「トラガール」と呼ばれる女性トラック運転手が増えている。男性職場のイメージが強い中、丁寧な運転やこまやかな気配りなどに注目が集まる。人手不足に悩む運送業界や自動車メーカーも、女性専用の待合室を設けたり、かわいらしい外装のトラックを開発したりして後押しする。

 今月上旬、京都市伏見区の運送会社「ヤマトマルチチャーター京都支店」に大型トラック(10トン)がゆっくり入ってきた。

 午前10時。運転するのは社員の山本真理子さん(38)だ。月に約10回、関東や北陸方面を往復する長距離専門の運転手。前夜に荷物を満載して京都を出発、石川県野々市市を往復してきた。走行距離は約570キロに及び、休憩を入れて13時間の長旅だった。「今日も無事故でほっとしました」。笑顔がこぼれた。

 父親がトレーラー運転手で、自身もあこがれて25歳で運転手になった。重い荷物の積み下ろしなど、すべて男性と同じ仕事だ。男性が荷物を苦もなく動かしているのを見ると悔しく感じることもあるが、「4人の子どもたちから『ママ、格好いい』って言われるのが励みです」。

 同支店のもう1人の女性運転手、南多佳子さん(42)は、京都市中心部のオフィス街を回り、集荷するのが仕事だ。「笑顔とあいさつ。気づかいが喜ばれる」と言う。

 総務省の「労働力調査」(2014年)によると、全国のトラック運転手約83万人のうち、女性は約2万人(約2・4%)。過去と比較できる詳しいデータはないが、全日本トラック協会(東京都)の広報室は「女性運転手は街でもよく見かけるようになり、確実に増えている」と話す。

■女性専用待合室・かわいい車両開発

 「トラガール」の呼称は昨年、国土交通省が始めた。大型免許を持つ女性は全国に13万4千人以上いるとされる。人手不足にあえぐ運送業界に、女性にも親しみをもっと抱いてもらおうとの狙いがある。全日本トラック協会が3カ月ごとに行っている業界の景況調査の最新分(昨年7~9月)では、労働力が「不足」「やや不足」と答えた加盟企業の割合は52・4%と半数を超えた。少なくとも11年以降、人手不足の声が寄せられているという。

 同協会は昨年9月、運送業者向けに、若手や女性運転手を採用するための具体的な方法を紹介する小冊子を作った。徳島県トラック協会(徳島市)もPR誌「TRUCCO(トラッコ)」を作り、昨年末からハローワークや運送会社などに配布中。トラガールたちが仕事の魅力やきっかけなどを紹介している。