統一日報
東京測地系→世界測地系 韓国経済の最新動向
政府債務増を懸念も輸出は回復傾向
日付: 2020年10月14日 00時00分
実体経済の痛みが大きいうえ、為替や株式も打撃を受けていた韓国経済も、最近になり「株価の上昇や、通貨・ウォンが基軸通貨米ドルに対して堅調に推移している」ことに加え、「輸出も9月に入り回復傾向を示した」ことによって、「一息つけるのではないか」との声も出てきている。
国際金融市場において、決して強い通貨とは言えない韓国ウォンを背景に運営されている韓国経済にとって、「財政状況の悪化」は即時、韓国の金融危機に至る危険性というものを孕んでいる。
こうした中、新型コロナウイルス感染症を巡る事態に対応するため、韓国政府は莫大な財政を注ぎ込み、政府債務比率の国内総生産(GDP)対比が44・8%に高まるものと見られている。
世界的な格付け会社であるフィッチ・レーティングスによる最近の報告書によると、韓国の2020年のGDP対比の政府債務比率は44・8%になると予想されるとの見通しが示されている。
同報告書では、さらに21年には47・8%、22年には49・1%へ増加するものと見られると予測されている。
昨年のGDP対比の政府債務比率は38・0%であったのに比べて、3年で11・1ポイントも上昇するとの見通しであり、財政状況の悪化は顕著になるとの見通しである。
「通貨ウォン」が国際基軸通貨群に入っていない中、財政悪化は、韓国経済に深刻な悪影響を与える可能性がある。
なお、新型コロナウイルス対策が世界的に拡大しており、こうした政府債務の拡大は、韓国だけに限ったことではないことも事実である。
フィッチ・レーティングスは韓国を含むアジア太平洋経済協力会議(APEC)の信用評価対象21カ国・地域のうち、19カ国・地域の負債比率が上昇するとの見通しを発表している。
同社は、日本の22年の政府債務比率が19年に比べ27・7ポイント急増し、ニュージーランド(22・6ポイント増)やオーストラリア(19・0ポイント増)、インド(15・6ポイント増)も大幅にアップするものと予想している。
上述したように、財政状況に不安が出てくると、国際金融筋からは、「国家債務の返済能力に対する関心が高まる」ことは必然である。
そして、その国家債務の返済能力に関する一つの重要な指標が、「世界的な格付け機関による国家信用格付け、カントリーレーティング」ということになる。
こうした中、世界的な信用格付け機関の一つであるムーディーズ・インベスターズは、韓国の大企業の信用格付けを一斉に引き下げる可能性を示唆している。
ムーディーズは韓国の非金融分野の企業26社を分析した結果、半数を超える15社の上半期の業績が不振だったと評価した上で、「世界的な景気低迷が続く中、韓国の非金融企業の信用度に圧力が続きそうである」と予想した。
特に石油精製、化学、鉄鋼、自動車産業など景気に敏感な産業が大きな打撃を受けているとし、ムーディーズは、「これら産業はコロナによって最も大きな打撃を受け、景気回復遅延など外部のショックに弱い」と分析している。
なお、こうした見方が出ている中にあっても、韓国の株価は総じて堅調に推移しているが、国際金融市場では、「韓国株が突然、下落する危険性はないのか?」といった懸念の声が出始めていることに注意を払っておきたい。
一方、先行き不安視されるような材料が示されている中で、朗報もある。
韓国政府・産業通商資源部が発表した統計によると、今年9月の輸出額(通関ベース)は前年同月対比7・7%増の480億5000万ドルとなっている。
輸出の増加は7カ月ぶりで、新型コロナウイルスが発生してからは初めてとなる。
また、7・7%という増加幅は18年10月以来、1年11カ月ぶりの高水準となる。輸出が回復してくると、韓国経済は一息つけるかもしれない。
(愛知淑徳大学ビジネス学部ビジネス研究科教授 真田幸光)
