真字と仮名 日本語表記論6
真字と仮字と名付けていた文字は、正字というとらえ方ではない。日本語表記にとらえられたのは漢字と仮名であった。それについて草のことを仮名とみる捉え方があったかどうかは確かではない。片仮名はそのように呼称されていたことから、書きこむ字体からも仮字であった。字通によれば、仮字は、旧字假であり、それは仮面のこと、また、かりにその象を借るものをいう、と説明する。
漢字の草書体を片仮名にしたて使ったという説明があるが、仮名文字についてそれぞれの経緯をたどればおのずと用途も名称も区別し意識されていただろうと推測する。草のことは崩し字として、草書体の文字を、万葉仮名、上代仮名そして変体仮名のように、編み出されてきた。歌謡の日本語音韻を一字一音で表すなどして書き表し方に上代人、みやこびとたちの実験があったとみてよい。
次は、日本国語大辞典の説明である。
>平安初期に、南都仏教の学僧たちの間で、経文に訓点を加えるために万葉がなを簡略化して用いたところに発すると考えられている。平安時代には、その字源、その省略法がさまざまで、字体に統一がなかったが、次第に整理され、明治三三年(一九〇〇)に小学校令施行規則で現在通用の字体が定まった。
>かたかなの多くは省筆によるので、これを略体がなとよぶこともある。その字源は、点画の簡単な漢字の形をそのままとったもの(チ‐千、ニ‐二、ハ‐八など)、漢字の最初の数画をとったもの(ク‐久、サ‐散、ノ‐乃など)、最後の数画をとったもの(エ‐江、ヌ‐奴、ホ‐保など)、草書体また行書体にもとづくもの(キ‐幾、シ‐之、ヤ‐也など)があり、「ツ」のように字源を定めがたいものもある。「ン」は比較的後にかたかなの列に加えられたもので、「ン」以外はひらがなの「いろは」に対応する。
>かたかなには、かな表として五十音図が用いられることが多かった。濁点、半濁点を字の右上に付して濁音、半濁音を表わすが、過去の文献では、濁点等がなくても、濁音等で読まれるべき場合がある。かたかなが漢文の訓読から独立して、国語の文章をつづるのにも用いられるようになったのは平安後期で、それ以来、漢字まじりかたかな文とひらがな文とが並び行なわれることになった。現在では、ひらがな文の中にかたかなを用いて、主に外来語や擬声語・擬態語などに用い、また動植物名をかたかなで表わす習慣がある。なお、発音を示すときにはかたかなを用いることが多く、かたかなを小文字にして普通の国語にない音節を表わしたり、特に表音の必要のある場合などに補助的に用いることがある(ちェッ、ふァ、スィなど)。かたかんな。やまとがな。五十音がな。豆仮名。
*宇津保〔970~999頃〕国譲上「男にてもあらず、女にてもあらず、あめつちぞ。そのつぎに男手、はなちがきに書きて。〈略〉つぎにかたかな」
真字と仮字と名付けていた文字は、正字というとらえ方ではない。日本語表記にとらえられたのは漢字と仮名であった。それについて草のことを仮名とみる捉え方があったかどうかは確かではない。片仮名はそのように呼称されていたことから、書きこむ字体からも仮字であった。字通によれば、仮字は、旧字假であり、それは仮面のこと、また、かりにその象を借るものをいう、と説明する。
漢字の草書体を片仮名にしたて使ったという説明があるが、仮名文字についてそれぞれの経緯をたどればおのずと用途も名称も区別し意識されていただろうと推測する。草のことは崩し字として、草書体の文字を、万葉仮名、上代仮名そして変体仮名のように、編み出されてきた。歌謡の日本語音韻を一字一音で表すなどして書き表し方に上代人、みやこびとたちの実験があったとみてよい。
次は、日本国語大辞典の説明である。
>平安初期に、南都仏教の学僧たちの間で、経文に訓点を加えるために万葉がなを簡略化して用いたところに発すると考えられている。平安時代には、その字源、その省略法がさまざまで、字体に統一がなかったが、次第に整理され、明治三三年(一九〇〇)に小学校令施行規則で現在通用の字体が定まった。
>かたかなの多くは省筆によるので、これを略体がなとよぶこともある。その字源は、点画の簡単な漢字の形をそのままとったもの(チ‐千、ニ‐二、ハ‐八など)、漢字の最初の数画をとったもの(ク‐久、サ‐散、ノ‐乃など)、最後の数画をとったもの(エ‐江、ヌ‐奴、ホ‐保など)、草書体また行書体にもとづくもの(キ‐幾、シ‐之、ヤ‐也など)があり、「ツ」のように字源を定めがたいものもある。「ン」は比較的後にかたかなの列に加えられたもので、「ン」以外はひらがなの「いろは」に対応する。
>かたかなには、かな表として五十音図が用いられることが多かった。濁点、半濁点を字の右上に付して濁音、半濁音を表わすが、過去の文献では、濁点等がなくても、濁音等で読まれるべき場合がある。かたかなが漢文の訓読から独立して、国語の文章をつづるのにも用いられるようになったのは平安後期で、それ以来、漢字まじりかたかな文とひらがな文とが並び行なわれることになった。現在では、ひらがな文の中にかたかなを用いて、主に外来語や擬声語・擬態語などに用い、また動植物名をかたかなで表わす習慣がある。なお、発音を示すときにはかたかなを用いることが多く、かたかなを小文字にして普通の国語にない音節を表わしたり、特に表音の必要のある場合などに補助的に用いることがある(ちェッ、ふァ、スィなど)。かたかんな。やまとがな。五十音がな。豆仮名。
*宇津保〔970~999頃〕国譲上「男にてもあらず、女にてもあらず、あめつちぞ。そのつぎに男手、はなちがきに書きて。〈略〉つぎにかたかな」