よく見かけますね。
閉店しないのに「閉店セール」 違法じゃないの?
2015年2月26日05時00分
「閉店セール」や「本日最終日」などとうたって客を集めながら、一向に閉店しない店がある。時折、見かけるこうした「閉店商法」って違法じゃないのか。
■2カ月超営業続けた店も
東京・上野のバッグ店。昨年9月下旬、「完全閉店セール」とうたい、店員は「本日まで」と客に売り込んでいた。だが6日後、店はなおセール中で、店員は「本日最終日です」――。
こんな実態を、立教大法学部で消費者法を学ぶ小林亨輔さん(3年)ら6人が明らかにした。ゼミ活動で昨年7~10月、都内で「閉店セール」などと表示する小売店9店を客として訪れ調査。その結果、5店は期間中に閉店せず、最長2カ月以上営業を続けた。
景品表示法は、著しく有利であると消費者に誤認される商品やサービスの表示(有利誤認)を禁じている。小林さんらは5店の「閉店商法」がこの有利誤認にあたるとして2月13日、消費者庁長官に対応を求める要望書を出した。
現状はどうなのか。記者が25日、上野や秋葉原の繁華街を歩くと、「残り30分限りの大処分セール!」との呼び込みを2時間以上続けているカバン店があったが、「閉店」を掲げる店は見当たらなかった。学生を指導した細川幸一・立教大兼任講師(消費者法)は「学生の調査がメディアで取り上げられたことが一定程度影響した」と見る。
■「実際に毎夕方、店閉めたよ」
都内の主要駅近くで時計やカバンを売る40代の男性は1年ほど前まで「閉店」と店頭に掲げていた。「閉店と言った方が客が集まった。実際、毎日夕方には店を閉めたよ」と笑う。
都から口頭で指導を受けて「閉店商法」はやめたが、「社会には『遊び』の部分も必要でしょ。店頭での呼び込みも含めて、バナナのたたき売りのようなもの。街のにぎわいだ」。
各地にも広がる。「毎年眼鏡店が『閉店セール』をしている」(山陽地方・男性)、「『閉店セール』の店で安いと勧められ布団を買ったが、なかなか閉店せずだまされた気持ちだ」(九州地方・女性)。国民生活センターには昨年、こうした相談が寄せられた。
紳士服チェーンでもよく「改装閉店」などと店やチラシに大きく記しているのを見かけるが、あれは「閉店商法」ではないのか。
ある大手紳士服チェーンは「店の規模によるが、5、6年に1回実施し、3日~2週間は店を閉めるので違法性はない」。年間100~150店舗で閉店セールをしているという。
■閉店の表示で処分例なし
「閉店」の誘因力について、杉本徹雄・上智大教授(消費者心理学)は「『限定品』などと同じように、買う機会に時間的な希少性を持たせることで客の購買意欲を刺激する」と解説する。他の商品との比較よりも、目の前の商品を買うか諦めるか、「二者択一の心理になりやすい」。
学生に対応を求められた消費者庁はどうするのか。表示対策課によると、閉店の定義や時期に関する表示で同庁が行政処分した例はない。ただ景表法は、架空の価格からの値引きを装う「二重価格」も有利誤認として禁じる。真渕博課長は「閉店するので安くしますという閉店商法の本質は不当な二重価格表示。問題があれば個別に対応していく」と話す。(小