携帯電話の普及で、固定電話を持たないひとり暮らしの若者は珍しくなくなりました。しかし1人1台の時代になっても、beモニターの8割以上が固定電話は必要と考えています。その理由はなかなか興味深いものでした。

 

 ■「解約」には抵抗感

 世代別の“固定必要派”は10~20代のみ35%と低かったが、他の世代はいずれも6~9割にのぼった。従来のNTT回線、光回線などを使ったIP電話を含め、「携帯を持たない、使いこなせない高齢者同士、親や親類からの連絡にはまだまだ不可欠」とする声が圧倒的だった。

 「ふだん連絡をとらない遠い親類や古い友人が連絡する際に確実につながる番号。無くすことは考えにくい」(長野、54歳男性)、「90歳のしゅうとめは独居。耳が聞こえづらく、記憶も不安定なためファクスで連絡するしかない」(大阪、57歳女性)。

 固定電話を半ば公的なものと考える人も多く、提出書類や学校・地域の連絡網などで、見知らぬ人に私的な携帯番号を知らせることに抵抗があるという意見も目立った。

 最近、改めて注目されたのが、いわゆる黒電話などが停電時にも使える点だ。神奈川の通信会社員(56)は「災害対策として必須。変えるつもりはない」と断言。阪神、東日本の大震災時に、固定電話だけがつながった、という体験談もあった。

 また、就学期の子どもには必要だと考える人も。「我が子には必ず固定電話を使わせ、電話を取り次いでもらうにはどう言ったらよいかなどを経験させている」(群馬、47歳女性)。子の交友関係を把握できるほか、電話のマナーを学ぶ機会になるという。

 総務省のデータによれば、2001年度に6100万件を超えていた固定電話回線数は、12年度末には5681万に減少。IP電話などは増加しているが、NTT東西の加入電話数は6105万から2847万に激減している。

 「共働きなので日中はほぼ無人。留守だとわかる固定電話は防犯上設置しようとは思わない」(神奈川、32歳女性)、「スマホがあるので不便を感じない。一度だけファクスが送れたらいいのにと思ったが、場所もとるしお金もかかる」(京都、22歳女性)などが不要派の理由だろう。

 ただし、固定電話を持たない子世代に当惑する親も。用事があっても「“お嫁さん”の携帯は心理的ハードルが高い。固定があれば気軽なのに……」(愛知、63歳女性)。

 意外?な効用として「気兼ねなく居留守が使える」(京都、47歳女性)、「置き忘れた携帯を鳴らして捜せる」(秋田、74歳男性)、「うっかり携帯を持たずに外出。家族の携帯番号は覚えていないが、公衆電話から暗記している自宅の固定電話に連絡できて助かった」(茨城、66歳男性)といった声があった。

 だが、実際に固定電話を使う機会は減った。「かかってくる電話のほとんどが営業・勧誘電話」(東京、54歳女性)で、「オレオレ詐欺」対策として常に留守電にしている人もかなりいた。「“念のため”に置いている」(長野、42歳女性)という消極的必要派も多そうだ。

 「昔は固定電話を解約するとNTTが加入権を買い取ってくれたはず……」といった声も多かったが、NTT東日本は以下のように説明する。

 現在、NTTと固定電話契約するには「施設設置負担金」として3万6千円(税抜き)が必要だ(月払いの基本料に加算して支払うプランもある)。この料金はかつて「工事負担金」、民営化前は「設備料」と呼ばれ7万2千~8万円と高額だったが、今も昔も解約しても返金はされない。ただし、電話加入権を売買する市場で、不要になった権利を業者に売ることができた。今も市場はあるが、価値が低下し売買メリットがなくなった。また1983年まで、電話回線を契約する際には10年で償還される「電信電話債券」の購入も義務づけられていた。