やや時間が空いてしまったが、先般の東京異次弦空洞のライブレポ的なものをさらっと書いておく。さらっと。
我らが平沢進師匠のP-MODEL30周年&ソロ20周年記念として始まった一大プロジェクト「凝集する過去 還弦主義8760時間」。これまで平沢氏の手により過去のP-MODEL&ソロ曲がお得意の管弦楽アレンジに“自己再生”され「突弦変異」「変弦自在」という2枚のアルバムに集約された。そして、その締めくくりとして、最後まで駄洒落で貫き通すというコンセプチュアル魂にて「東京異次弦空洞」と冠するライブが執り行われたわけだ。
前置きはこんなもんということで。私は最終日の1月14日に参戦。久しぶりのSHIBUYA-AXにマゴマゴ。ちなみに、13日はUSTの実験配信で固まるヒラサワをハラハラしながら観ていた。
じゃあ、最終日の曲順に薄れ行く記憶を手繰り寄せつつメモっておこう。
M-01: アート・ブラインド
還弦主義を象徴するオープニングとなった。サイレントチェロ通称ナナフシをしれっと弾く平沢師匠。必要とあれば何でも自分でやってしまうスタンスは30年経っても変わらんわけか。平沢氏の左右ではタイからのゲストNengさんとRangさんがでっかいハンマーで曲に合わせてキンコンキンコン。どうでもいい話だが、ハンマーの頭をしょっちゅうすっ飛ばしていた私は、あのでかいハンマーの頭が客席まで飛んでこないか冷や冷やしていたんだぜ。
M-02: DUSToidよ歩行は快適か?
用務員に転職しすっかりステージではお馴染みとなったレーザーハープを一人で“搬入”する平沢氏。会場からは笑いとともに頑張れコール。後ろでそっと手伝うスタッフを見るにつけ「ヒラサワうしろー」とか言ったらいけない。呼び捨てじゃなくても言ったらいけない。以降、本ライブでは“搬入”と“搬出”が繰り返されることになる。
そうそう、最初レーザーハープの背後からナイターみたいな照明がドーンと会場を照らしてて「目が~目が~」状態だったんだけど、そこに平沢氏のシルエットがスッと入って照明が消えた瞬間がかっこよかったな。楽曲は軽快な還弦アレンジで実に快適でございます。やはり「ハイ」は盛り上がるよね。ハイ。
M-03: CHEVRON
ナイスんん~。機械音に始まる重厚な吹きモノと低音部の弦の調和が何度聴いてもかっこいい。レーザーハープさばきもギターソロもかなり安定している印象。あ、ギターといえばICE9を“搬入”するとき左側にブレてグラっとなったのは一瞬ヒヤッとしたな。
M-04: MOTHER
還弦MOTHER、原曲の前奏部分にあった例の旋律が好きな方なんか賛否両論かもしれんけど個人的にかなり好きなアレンジ。勇壮なMOTHER、母は強しといったところか。サビのリフレインも短くなったから、カラオケでも歌いやすいぞ!だから、バージョン違いの楽曲も入れるんだJ○Y!
M-05: Another Day
序盤からそんなに飛ばして大丈夫か?大丈夫だm
MOTHERから淡々とこの曲に繋いじゃう。会場は馬鹿コーラスというか馬骨コーラスによる大合唱なので平沢さん歌わなくても大丈夫ッス。
ってか、この曲のときずっとPCやミキサー睨んでたりしたんだよな。レーザーハープあまりいじってなかったしマシントラブルでもあったのかと邪推してみたり。
M-06: ミサイル
きれいなビブラートと伸びのある声。初日は在宅UST組だったから正確には分からないけれども、最終日はやはり初日に比べて声がよく出て安定していたと思う。原曲のイメージをがらりと変えた還弦アレンジは、全編通して奏でられる上下に揺れ動く弦の旋律と、それにからみつくアシッドなベース、そしてへっぽこに転調する間奏がツボなのである。
M-07: サイレン*Siren*
サイレーンうーううぅ…(;_;
昨年亡くなられた今敏監督の追悼曲。ライトを浴びながら空を見据えて歌う平沢氏が天に語りかけているようでジーンとくるわけで。きっと監督はAXの関係者入り口から真っ先に滑り込んで特等席で観てるんだろうなとか思ったりした。「夢みる機械」制作続行&師匠が音楽を手がけることが決定してよかったよかった。あらためてご冥福をお祈りします。
M-08: 金星
