こんばんは、白黒茶々です。
先月、私は「風たちぬ」を観に行ったばかりなのに、舌の根も乾かぬうちにまた新たな作品を味わいたくなってしまいました。そのタイトルは、ズバリ「少年H」です。
とはいっても、「風たちぬ」を観に行った際に、本編が始まる前のその作品の予告編を観て以来、心に引っ掛かっていたのですけど。
しかも、その「少年H」を実際に観に行ったのは、先月末のことで、編集の都合で少々遅れてしまいました。とにかく、今から「少年H」の映画レポートをさせていただきます。
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今回は私だけが熱かったということもあって、平日の夜のレイトショー狙いで、仕事が終わったあとに一人で観に行くことにしました。
そのようにして私が向かった映画館は、またしても県境をまたいだ豊橋市にあるユナイテッドシネマ豊橋18。
今回の上映は、21時20分からとなります。
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追って公開することになっている「貞子3D2」のディスプレーは、インパクトありありです。
私はこのシリーズを観たことはまだないのですけど、今回のものには小貞子も出てくるみたいですね。また、彼女たちによる西武ドームでの始球式も、お見事でした。
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パンフレットも買って、準備は万端です。
前回の「風たちぬ」のときは満席だったのですけど、今回はどのくらい埋まっているのでしょうか?………ということを楽しみにしながら劇場に入ったら、なんと私を含めてたったの3人でした。
そ、それでも、必ずしも人数が少ないからその映画がツマらないとは限りませんしっ
とかなんとかやっているうちに、映画は始まりました。
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「少年H」とは、グラフィックデザイナーでありエッセイストでもある妹尾河童氏が、第二次世界大戦での実体験をもとにして記した作品です。その作品はテレビドラマにもなったそうで、名もなき庶民の目線から見た戦争が描かれています。
昭和16年(1941年)の春、肇少年(吉岡竜輝)は神戸で洋服の仕立て屋の父盛夫(水谷豊)、クリスチャンの母敏子(伊藤蘭)、2歳年下の妹の好子(花田優里音)とともに暮らしていました。
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盛夫は居留地の各国の外国人相手に商売していて、敏子は家族とともに教会に通い、肇は母にナイショで海に潜ったりして、平穏な毎日を送っていました。
その肇少年は、名前のイニシャルの「H」の大きな字が付いたセーターを母親に着せられて以来、クラスメイトから「H」と呼ばれるようになってしまいました。
教会の宣教師が祖国に帰り、彼女が餞別に置いていったスプーンやフォークを使って、H一家が味噌汁や焼き魚を食べるシーンが観ていて楽しいのですけど、そのあたりから彼らのまわりには不穏な空気が蠢き始めていました。
日本が宣戦体制に入った、まさにその頃。Hが親しくしていたオトコ姉ちゃん(早乙女太一※男性です)が出征したあとに脱走したり、うどん屋の兄ちゃん(小栗旬)がオペラのレコードを聴いていただけで思想犯として警察に逮捕されたりと。
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H一家も、タダでは済みませんでした。Hは、宣教師から送られてきたエンパイア・ステート・ビルディングが印刷された絵ハガキを友達に見せただけで、クラスメイトからスパイと疑われ、盛夫は外国人相手に商売していたことから、スパイ容疑をかけられて検察に連行され、そこで拷問を受けたりと。
その翌年の4月には、東京・名古屋・神戸などの都市で、最初の空襲がありました。そのとき「被害は、たいしたことはない」と発表されたのですけど、その現場を直接見てきた盛夫は、Hに「犠牲者が出た」ということを教えました。「何で国や新聞は、本当のことを伝えないんだ?」と疑念を抱くHに、盛夫は「しっかりと現実を見つつも、スパイや非国民と見なされないように考えや信仰を心の中にしまっておくことも大事」と諭しました。
当時は「治安維持法」や「言論・出版・集会・結社等臨時取締法」などによって自由な意見を言えなかった時代。ましてや「この戦争は間違っている」とか「日本は不利」なんて言おうものなら、即逮捕させられてしまうほどでした。
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戦局が激しさを増した翌年の昭和18年(1943年)には、盛夫は家族や生活を守るために体力勝負の消防署に就職し、
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敏子は隣町の班長となって、消化訓練などに励み、
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Hは進学した中学校で軍事教練に明け暮れていました。そこで彼は田森教官(原田泰造)に目の敵にされ、殴る蹴るの暴行を受けることも。
さらにその翌年には、好子が疎開することに。その際の汽車に乗るシーンなどで、私の地元の大井川鐵道が使われたのですよ。
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昭和20年(1945年)3月には、神戸の街は大空襲に遭いました。空から無数の焼夷弾が落とされ、Hの目の前でも炸裂。
私はその光景を直に見たことはないのですけど、戦争を体験した人によると、かなりリアルに再現されているそうです。Hはバケツの水などで必死に火を消そうとしたのですけど手に負えず、母敏子と避難することに。その際に家の二階に置いてあった盛夫の商売道具のミシンを運び出そうとしました。しかし、焼け落ちてきた家屋に行く手を阻まれ、やむを得ず道に置いていくことに。やがて神戸の街は火の海に呑み込まれてしまいました。
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次のシーンでは、あたり一面焼け野原となったなかに、Hがたたずんでいました。
まだところどころに火がくすぶっていて、焼死体も転がっています。
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そこに疲れ果てた盛夫が現れ………
いいところで申し訳ないのですけど、あまり書いてしまうとネタバレに……… って、この段階でもかなりバラしているような。
それでも、この映画は戦争が終わったところで仕舞いとはならないのですよ。
戦時中は国の方針があって、さらに流されやすい国民性も手伝って、戦意を高揚させる空気に包まれていました。そのような中で、盛夫やHのように柔軟な考えを持ち、国のやり方に疑問を持つような人はいるハズはない。………と言う方もいるみたいですけど、私はいたと信じています。
