こころ 心
こころ、ここる か。
心字を当て、心臓をとらえた。
キュッとなる心、凝る であろうかと、古来、説があるがその証拠はない。
心にあるものはなにか。なにもない。血液の流れを絶え間なく作り出す臓器に、脳が命令を送る。
怖い、確かでない、穏やかならざるなにものかに、あるいは、喜び、たのしさ、怒りについて、笑いもそうだろう。
だから、凝るときがあってはならない、こころ がよいのである。
心には情意、精神、懐古など意味を当てた文字づかいがある。
それはいずれも人間が存在してその感覚のもとに、ある刺激を受けた脳が、心臓に及ぼすものをとらえているのである。
心は生きていること、そのものであり、生命に躍動する。
なお、心持ちと気持ちという語が、時代を下って使われるようになるが、その語のそれぞれの消長があって、心は気に代わるようだ。
こころ
人間の理性、知識、感情、意志など、あらゆる精神活動のもとになるもの。また、そうした精神活動の総称。
*古事記〔712〕下・歌謡「大君の 許許呂(ココロ)をゆらみ 臣(おみ)の子の 八重の柴垣 入り立たずあり」
表面からはわからない本当の気持。精神・気持のありのままの状態。本心。
*古事記〔712〕上「然らば汝(いまし)の心の清く明きは何(いかに)して知らむ」
先天的、または習慣的にそなわっている精神活動の傾向。性格。性分。気立て。
*万葉〔8C後〕一二・二九八三「高麗剣(こまつるぎ)己(わ)が景迹(こころ)からよそのみに見つつや君を恋ひ渡りなむ〈作者未詳〉」
人知れず考えや感情などを抱くところ。心の中。内心。
*霊異記〔810~824〕下・八「猶、願を果さむと、〓(かへり)みて常に懐(こころ)に愁ふ〈真福寺本訓釈 懐 心也〉」
ことばの発想のもとになる、人間の意識や感情。言語表現を支える精神活動。
*古事記〔712〕序「上古の時、言(ことば)意(こころ)、並びに朴(すなほ)にして、文を敷き句を構ふること、字に於きて即ち難し。已に訓に因りて述べたるは詞(ことば)心に逮ばず」
人体で、心の宿ると考えられたところ。心臓。胸のあたり。胸さき。
*古事記〔712〕下・歌謡「大猪子が 腹にある 肝向ふ 許許呂(ココロ)をだにか 相思はずあらむ」
【同訓異字】
こころ【心・情・意・精・懐】
【心】(シン)心臓。「肝心」「心不全」 気持。思い。考え。精神。「心境」「心身」「感心」 意味。わけ。まんなか。かなめ。重要な部分。「中心」「核心」「重心」《古こころ・なさけ・むね・さね・さなご・なかひだ・なかご・ほとり・ほし》
【情】(ジョウ・セイ)生まれながらの心。心の働き。気持。「感情」「情熱」 なさけ。思いやりの心。男女の愛。「愛情」「同情」 ありさま。あじわい。おもむき。「事情」「風情」《古こころ・こころざし・なさけ・まこと・まことに・あはれぶ》
【意】(イ)気持。思い。考え。こころざし。心の働き。「意志」「意識」 わけ。おもむき。内容。「意味」「極意」《古こころ・こころざし・おもふ・おもひ・もと・うたがふ・おもむく》
【精】(セイ・ショウ)生命や存在の根源となるもの。たましい。まごころ。「精神」「精魂」《古たましひ・まなこ・まこと・くはし・よし・すぐる・えらぶ・しらぐ・みがく・こまかなり・すこし・ほそし》
【懐】(カイ)心にいだく。胸にいだいた思い。「感懐」「述懐」 なつかしむ。しのぶ。「懐古」「追懐」《古こころ・いだく・だく・おもふ・おもひ・なつく・なつかしむる・なつかし・やすんず・ふところ・ふところにす・かくる・とどむ・とどまる・はらむ》
日本国語大辞典 気持ち
物事に接して、それに対して感じた心の状態。心のあり方。感情。気分。物事に対してどのように感じているかという心の状態や、心のおかれている状態、物事に対する心のもち方などについていう。
語誌
【語誌】
(1)類義の「心持(こころもち)」は一三世紀末に使われ始めたと見られるが、「気持」は遅れて一五世紀末に見え始める。
(2)「心持」は元来、心の持ち方ということで、「気だて」「心がまえ」などの意で使われたが、江戸時代中期以降、物事に際して感じた心の状態の意が主になってからは「心地」の俗語的な表現として会話文に多用されるようになった。
(3)「気持」は、感覚的な心の状態の意であるが、「心持」の主な意味が変わったため、江戸中期以降、類義となり、「心持」より俗語的な感じで使われた。
(4)明治期には「心持」が日常語となって多用されたが、「気持」は俗な感じが強かったため、用例は少ない。
(5)大正期になると「気持」の俗な感じが少し薄れて「心持」と併用されるようになるが、やや改まった場合は「心持」の方が使われた。
(6)昭和期では「気持」が圧倒的に優勢になり、特に第二次世界大戦後は「心持」の使用が大きく減って、現在では若い人の間ではほとんど使われなくなっている。
