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沈むんじゃなくて?
面積は日本の約30%程度で、北極圏にある島国アイスランド。このアイスランドが、1年に1.4インチ(約3.5cm)の割合で浮上していることが3人の科学者によって明らかにされました。そう、島そのものが上向きに動いているのです。
ご存じの通り氷はとても重たいものなので、当然それが溶けて消えてしまえば氷の下にあったものは上昇してきます。とはいっても、アイスランドを覆った氷が溶けるにつれ、島が上昇、それも大変なスピードというから二度驚きです。
2015年1月、アリゾナ大学とアイスランド大学のチームが、研究成果を「気象変化によるアイスランドの地殻上昇加速をCGPS測地学で計測」という論文にまとめて発表し、明らかになったもの。研究ではアイスランド中に設置された各GPSから入る数値の変化、またどのくらいの頻度で動いているかを計測したデータを分析しました。
論文の筆者は、各センサーが時間の経過とともにどれだけ移動したかをトラッキングし続け、そしてそのデータが非常に面白く恐ろしい事実を物語っていることに気がついたのです。62個あるセンサーのうち、氷が多数あるアイスランド中心部に設置された27個では、島が1年で1.4インチ(約3.5cm)のスピードで浮上していることを示しました。
「中南部のアイスランドは一番大きな氷河地帯に近いのですが、そこでは最も大きな速度と加速が観測され、また垂直方向への変動でも最も高い数値を出しています。」と論文で述べられています。
“Uplift”と呼ばれるこの現象は、以前にも観測されたことがありました。氷河は世界中から消え去ろうとしています。2009年のNew York Times紙では、このUpliftはアラスカでも非常に速いスピードで起こっており、海面が下がり続けていると報じています。気候変動について一般的に考えられていることと面白いほどに真逆のことが起きているのです。アリゾナ大学のMari N. Johnson氏は、オンライン上で公開された研究発表でさらに以下のように述べています。
氷が年々同じ割合で消失することがこのようなUpliftの加速の原因となるか、それを見極めるために論文主著者のコンプトン氏(アリゾナ大博士課程)は数値モデルで試算しましたが、しかし答えはNoでした。恐ろしいことに、これほどのUpliftを加速度的に起こすには毎年加速度的に氷河が溶けないといけなかったのです。
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ドミノ倒し的に起きる気候変動がもたらした実例として、筆者はアイスランドの急速な浮上が火山活動の増加につながる仕組みについても述べています。Upliftが火山活動を生むと提言した過去の研究を引用し、より多くの噴火物を形成する原因となり、世界経済にも影響を及ぼしかねないと付け加えています。
2010年にアイスランドの火山「エイヤフィヤトラヨークトル」が噴火した際、航空会社には17億ドル(約2000億円以上)の損害がおよびました。しかし、それ以上の経済的打撃を与えかねないこの忍び寄る脅威に、ビジネス的にも大きな注目が集まることになるのは必然かもしれません。