医療機関19%、浸水の恐れ 南海トラフ地震
2015年2月23日07時26分
南海トラフ巨大地震で津波の被害が想定される24都府県で、入院設備のある医療機関1万2065のうち19%が浸水するという見通しを、国立病院機構・大阪医療センターがまとめた。災害拠点病院は423のうち17%が浸水する可能性がある。交通の遮断や、水や電源の途絶で病院が機能しない恐れもあるという。
同センターは、被災直後に救命医療活動する災害派遣医療チーム(DMAT)の事務局。南海トラフ地震での派遣に向け、政府が2013年5月までに公表した被害想定の市町村別の最大津波高と、14年8月現在で医療機関がある場所の標高を比べ、初めて全国的な被害を想定した。
その結果、津波高が標高以上だった医療機関は2341あった。高知県が224機関のうち164機関(73%)、徳島県は257機関のうち149機関(58%)にのぼり、和歌山県56%、宮崎県54%と続いた。東日本では、静岡県が26%、千葉県13%、神奈川県11%だった。
都道府県が災害医療の中心として指定する災害拠点病院では、71病院が浸水する恐れがあった。浸水する病院の割合は徳島県73%、高知県70%、宮崎県64%だった。また、津波は免れるものの、最大震度6強以上が想定される133の災害拠点病院(21府県)をみると、14年4月現在で耐震化されていないか耐震化不明の病院が10病院あった。耐震化を進めている病院が多いが、医療機器や建物が壊れる可能性もあるという。
DMATは阪神大震災で救命医療が遅れた反省からできた。センターは、岡垣篤彦・医療情報部長らが想定をデータベース化し、最新データを更新している。定光大海・救命救急センター診療部長は「今回の被害想定を基礎的なデータとして、広域的、戦略的にDMATの活動や派遣を検討する必要がある」と話している。(桑山敏成)
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〈災害拠点病院〉 重傷患者の受け入れや救命、DMAT派遣など災害医療の中核を担う病院。昨春時点で都道府県が676病院を指定。ヘリポート確保や24時間の緊急対応態勢などの要件がある。東日本大震災で岩手、宮城、福島3県の31拠点病院が一部壊れ、ライフライン途絶で機能低下したため、厚生労働省は食料や水、発電機燃料の備蓄など指定要件を厳しくした。