仕事のメールが一通入っていたのに気付かずに来てしまいました。この町ではインターネットに繋げる事はが出来ないので、仕方なしに国際電話をかけました。「航空機と鉄道の騒音と振動の体感調査です。」と言うと、「え?、良いな!、そんな仕事あるんですか?」と言うことで僕は一生懸命仕事していることになっています。
国際電話はICカードで公衆電話から掛けたので、その足で郵便局に行って絵葉書を何枚か出しました。列が出来ていたので並んで待っていると、後ろから突っつく人が居ます。左側の窓口が開いたので、後ろに居たお年寄りのシスターが教えてくれたのです。
ボケッとしていても、世の中うまく進んでゆくものです。街を一回りしてホテルのもどり、カメラを2台持って今日の目的地「ミッテルバウ・ドーラ」に向かいます。地域間急行で1時間半ほどのところにある、ノルトハウゼンで乗り換えです。
インフォメーションがあったので、並んで待っているとすぐ横にもう一つ窓口があって、見慣れたHSBという文字が書いてあります。5年前にも乗ったハルツ狭軌鉄道の窓口です。本当は今年もヴェルニゲローデからハルツ狭軌鉄道に乗ってここに来る予定だったのですが、ベルリンに着いてから体力に自身をなくしてホテルに荷物を置いて回ることにしました。
帰りの分の切符も買い、トラム(と言ってもディーゼルです)に乗って10分ほど、降りてから15分と書いてあったのですが、行けども行けどもそれらしきものが見えてきません。あれ?、間違えてたかな・・・?、と思っていると、先のほうに人影が見えました。
雨がぽつぽつ落ちてきます。ここは強制収容所で、囚人を使ってV2ロケットを製造していたところです。こういうところに来ると、何故か天候も重苦しくなってきます。
インフォメーションに行き、「ツアーに参加したいのだけど・・・」、「OK、2時からでドイツ語しか無いよ!」と言います。英語でもたいして変わらないので参加することにしました。10分後に英語の説明用映画が上映されるそうです。始まってみると観客は僕一人でした。5分ほどするとドアが開いて外人(僕が外人?)が2人入って来ました。
夫婦のようです。映画が終わると出口で、なにやら僕に聞きます。「困ったな・・・!」と思いつつ、ツアーと言う言葉が聞こえたので、「ヒアー!」と答えました。
20人ほどが、説明を聞きながら回るのですが、「話が長い!」傘も差さずに立ったまま聞いている人も居るのに延々としゃべっています。僕と後から来た外人夫婦は、ドイツ語が分からないので、顔を見合わせながら「分からないポーズ(のつもり)」を取るのですが、皆じっと聞き入っています。収容されていた人のことを考えたら雨などどうでもいいのでしょう!
山の横っ腹にトンネルが何十本と掘られていて、その中が製造工場だったのです。トンネルも囚人が掘ったのでしょうか?、はっきりした事は説明書(英語)を読まないと分かりません。外にはガス室と思われる建物もありました。
映画を観た限り、機械らしき機械もなしに人力で作ったトンネルです。バケツリレーで土を運び出しながら、地下に巨大な空間を作っていたのです。良い意味でも悪い意味でも人間の力ってすごいですね!
米軍とロシア軍によって破壊尽くされた施設なのでほとんど瓦礫しか残っていません。一番奥に水が溜まっていたのですが、アクリルで固めたように、微動だにしない水でした。あんな水面見たことがありません。
1時間半のツアーが終わって、その他の展示を見たのですが、工事中をしているからか、これと言った展示はありませんでした。16時29分発のトラムに乗ると16時44分の列車に間に合いそうなのですが、20分しかありません。あわてて坂を下ってゆくと、後ろから車が着いてきます。「ヒッチハイクしようかな・・・?」と思って後ろを向くとさっきの外人(イギリス人でした)夫婦です。「どこまで帰るの?」、「ノルトハウゼン!」、「なんだ、じゃ乗って行けよ!」と言うことでドアを開けると犬が寝ています。
犬も一緒に、イギリスからオランダにフェリーで出てキャラバンと言っていたので、キャンピングカーをどこかこの近くに置いているようです。優雅ですね・・・!、久しぶりに写真を撮って送ってあげる事にしました。こういう事があるから、旅は止められません。旅に身を委ねられるようになると、色々面白いことが出てくるのですが、そのころにはもう旅は終わりです。
明日はライプチヒに行って、あさってはフランクフルトからソウル行きの飛行機に乗ります。