嘘の吐き方(うそのつきかた)

人はみんな嘘をついていると思います。僕もそうです。このページが嘘を吐き突き続ける人達のヒントになれば幸いです。

能面の笑顔で君は

2004年12月09日 03時23分54秒 | 物語
伏し目がち

たくさんの流れる能面の中で君は

うなづき

かわされる笑顔の雑踏の中で君は

迷い

走り続けた屋根瓦の驚きの上で君は

戦い

逃げまどう聴衆の祭壇の上で君は

嘆き

うつろう轟きと雷鳴の闇の奥で君は

煌めき

破り続けた約束の牢獄の奥で君は

僕を笑うだろう
僕を憎むだろう
僕に近づくだろう
僕から遠ざかるだろう

だから
そして
いつも
ときには

やがて

君は

君になっていく

ありがとう
力一杯
なけなしの
空元気の
届かない
僕たちの
門出のような
優しすぎた時間は

今日
今日を限りに
今日を頼りに

何かに
何かに
何かに
何かに変わる


長い雨が降って
ずっとずっと長い雨が降って
僕たちは顔も上げずに
傘の中でうつむいてすれ違う

それだけが僕に残された
約束の選択肢で

僕は選ばなかった見捨てられた時間だけを追って
とぐろを巻いた思い出は
何もしなかった僕だけを呑み続けて

あそこで何かを知っていた
見当違いのコンパスだけが
僕らの時間を巻き戻し続けてゆく

僕は間違え忘れた砂時計を拾って
何度も値段を付けて
店先に並べる

これはいくらですか?
あれはいくらですか?
それはいくらですか?

仕方ないよね
君は大人になるんだよね
恨んでないよ
約束の時間だから

もう、電話を切るね

「このメッセージは2004年12月9日に記録されました。」

僕には、電子音の、耳鳴りが聞こえた。