中学受験で疲弊しないために、親子で楽しむ受験になるヒントを綴っていきたいと思います。
中学受験で子どもと普通に幸せになる方法
夏休みの勉強法
6年生の夏休みは、天下分け目の決戦などといっています。でもそれは塾側の営業文句に過ぎません。子どもたちの力は夏に伸びるという感覚はありません。むしろ入試3ヶ月前からという感じがします。なぜでしょうか?
子どもたちにとって半年も先のことは、まだ実感がわきません。まだ、大丈夫。そんな感覚があります。ところが親の側はそうではありません。受験前の最後の夏休みです。これだけ時間がとれるのは、最後ですから、あれもやらせてみたい、これもやらせてみたいという気になってきます。
ところが40日もあったはずなのに、意外に少ないのです。塾に通っていれば、当然夏期講習があります。これが、最近は非常に長くなりました。3週間、4週間、朝から夕方まで講習に追われる生活になってしまうのです。ここのところ、塾の講習が長くなってきたのには、いくつか原因があります。
親の側としては、塾に行っていれば、勉強の面倒を見なくてもすむという気持ちがあります。特に最近の家庭は子どもの数が少ないので、お母さんと子どもが一対一になりやすく、したがって、毎日勉強しなさいと言い続けるのはいやだから、それなら塾に行ってくれたほうがましだという感覚でしょう。その気持ちにこたえて、何でも塾で抱え込んでしまおうというのが最近の傾向のようです。
ただ、ずっと塾に行っていて、復習の時間や自分で入試問題を解く時間を作れないのは、ちょっともったいない気がします。もちろん、塾では入試問題を解く時間を授業の中に作っているようですが、自分のペースでできないというところに問題が出てきます。夏休みに過去の入試問題を解くという勉強は非常に大事なのですが、この時期はまだ実力がともなっていないので、簡単に解けませんし、また時間がかかります。しかし、その過程は省略するわけにはいきません。じっくり時間をかけ、わからない問題は解答を読みながら、理解していく過程がどうしても必要なのです。それが自分のペースでできていないと、せっかく時間をかけているようで、実は効果がでていない可能性がでてきます。
また、最近では宿題を出す塾も多いので、それに追われてしまって、なかなか子どもを個々に必要な勉強ができなくなってしまう傾向があります。
子どもはいろいろな課題を抱えています。したがって、その課題を個別に解決していかなければならないのですが、あまり塾に生活を占められてしまうと、その対応ができなくなります。したがって夏休みが始まるまでに、いったい何を勉強するのか、具体的に絞り込んでおく必要があるわけです。
私のいた塾は講習が単科制になっていましたので、それぞれ必要なものを組み合わせてとることになります。6年生の場合、基本は学校別の特訓ですが、それ以外は自分の得手不得手にしたがって講習をとることになります。だいたい、この講習の設定をするのは、私たちとお母さんの間でやるのですが、本人の意識のために、本人たちと相談することも少なくありません。その結果として、本人自身で夏休みの勉強の計画を立てるのですが、これは夏休みの勉強としてとても大切なことです。まず、本人の成績があり、そこから何を夏休みに勉強すればいいのかを絞り込み、その具体的な方法を挙げて、そこから計画を立てる、その一連の流れは単に勉強するということだけでなく、後からいろいろなことに役に立ちます。例えば英検をとろうとか、あるいは何か夏休みの作品を作ろうとか、いろいろな場面でそういう流れを創り出すことは非常に大事です。ですから、夏休みの計画についてもなるべく子どもにやらせて、相談して決めていくこと良いのではないかと思います。
とてもユニークな子どもがいました。私が担当していた学校別特訓の番長格の子どもで、とにかくいろいろな武勇伝があるのですが、それはさておき、6年生の夏期講習前に相談に来ました。講習で何をとるべきか聞いてくる子はいるのですが、たいていはお母さんに、聞いてらっしゃい、と促されてくる場合がほとんどです。ところが、彼の言い方はなかなかふるっていました。
「算数は速さがまだだめ。それで『比と速さ』はとる。理科実験は出そうだからとるでしょ。
記述は出ないから、『国語読解』の方にして、あとは学校別全部。これで大丈夫かな?」
「いいんじゃない」
私としては、それしか言いようがありません。私が作るメニューもだいたいこなした上で、
「でも『場合の数』は苦手なんだ。何をやればいい?」
という積極性を身につけていました。
この子は合格したい学校が最初から慶應普通部と決まっていましたから、目標に向かって最短距離で進んでいたと思います。ですから、勉強するのも非常に集中していたし、2学期に向けて成績は確実に上がっていきました。入試前に早くも私は大丈夫だろうと安心していたものです。
彼が慶應を卒業してから、いっしょに飲む機会があって、昔話をしていたとき、私はふと疑問があって、彼に聞いてみました。
「なんで、あんなに普通部に行こうと思ってたの?」
「慶應は、もう最初からです。家で話していて、付属校に行くなら慶應にしてほしいというのは家族の希望でもあったし。僕は受験はもうやらないという気持ちでしたから。じゃあ、慶應にしようと。で、当時は女の子、嫌いだったんですよ。だから普通部じゃなきゃ、だめだって。中等部は共学でしょ。今は湘南も共学ですけど、僕はとにかく男子校」
何が原因になるのか、わからないものですが、とにかくそのエネルギーが非常に前向きに出ていたのではないかと思います。だからとても自立していたし、自分でいろいろなことができる子どもでした。今の子どもたちにそこまで要求するのは難しそうですが、それでもなるべく自分で計画を立て、自分で勉強するというスタイルを身につけさせてあげるとよいと思います。
さて、計画ですが、何をやるかまでは、塾の先生とも相談して決めてください。ただ、あれもこれもと手を広げずに、この問題集の問題は全部できる!というような自信がつくように工夫すると良いでしょう。計画を立てていく中で、いくつか注意事項があります。
予備日
計画を立てさせると、だいたい見事な計画ができてしまいますが、たいていは実行不可能なものになりそうです。ですから、5日に1日は予備日を作ってその日は何も勉強しないようにしておきます。もし、それまでの勉強が無事進んでいたら、その日はお休みにして、どこかに遊びに行くのがよいでしょう。終わっていなければ、その予備日を使って勉強するようにします。これはごほうびの意味もありますから、無事予定が終わっているのに、その日に勉強させてはいけません。(そういうルールはきちんと守りましょう。)
講習の復習や宿題
問題集や参考書ばかりに気をとられてしまいがちですが、まず大事なのは講習の復習と宿題です。せっかく時間をかけて講習を聞いているのですから、その復習がまず一番有せんされなければなりません。講習の復習や宿題をする時間を計画に入れるのを忘れないように。
入試問題
第一志望の学校の入試問題は、夏休みから手をつけていかないと間に合わなくなります。
ただこのときは、時間を計ってやっても、あまり意味がありません。むしろじっくり時間をかける時期ですから、たくさんの学校をやろうと思わず、第一志望の1年分をていねいに解きあかすようにしたらよいでしょう。
日程表は、なるべく大きく書き出し、家族みんなが見えるところに貼っておきましょう。そして、消化したものはどんどん消していくのです。こうすれば勉強のことが見られないお父さんでも、「がんばってるな」とほめてあげることができるでしょう。
コメント ( 0 )