東海道新幹線は3月14日、23年ぶりに最高速度が15キロアップする。そのダイヤ改定を前に25日、時速285キロを先行体験する試乗会があった。抽選に当たった親子連れなどが、東京―新大阪間の「最高速度体験の旅」に参加した。

 試乗会には、3日前に納入されたばかりのN700A車両が使われ、乗り込んだ鉄道ファンは「新車の香りがする」と大喜び。飛行機の機長と違って新幹線の運転士は普段、アナウンスをしないが、この日は発車後まもなく「みなさまが笑顔になれるような運転をしたいと思います」と、山下志歩運転士の声が流れた。

 285キロを最初に記録したのは、新横浜駅を通過後。車内アナウンスで、開業当時(1964年)の210キロから最高速度到達までのカウントダウンがあり、「ただいま最高速度です。みなさまは285キロを初めて体験されたお客様です」と流れると、参加した人たちが一斉に笑顔になった。

 静岡市から来た田島恭子さん(46)は「乗り心地はいい。最高速度になったのも、言われないと分からない」。横浜市から参加した島田和也さん(33)は「思っていたより揺れない。技術の進歩を実感しています」。母親や弟と一緒に参加した澤江優太朗くん(11)は「この列車に乗れてすごくうれしい。285キロの瞬間は、すごく速くて面白い」と話した。

 山陽新幹線の最高速度は300キロ。東北新幹線はやぶさは320キロ。しかし東海道新幹線はきついカーブが格段に多いため、1992年に270キロに引き上げて以来、最高速度が据え置かれてきた。285キロへの速度向上にあたっては、カーブで車体を傾けて乗り心地を安定させるさせる改良や、ブレーキの強化が行われた。

 走行試験を担当したJR東海の松川賢一・新幹線鉄道事業本部企画部長は「すでに全運転士が試験運転を終えた。最高速度を出してもお客様が気づかないと言われるようならうれしい」と話した。

 東京―新大阪間の所要時間は、現在の「のぞみ」で2時間25分。ダイヤ改定後は、速度を上げた列車がのぞみ全体の約1割にあたる37本運行し、所要時間は最大3分短縮されるという。