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また、この映画の心に残るシーンは、観る人によって異なるみたいですね。ちなみに私は、水谷豊さん演じる父盛夫が、「戦争はいつか終わる、そんときに恥ずかしい人間になっとったらアカンよ」など、Hに諭すように語りかけるシーンの数々にグッときました。敏子役の伊藤蘭さんは、本当の妻みたいでしたし……… って、役の外でも水谷豊さんと実の夫婦でした。
H役の吉岡竜輝君は、たつぴと同じ年に生まれたのに、頼もしいですね。好子役の花田優里音ちゃんも、いい味出していますし。
終戦から今年で68年。人々の記憶から戦争の記憶が薄れつつあります。「少年H」は、こんな時代なので、いや、こんな時代だからこそ、多くの人に観てもらいたい作品です。
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水谷豊さんに諭されたい~! という方は、こちらに投票してやってください。
先月、私は「風たちぬ」を観に行ったばかりなのに、舌の根も乾かぬうちにまた新たな作品を味わいたくなってしまいました。そのタイトルは、ズバリ「少年H」です。
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今回は私だけが熱かったということもあって、平日の夜のレイトショー狙いで、仕事が終わったあとに一人で観に行くことにしました。
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追って公開することになっている「貞子3D2」のディスプレーは、インパクトありありです。
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パンフレットも買って、準備は万端です。
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「少年H」とは、グラフィックデザイナーでありエッセイストでもある妹尾河童氏が、第二次世界大戦での実体験をもとにして記した作品です。その作品はテレビドラマにもなったそうで、名もなき庶民の目線から見た戦争が描かれています。
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昭和16年(1941年)の春、肇少年(吉岡竜輝)は神戸で洋服の仕立て屋の父盛夫(水谷豊)、クリスチャンの母敏子(伊藤蘭)、2歳年下の妹の好子(花田優里音)とともに暮らしていました。
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盛夫は居留地の各国の外国人相手に商売していて、敏子は家族とともに教会に通い、肇は母にナイショで海に潜ったりして、平穏な毎日を送っていました。
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教会の宣教師が祖国に帰り、彼女が餞別に置いていったスプーンやフォークを使って、H一家が味噌汁や焼き魚を食べるシーンが観ていて楽しいのですけど、そのあたりから彼らのまわりには不穏な空気が蠢き始めていました。
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H一家も、タダでは済みませんでした。Hは、宣教師から送られてきたエンパイア・ステート・ビルディングが印刷された絵ハガキを友達に見せただけで、クラスメイトからスパイと疑われ、盛夫は外国人相手に商売していたことから、スパイ容疑をかけられて検察に連行され、そこで拷問を受けたりと。
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その翌年の4月には、東京・名古屋・神戸などの都市で、最初の空襲がありました。そのとき「被害は、たいしたことはない」と発表されたのですけど、その現場を直接見てきた盛夫は、Hに「犠牲者が出た」ということを教えました。「何で国や新聞は、本当のことを伝えないんだ?」と疑念を抱くHに、盛夫は「しっかりと現実を見つつも、スパイや非国民と見なされないように考えや信仰を心の中にしまっておくことも大事」と諭しました。
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当時は「治安維持法」や「言論・出版・集会・結社等臨時取締法」などによって自由な意見を言えなかった時代。ましてや「この戦争は間違っている」とか「日本は不利」なんて言おうものなら、即逮捕させられてしまうほどでした。
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戦局が激しさを増した翌年の昭和18年(1943年)には、盛夫は家族や生活を守るために体力勝負の消防署に就職し、
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敏子は隣町の班長となって、消化訓練などに励み、
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Hは進学した中学校で軍事教練に明け暮れていました。そこで彼は田森教官(原田泰造)に目の敵にされ、殴る蹴るの暴行を受けることも。
さらにその翌年には、好子が疎開することに。その際の汽車に乗るシーンなどで、私の地元の大井川鐵道が使われたのですよ。
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昭和20年(1945年)3月には、神戸の街は大空襲に遭いました。空から無数の焼夷弾が落とされ、Hの目の前でも炸裂。
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次のシーンでは、あたり一面焼け野原となったなかに、Hがたたずんでいました。
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そこに疲れ果てた盛夫が現れ………
いいところで申し訳ないのですけど、あまり書いてしまうとネタバレに……… って、この段階でもかなりバラしているような。
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戦時中は国の方針があって、さらに流されやすい国民性も手伝って、戦意を高揚させる空気に包まれていました。そのような中で、盛夫やHのように柔軟な考えを持ち、国のやり方に疑問を持つような人はいるハズはない。………と言う方もいるみたいですけど、私はいたと信じています。
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また、この映画の心に残るシーンは、観る人によって異なるみたいですね。ちなみに私は、水谷豊さん演じる父盛夫が、「戦争はいつか終わる、そんときに恥ずかしい人間になっとったらアカンよ」など、Hに諭すように語りかけるシーンの数々にグッときました。敏子役の伊藤蘭さんは、本当の妻みたいでしたし……… って、役の外でも水谷豊さんと実の夫婦でした。
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終戦から今年で68年。人々の記憶から戦争の記憶が薄れつつあります。「少年H」は、こんな時代なので、いや、こんな時代だからこそ、多くの人に観てもらいたい作品です。
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