文化、文明の語義に、ともに、文字がある。字通によれば、象形、文身の形である。その字形は、卜文、金文の、人の正面形の胸部に文身の文様を加えた形だと言う。その文様には×や心字形を用いる、と説明があり、さらには、中国の古代に文身の俗があったことは卜文によって明らかであり、のち呉、越、東方の諸族には、長くその俗が残された、という解説である。祖先は漢字を入れて、文を、日本語読みして、ひかり かざる と訓をつけた。そして、この文字、コトバには、文身から学問技芸までの意味がある。ちなみに字通の熟語によれば、文化は文物教科、文明は文采のあること、文化の行われる世、と、例を挙げる。文明の語は、文化とともに文物としてあった。このように、文化、文明の起こりは、ことばのあやにある。
文化を議論するのは、ときを経て、ところを変えて、その概念をまたヨーロッパの文化、文明から日本語に取り入れて、おこなわれる。さらに、人類学の文化の定義がある。文化そのものの広がりを、人類としてとらえるところは、漢字を入れた日本語の学びと視点が異なるところである。文明の発生、文明の成立と形成をみる見方がそこにはある。civilization の語源には、ラテン語で、都市、国家を意味する、civitas に由来するという。ローマ時代の文明とは、字義通りに都市化や都市生活のことであったとすることができる。文化は歴史とともにさまざま概念を得てその意味する内容をとらえるようになる。フリー百科事典の項目に現れている。さきの文化の概念のもとになる古典、日常文化が文明と交差する。
字通より。
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〔名義抄〕文 ヒカリ・カザル・モトロク・モトロカス・フミ・アヤ・オゴク・マダラ・ウルハシ
〔字鏡集〕文 ヒカリ・マダラク・オモフ・マダラ・ウルハシ・アヤ・モトロク・オゴク・フミ・カザル・ヱガク
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訓義
[1] 文身、通過儀礼として、からだに文様を施す。いれずみ。
[2] あや、まだら、もよう、いろどり、かざり。
[3] あらわれ、すじ、みち。
[4] もじ、ふみ、ことば。
[5] みやびやか、文徳。
[6] 学問、技芸。
[7] 〓(文にしたごころ-注)と通じ、つとめる。
[8] 紊と通じ、みだれる。
[9] 字はまた〓(文にサンづくり-注)に作る。
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【文化】ぶんか(くわ) 文物教化。前蜀・杜光庭〔鶴鳴、枯樹を化して再生せしむるを賀する表〕陛下、圖に膺(あた)り運を啓(ひら)き、紀を握り天を承け、文化を修めて遐荒(かくわう)を服し、武威を耀かして九有を平らぐ。
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【文明】ぶんめい 文采のあること。文化の行われる世。宋・司馬光〔范景仁に呈す〕詩 朝家の文明、及ぶ所遠し 今に於て臺閣、尤も蟬聯(せんれん)(文才相継ぐ)
ウイキペディア、文化の項より。
>ラテン語 colere(耕す)から派生したドイツ語の Kultur や英語の culture は、本来「耕す」、「培養する」、「洗練したものにする」、「教化する」といった意味合いを持つ。18世紀後半に、産業化を示す技術革新、生産性の向上、社会の官僚化といった人間の外部に相当するものとしての文明と対比される、人間の精神面での向上を示す言葉として位置づけるものとしての文化という意味で議論を展開したのがマシュー・アーノルドである。この定義では文化は教養と言い換えることもできる。
>人間と自然や動物の差異を説明するための概念が文化である。こうした定義の最初のものはイギリスの人類学者エドワード・タイラー (1871)の、
広く民族学で使われる文化、あるいは文明の定義とは、知識、信仰、芸術、道徳、法律、慣行、その他、人が社会の成員として獲得した能力や習慣を含むところの複合された総体のことである — エドワード・タイラー、Primitive culture
である。
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古典的・日常的な文化
人類学的文化
>つまり文化は、それが非言語的なものであっても言語的な性質を備えている象徴的な事象と定義するもので、構造主義文化人類学者によく使われる。
社会学的文化
>文化人類学者のクリフォード・ギアツもパーソンズ由来の文化を採用しているので、現在では社会学的文化と人類学的文化の境目はあまり重要ではない。
考古学的文化
詳細は「文化 (考古学)」を参照
文化を担う集団
>人間集団によって作られるが、同時に個々の人間も環境という形で、不断に文化に適応、学習させられていると考えられる。日本文化や東京の下町文化、室町文化など地理的、歴史的なまとまりによって文化を定義するもの、おたく文化のように集団を構成する人を基準に文化を定義するもの、出版文化や食文化のように人の活動の種類によって定義するものなど、個々の文化は様々な形で定義、概念化される。
動物の文化
>野生動物の長期野外調査の蓄積によって、同種個体でも地域差が見られたりすることや道具を使用することは知られている。
文化の発祥と伝播・変容
>例えば仏教は、インドで発祥し、宗派の分裂や各地の文化の影響もありつつ、中央アジア諸国や東アジア諸国など周辺地域へと伝播していく(上座部仏教や大乗仏教も参照)。その後日本にも伝えられるが、当初はその受容につき激しく争われた(崇仏論争、仏教公伝も参照)。受容後は中国などからの影響も受けつつも、日本独自の宗派も発達し、神道との融合なども行われた(神仏習合)。
文化にまつわる議論
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単一発展史観
環境に対する適応としての文化
文化についての語り
誰の文化なのか
文化の権利
カルチュラル・スタディーズ[
未開文化の消滅
混血文化としての観光
多文化主義と文化隔離主義
文化資本と社会構造
同上、文明の項より。
>文明(ぶんめい、英: civilization, civilisation、ラテン語: civilizatio キーウィーリザティオー)とは、人間が作り出した高度な文化あるいは社会を包括的に指す。
>西欧語の "civilization"(英語)などの語源は、ラテン語で「都市」「国家」を意味する "civitas" に由来する。ローマ時代の文明とは、字義通りに都市化や都市生活のことであった。