東京測地系→世界測地系 韓国経済の最新動向
政府債務増を懸念も輸出は回復傾向
日付: 2020年10月14日 00時00分
実体経済の痛みが大きいうえ、為替や株式も打撃を受けていた韓国経済も、最近になり「株価の上昇や、通貨・ウォンが基軸通貨米ドルに対して堅調に推移している」ことに加え、「輸出も9月に入り回復傾向を示した」ことによって、「一息つけるのではないか」との声も出てきている。
国際金融市場において、決して強い通貨とは言えない韓国ウォンを背景に運営されている韓国経済にとって、「財政状況の悪化」は即時、韓国の金融危機に至る危険性というものを孕んでいる。
こうした中、新型コロナウイルス感染症を巡る事態に対応するため、韓国政府は莫大な財政を注ぎ込み、政府債務比率の国内総生産(GDP)対比が44・8%に高まるものと見られている。
世界的な格付け会社であるフィッチ・レーティングスによる最近の報告書によると、韓国の2020年のGDP対比の政府債務比率は44・8%になると予想されるとの見通しが示されている。
同報告書では、さらに21年には47・8%、22年には49・1%へ増加するものと見られると予測されている。
昨年のGDP対比の政府債務比率は38・0%であったのに比べて、3年で11・1ポイントも上昇するとの見通しであり、財政状況の悪化は顕著になるとの見通しである。
「通貨ウォン」が国際基軸通貨群に入っていない中、財政悪化は、韓国経済に深刻な悪影響を与える可能性がある。
なお、新型コロナウイルス対策が世界的に拡大しており、こうした政府債務の拡大は、韓国だけに限ったことではないことも事実である。
フィッチ・レーティングスは韓国を含むアジア太平洋経済協力会議(APEC)の信用評価対象21カ国・地域のうち、19カ国・地域の負債比率が上昇するとの見通しを発表している。
同社は、日本の22年の政府債務比率が19年に比べ27・7ポイント急増し、ニュージーランド(22・6ポイント増)やオーストラリア(19・0ポイント増)、インド(15・6ポイント増)も大幅にアップするものと予想している。
上述したように、財政状況に不安が出てくると、国際金融筋からは、「国家債務の返済能力に対する関心が高まる」ことは必然である。
そして、その国家債務の返済能力に関する一つの重要な指標が、「世界的な格付け機関による国家信用格付け、カントリーレーティング」ということになる。
こうした中、世界的な信用格付け機関の一つであるムーディーズ・インベスターズは、韓国の大企業の信用格付けを一斉に引き下げる可能性を示唆している。
ムーディーズは韓国の非金融分野の企業26社を分析した結果、半数を超える15社の上半期の業績が不振だったと評価した上で、「世界的な景気低迷が続く中、韓国の非金融企業の信用度に圧力が続きそうである」と予想した。
特に石油精製、化学、鉄鋼、自動車産業など景気に敏感な産業が大きな打撃を受けているとし、ムーディーズは、「これら産業はコロナによって最も大きな打撃を受け、景気回復遅延など外部のショックに弱い」と分析している。
なお、こうした見方が出ている中にあっても、韓国の株価は総じて堅調に推移しているが、国際金融市場では、「韓国株が突然、下落する危険性はないのか?」といった懸念の声が出始めていることに注意を払っておきたい。
一方、先行き不安視されるような材料が示されている中で、朗報もある。
韓国政府・産業通商資源部が発表した統計によると、今年9月の輸出額(通関ベース)は前年同月対比7・7%増の480億5000万ドルとなっている。
輸出の増加は7カ月ぶりで、新型コロナウイルスが発生してからは初めてとなる。
また、7・7%という増加幅は18年10月以来、1年11カ月ぶりの高水準となる。輸出が回復してくると、韓国経済は一息つけるかもしれない。
(愛知淑徳大学ビジネス学部ビジネス研究科教授 真田幸光)