こころ、ここる か。
心字を当て、心臓をとらえた。
キュッとなる心、凝る であろうかと、古来、説があるがその証拠はない。
心にあるものはなにか。なにもない。血液の流れを絶え間なく作り出す臓器に、脳が命令を送る。
怖い、確かでない、穏やかならざるなにものかに、あるいは、喜び、たのしさ、怒りについて、笑いもそうだろう。
だから、凝るときがあってはならない、こころ がよいのである。
心には情意、精神、懐古など意味を当てた文字づかいがある。
それはいずれも人間が存在してその感覚のもとに、ある刺激を受けた脳が、心臓に及ぼすものをとらえているのである。
心は生きていること、そのものであり、生命に躍動する。
なお、心持ちと気持ちという語が、時代を下って使われるようになるが、その語のそれぞれの消長があって、心は気に代わるようだ。
こころ
人間の理性、知識、感情、意志など、あらゆる精神活動のもとになるもの。また、そうした精神活動の総称。
*古事記〔712〕下・歌謡「大君の 許許呂(ココロ)をゆらみ 臣(おみ)の子の 八重の柴垣 入り立たずあり」
表面からはわからない本当の気持。精神・気持のありのままの状態。本心。
*古事記〔712〕上「然らば汝(いまし)の心の清く明きは何(いかに)して知らむ」
先天的、または習慣的にそなわっている精神活動の傾向。性格。性分。気立て。
*万葉〔8C後〕一二・二九八三「高麗剣(こまつるぎ)己(わ)が景迹(こころ)からよそのみに見つつや君を恋ひ渡りなむ〈作者未詳〉」
人知れず考えや感情などを抱くところ。心の中。内心。
*霊異記〔810~824〕下・八「猶、願を果さむと、〓(かへり)みて常に懐(こころ)に愁ふ〈真福寺本訓釈 懐 心也〉」
ことばの発想のもとになる、人間の意識や感情。言語表現を支える精神活動。
*古事記〔712〕序「上古の時、言(ことば)意(こころ)、並びに朴(すなほ)にして、文を敷き句を構ふること、字に於きて即ち難し。已に訓に因りて述べたるは詞(ことば)心に逮ばず」
人体で、心の宿ると考えられたところ。心臓。胸のあたり。胸さき。
*古事記〔712〕下・歌謡「大猪子が 腹にある 肝向ふ 許許呂(ココロ)をだにか 相思はずあらむ」
【同訓異字】
こころ【心・情・意・精・懐】
【心】(シン)心臓。「肝心」「心不全」 気持。思い。考え。精神。「心境」「心身」「感心」 意味。わけ。まんなか。かなめ。重要な部分。「中心」「核心」「重心」《古こころ・なさけ・むね・さね・さなご・なかひだ・なかご・ほとり・ほし》
【情】(ジョウ・セイ)生まれながらの心。心の働き。気持。「感情」「情熱」 なさけ。思いやりの心。男女の愛。「愛情」「同情」 ありさま。あじわい。おもむき。「事情」「風情」《古こころ・こころざし・なさけ・まこと・まことに・あはれぶ》
【意】(イ)気持。思い。考え。こころざし。心の働き。「意志」「意識」 わけ。おもむき。内容。「意味」「極意」《古こころ・こころざし・おもふ・おもひ・もと・うたがふ・おもむく》
【精】(セイ・ショウ)生命や存在の根源となるもの。たましい。まごころ。「精神」「精魂」《古たましひ・まなこ・まこと・くはし・よし・すぐる・えらぶ・しらぐ・みがく・こまかなり・すこし・ほそし》
【懐】(カイ)心にいだく。胸にいだいた思い。「感懐」「述懐」 なつかしむ。しのぶ。「懐古」「追懐」《古こころ・いだく・だく・おもふ・おもひ・なつく・なつかしむる・なつかし・やすんず・ふところ・ふところにす・かくる・とどむ・とどまる・はらむ》
日本国語大辞典 気持ち
物事に接して、それに対して感じた心の状態。心のあり方。感情。気分。物事に対してどのように感じているかという心の状態や、心のおかれている状態、物事に対する心のもち方などについていう。
語誌
【語誌】
(1)類義の「心持(こころもち)」は一三世紀末に使われ始めたと見られるが、「気持」は遅れて一五世紀末に見え始める。
(2)「心持」は元来、心の持ち方ということで、「気だて」「心がまえ」などの意で使われたが、江戸時代中期以降、物事に際して感じた心の状態の意が主になってからは「心地」の俗語的な表現として会話文に多用されるようになった。
(3)「気持」は、感覚的な心の状態の意であるが、「心持」の主な意味が変わったため、江戸中期以降、類義となり、「心持」より俗語的な感じで使われた。
(4)明治期には「心持」が日常語となって多用されたが、「気持」は俗な感じが強かったため、用例は少ない。
(5)大正期になると「気持」の俗な感じが少し薄れて「心持」と併用されるようになるが、やや改まった場合は「心持」の方が使われた。
(6)昭和期では「気持」が圧倒的に優勢になり、特に第二次世界大戦後は「心持」の使用が大きく減って、現在では若い人の間ではほとんど使われなくなっている。