国産の高級ウイスキーが店頭で品薄になっている。ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝氏をモデルにしたNHKドラマ「マッサン」の放映が始まった昨秋からで、サントリースピリッツもニッカも増える注文に応じきれていない。当面はこうした状況が続くと両社はみている。

 品薄になっているのは、サントリーが「山崎」「響」「白州」。ニッカが「竹鶴」「余市」「宮城峡」ブランドの一部商品。

 サントリーはブレンド前の原酒が不足しており、将来にわたる安定供給のためとして、出荷の量を注文より減らしている。白州は初めてで、山崎と響は4年ぶりだ。

 サントリーはこの2年、大阪府島本町の山崎蒸溜所と山梨県北杜市の白州蒸溜所で原酒の生産能力を増やしたが、それでも足りていない。白州でのさらなる増強を検討していくが、高級品は一般的に10年以上寝かせるため、急には出荷量を増やせない。

 一方のニッカは原酒は足りているが、瓶詰めが追いつかないという。「竹鶴」は昨年9~12月に前年の同じ時期と比べ2・6倍売れた。北海道余市町の余市蒸溜所と仙台市の宮城峡蒸溜所でつくった原酒は通常、千葉県柏市の工場で瓶詰めする。「竹鶴」の瓶詰めは、本来は焼酎をつくる北九州市の工場でも今月から始めた。

 全国展開している酒販店は「注文した量が入ってこないので、店頭に出す量も減らしている」。首都圏のある小売店では、「竹鶴17年」や「山崎12年」が売り場に並ぶことが珍しくなっているという。

 ウイスキーの国内市場はハイボール人気で2008年に底を打ったが、その中心は「ブラックニッカ」やサントリーの「角瓶」など大量につくる低価格品。少量生産の高級品にも人気が広がり、品薄になった。

 サントリーは、「山崎」「響」「白州」などを4月に値上げすると発表済み。例えば「山崎12年」(700ミリリットル)は税抜き希望小売価格を1500円上げて8500円にする。輸入している麦芽やトウモロコシなどの高騰を理由に挙げる。

 ニッカは値上げについて「慎重に判断する」としている。