柱〔1713〕「むりにまでしほ時の有る男にて」
*滑稽本・七偏人〔1857〜63〕二・下「其地此地尋ねさがすころは人も追々出盛りてよき汐時(シホトキ)とぞ成にける」
*或る女〔1919〕〈有島武郎〉後・二九「葉子はいい潮時を見計って巧みにも不承不承さうに倉地の言葉に折れた」
(3)時期。時間。特に出産や死亡の時についていう。
*俳諧・伊勢山田俳諧集〔1650〕寄合「車座にゐていらつ門出 塩時のよきとさいさいつけて来ぬ」
*俳諧・広原海〔1703〕一「愚さへ笑ふ汐時泣く知死期」
*大つごもり〔1894〕〈樋口一葉〉下「今朝よりのお苦るしみに潮時(シホドキ)は午後、初産なれば」
*生〔1908〕〈田山花袋〉二八「潮時といふことがあるもんださうだ」
*銀の匙〔1913〜15〕〈中勘助〉前・二「私の生れる時には母は殊のほかの難産で〈略〉ひたすら潮時をまってゐた」
(4)潮が変化し、魚がよく餌(え)を食うようになった時をいう。
デジタル大辞泉
しお‐どき〔しほ‐〕【潮時】
1 潮の満ちる時、また、引く時。
2 物事を始めたり終えたりするのに、適当な時機。好機。「―を待つ」「ピッチャー交代の―」
3 時間。特に、一日のうちで出産や死亡の多く起こる時間。潮の干満の時刻に合わせて起こるからという。
[補説]2について、文化庁が発表した平成24年度「国語に関する世論調査」では、本来の意味とされる「ちょうどいい時期」で使う人が60.0パーセント、本来の意味ではない「ものごとの終わり」で使う人が36.1パーセントという結果が出ている。
http://prmagazine.bunka.go.jp/rensai/kotoba/kotoba_003.html
「潮時」が来たら「終わり」なのか。
文化庁国語課
>
「潮時」とは,本来どのような意味なのでしょうか。
答 ちょうどいい時期,という意味です。
「潮時」を辞書で調べてみましょう。
「日本国語大辞典 第2版」(平成12~14年・小学館)
しおどき【潮時】 [名]物事を行ったりやめたりするのに適する時。好機。
「広辞苑 第6版」(平成20年・岩波書店)
しおどき【潮時】 [名]ある事をするための,ちょうどいい時期。好機。時期。
このように「潮時」は,本来,あることをするためのちょうどいい時期を表しており,「ものごとの終わり」という意味で使われる言葉ではありません
>では,本来とは違う意味で使われるようになっているのはなぜでしょうか。インターネット上の「潮時」を使った文章等を参考にして考えてみましょう。
まず,多く見られるのはスポーツ選手や政治家などの「引退」のタイミングに関する記述です。以下はニュースサイトの見出しにあったものを一部直したものです。
「W杯花道に…○○選手が代表引退「今が潮時」」
「○○選手,涙の引退会見…「潮時だと思った」」
「○○元大臣,政界引退を正式表明 「この辺が潮時」」
これらの見出しは,どれも本人のコメントを引用しているものです。それぞれ,引退するのにちょうどいいタイミング,という意味で「潮時」を使っているのかもしれませんが,この見出しだけを読むと,「潮時」=「引退の時期」というように解釈する人がいても不思議ではありません。
また,ネット上では,恋愛に関して「潮時」を用いている記述も目立ちます。次に挙げたのは,女性に向けた情報サイトなどの見出しに見られるような表現です。
「引き際が大切! …カップルの潮時」
「もうこれ以上は続かないかも 恋愛の潮時を見極める」
「もう潮時? …女性が別れを意識する恋人の言動」
恋愛では,「婚約の好機」や「結婚するタイミング」という意味で「潮時」を用いることもできるのですが,実際には,別れやつらい決断をしなければならない場合について使われることの方が多く,「ちょうどいい時期」という意味合いが薄れています。ここに挙げた例についても「潮時」=「別れのとき」として使われているように感じられます。
このように,「潮時」という言葉は,積極的な文脈に用いられることが余りなく,喜んで迎えるものではない「引退」や「別れ」などのタイミングについて使われることが多いようです。そのために「あることをするのに,ちょうどいい時期」という意味が伝わりにくくなり,「潮時」自体を「ものごとの終わり」という意味で読み取ってしまう人が増えているのかもしれません。