日本語教育で文法を教える
日本語教育では文法論を説明するのではないことはよくわかることである。文型という文法のとらえ方で日本語を使うようにできることが文法を教えることになる。学習者にとってわからない、わかりにくい、習得をするのに困難なことを、わかりやすくして、日本語を使うことができるようにすることである。
しかし、そうは言っても学習者は文法のどの部分が習得しにくいかということは、ひとりひとりの学習によることであるから、教師にとってみれば、日本語教育での文法のことがらを体系的に知っていなければならないこととなる。そのために文型、品詞、文の種類については一通りのことを知識として持つ。
日本語教育文法 文型 表現文型
日本語の文型について述べる。日本語教育では文型を考えるが、そのためにまず日本語文型を説明することがあり、その記述説明を日本語学で体系に入れようとする。しかし国語学、国語の文法には文型のとらえ方がない。つまり学校文法では文型を説明しないことをよく知るべきである。その代わりの考え方は、構文にあり、国語文法における品詞論で文の捉え方に説明がある。
品詞論について、構文論を説明するが、構文を体系的に記述説明することは行われてこなかった。どういうことかと言うと、それが品詞の文法機能の説明の中で行われてしまうからである。いまでも、国語文法は品詞の段階で説明ができるので、その延長上に、複合辞という単位で文機能の説明を試みている。これは、日本語教育文法で作文を指導する際に語法として行われているゆえんである。
日本語文型は日本語教育の文法で説明がある。それは英語文法を概念とする学習者にわかりよくするための説明として行われる。すなわち、英語文法の基本となる文型に合わせて、構造文型を分類する。その分類は基本的に英語の構造文型とは異なるが、なぜ日本語文法に基本文型があると説明するかというと、日本語にも基本文型となるものを分析して説明することが英語母語話者の日本語習得に、教育、学習上で有効だと考えられたからである。
したがって構造文型として文とは何か、文の要素にはなにがあるかをとらえる。ここに学習文法として日本語教育文法があることを知るとよい。日本語学は日本語教育にある文法説明を入れて日本文法とするが、体系としできていないので、それを学説として求めるのは難しい。ただ一つを上げるなら、言語学大辞典の日本語の項目に、日本語文法を体系として記述説明するものがある。
それでは日本語教育の文型とはどのようなものであるかと言うと、基本5文型は構造文型の枠組みとして見え、その一方で、話者の表現意図を分類する表現文型が説明できる。構造文型は学習者の文法にあわせた文型のとらえ方で、文型を抽象して規則化すると、英語文法では5文型を立てて、SV、SVC、SVO、SVOO 、SVOC、SVC というように整理することがあるが、この文型にならって言うと、日本語の文型は、SV,SOV、SCV、主語はS、動詞はV、目的語はO、補語はCとなる。しかし、これは主語と述語のあいだで、名詞と動詞の関係を表しているに過ぎない。
ここで、英語の5文型について整理するように、日本語を文法の構造からみれば、文の末尾にV、A、Nというように、動詞だけではない文末述語の用法がある。さらに、そのそれぞれには対応する主語の位置にあるものが、Subject は、必須要素としてあるわけではない。主語をもって説明する構文は学習者の文法構造に合わせてとらえているものであるから、構文の説明は、日本語でいえば、国語の説明のようになり、それを構造化して抽象すれば、文末に動詞を持つ文、文末に形容詞を持つ文、文末に名詞を持つ文となり、いずれも品詞による日本語の述語用法である。
ここに5文型をもって対応するなら、日本語文型の重要なものに、ふたつを加える。動詞の文型に、存在を表す文と、複文構成を持つ助詞「は」を文頭に持つ文である。それを、それぞれ、存在文、wa…ga…構文とする。それは重要な文法のとらえ方となる、存在を表す文は主語を示すことと、動詞の使い分けに規則性があることによって学習者に日本語文法をわからせることと、その一方では、複文が持つ日本語の文法の特質を知らせる文型となることである。