京都市役所=飼手勇介撮影© 毎日新聞 提供 京都市役所=飼手勇介撮影

 京都市が独自に実施している、低所得世帯を対象にした個人市民税の減免措置について、市が2024年度から廃止する方針を示したことに、市議会で異論が噴出している。低所得層の負担増につながるうえ、廃止に伴う福祉サービスの本人負担が最大で総額13億円増える見通しとなるからだ。市は関連条例の改正案を提出しているが、コロナ禍による生活への影響が深刻化する中で4万人以上が影響を受けるとみられ、採決は厳しい情勢だ。

 市民税には所得に応じた「所得割」と、一律に課せられる「均等割」の2種類がある。市は所得額が一定の基準以下で所得割が課税されない「所得割失格者」(19年度で約4万2000人)について、均等割も独自に免除。低所得層対策として戦後直後の1951(昭和26)年に始まった制度だが、現在は地方税法にも非課税制度が整備されたこともあり、政令市で同様の減免制度を続けているのは京都市のみという。

 市は今回、国の2021年度以降の税制改正で市民税関連も対象に加わっていることを契機に、減免制度の見直しに着手。9月市議会に関連する条例改正案を提出していた。所得割失格者分の減免措置を廃止することで、約1億5000万円の増収となる見込みだ。

 一方、減免措置の廃止により、市民税(住民税)を免除されていた世帯が住民税の課税世帯になるため、国民健康保険や後期高齢者医療制度などで自己負担額が増えることになる。市が減免制度を廃止した影響を試算したところ、無料で受けられるサービスの廃止分などを含めると、57事業の総額で最大約13億円の本人負担が見込まれることが判明した。

 20日の市議会で市側は、福祉サービスの本人負担増に対応するため、経過措置を設けると説明。ただ、財政難から「全て(同様のサービス水準を)維持するのは困難」として、負担増に理解を求めた。市議からは、低所得者への負担集中に「コロナ禍で泣きっ面に蜂だ」「生きるか死ぬかの人もたくさんいる」などと野党会派のみならず、与党会派からも批判が相次いだ。

 条例改正案は27日の本会議採決に向け調整が進むが、市側に対応を求める付帯決議をしての可決にも「それでは済まない」(与党会派市議)との見方もあるほか、否決すべきだとの強硬論もくすぶる。11月に予定される市議会まで継続審議とすべきだとの声も浮上し、先行きは不透明だ。【小田中大】

市民税減免廃止で想定される主な負担増

・高齢者インフルエンザ予防接種(1万7人)

1回当たり無料→2000円

・後期高齢者高額療養費(9540人)

入院で月2万4600円→5万7600円

・介護保険家族介護用品支給(287人)

年6万円分→対象外

・高校・学用品購入等助成金(127人)

最大年14万4000円→対象外

※カッコ内は影響人数の推計