面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ちょんまげぷりん」

2010年09月16日 | 映画
シングルマザーのひろ子(ともさかりえ)は、息子の友也と二人暮らし。
ある日、二人は侍の恰好をした木島安兵衛(錦戸亮)と名乗る男と出会う。
テレビか映画の撮影?はたまたもしかすると頭が…?
いぶかしがるひろ子だが、安兵衛の話を総合すると、どうやら彼は江戸時代からタイムスリップしてきた侍だった!

ひろ子は、友也も懐き、悪い人間ではなく、真っ直ぐなところを見せる安兵衛を、しばらく居候として面倒をみることにする。
安兵衛は居候の礼に、働くひろ子を助けるべく家事全般を引き受けると宣言、料理・洗濯・掃除を次々と完璧にこなしていった。

ある日、熱を出して寝込み、食欲が無いという友也のために、安兵衛はプリンを作る。
「美味い!」と友也が喜んだその時をきっかけに、安兵衛はお菓子作りに目覚めて…


「男は外向きの仕事、女は奥向き(家内)の仕事」という役割分担が当然という意識の安兵衛。
江戸時代の侍なのだから当然の発想なのだが、現代社会で懸命に生きるシングルマザーのひろ子を見て、また彼女のもとに居候することとなったことから発想を転換する。
そして「外向きの仕事」をひろ子が担うのであれば、自分は「奥向きの仕事」を担うことにする。
柔軟な発想ができる安兵衛は現代社会にもどんどん馴染んでいくが、その一方で常に背筋を伸ばし、礼儀を重んじる姿勢を貫く。
それは現代人が忘れがちな何かを思い出させてくれるものであり、一本筋の通った強さの表れであった。

そんなひろ子と安兵衛は徐々に“良きパートナー”となっていくのだが、安兵衛に菓子職人としての才能が開花していくにつれて、二人の間に溝ができ始める。
それは、ひろ子がシングルマザーとなる要因を作り出した、かつて通ってきた道でもあった。
しかし、安兵衛の真っ直ぐな性格と持ち前の柔軟な発想もあって、二人は困難を克服していく。
そしてすっかり家族のようになった三人。
このまま幸せな暮らしが、いつまでも続くと思ったのだが…

ただ甘いだけではなく、また切なくて苦しいだけでもないハートウォーミングなラストシーンが秀逸。
美味しいプリンに欠かせないカラメルソースのようにちょっとほろ苦い、オトナ向けファンタジーの佳作。


ちょんまげぷりん
2010年/日本  監督・脚本:中村義洋
原作:荒木源
出演:錦戸亮、ともさかりえ、今野浩喜、佐藤仁美、鈴木福、忽那汐里、堀部圭亮、中村有志、井上順