カッタウェイのギター(エレアコ?ナイロン弦?あやふやスマン)を“搬入”し弾き語りモード。いやはや、何が驚いたかって、声が良いんだよ、声が。何を今更と?いやね、いつもの張り詰めたハイトーンボイスやファルセットと違って、この曲は静かな歌い口だからミドルや低音ボイスがバシバシきちゃうわけですよ奥さん。なんか日本語めちゃくちゃだけど、こうして生で繊細な声使いを聴くとあらためて綺麗な声してるな、というわけです。
M-09: GOES ON GHOST
レッツゴー。なんかPAが低音をバシバシ出していて、キック音が地を這うように鳴り響いていた。張り詰めていた空気が美しい旋律とともに震えて、ズボンの裾なんかビリビリしていた。浄化される。
M-10: 夢みる機械
えへへ、お楽しみの時間だよ…とは誰の言葉だったかな。
NengさんとRangさんが小芝居を始める。赤いボタンを押すとテスラコイルがビビビー!はりゃー、そんなに焦らされたらおしっこが漏れてしまいますぞ。えー、馬鹿なこと言ってないで、焦らしに焦らされ曲が始まると馬の骨たちは一気にヒートアップ。エントロピーは右手を拝借の大合唱。
そして、間奏、あれ、一番凄かったよなあ。ヒラサワが立てひざでギタープレイを見せ付けている最中、グラビトンを搬入してきたNengさんとRangさん。ギタープレイが終わるや否や続けざまに、一方は車輪を回してダイナモ発電、一方はMIDI信号発信の二人掛でグラビトンをポップンミュージックの如くバシバシ連打。練習したんだろうなあ…。で、それを直立不動&真顔で見つめるヒラサワの案の定っぷりにゃあ、大いに笑わせていただいた。
M-11: バンディリア旅行団
会場が大いに沸いたところで、一旦クールダウンしましょうということで。打ち込みのマシンガンみたいなドラムロールと節々にシンバルが幾度となく繰り返されて行き着く先はギターソロのあの永遠の旋律。還弦されたってバンディリアのギターソロのフレーズはあれしかないよな。これまた浄化ソング。
M-12: LEAK
と、思ったら、落ち着いていられない。LEAK!LEAK!
LEAKが始まる前にRangさんが登場してLEDビカビカのサングラス(?)を装着してダンスを披露した。このダンスしてる間にかかってたLEAKをアレンジした曲が素晴らしいんだよなあ、リードシンセが元気良くって。mp3配信希望。
M-13: Solid air
そりっでぃやあああああぁぁ!
こりゃ、盛り上がるからね。前日のUSTでは観れなかったし。これは何といってもデストロイギターよ。ギターに入る前にいつもより多めに「そりっであー」するサービス付きで、弾き始めるや壇上からピョンと飛び降りた。会場が熱いよおにいちゃん。飛び降りた後、ちゃんと立てるか一瞬心配してしまったのは私だけだろうか。無事立ち上がった平沢様、いつも通り元気に膝蹴りしていたので安心した。
M-14: ASHURA CLOCK
居丈高に。攻撃的な曲が続きます。ベース音が大きめに出ていた印象。やはり個人的に後半リズムトラックとベースパターンだけになるあの一瞬がツボでして、あそこだけで10分くらいやって欲しいくらいね。
M-15: 環太平洋擬装網
トルコ軍隊行進曲ではなく。熱い曲よな。この曲のとき鮮明に覚えているのは、ギターソロに向かうとき、平沢氏が一瞬躓きそうになったんだよな。ここまで大きなミスが無かったもんだからね、あんまり脅かしっこ無しですよ。
M-16: トビラ島
いやはや、還弦のおかげであっちゅう間にスルメ曲よ。ライブから帰ってしばらくヘビロテだった。曲もさることながら幕が開いたときのNengさんの舞踊がこれまたよくってね。インタラとは違う荘厳なステージ演出。
そして極めつけは、話題のYAZAWAじゃなくてHIRASAWAスタイルね。マイクスタンドってあんた、そこ握るのあんた、のけ反りながら歌うのあんた、あんたー!ごめんなさい。インカムだけでは手元が寂しいのかマイクスタンド握り締めて歌うロッカー平沢。ロックは恥ずかしい!?いいもん見れたねぇニヤリ。
M-17: WIRE SELF
こっからアンコールだね。アンコールだって演出のために一回引っ込めたセットをまた“搬入”するんだから大変さ。レーザーハープの電源が入るときなんかカッコよくて一瞬会場がどよめく。ここにこの曲もってくるとかBITMAPを彷彿させるというかね。曲の出だしはライブ向けにアレンジされてたと思う。ワタシオンナコエハナセマス。
M-18: ルクトゥン OR DIE
( ゜∀゜)o彡゜おっぱい!おっぱい! じゃなくて ( ゜∀゜)o彡゜ルクトゥン OR DIE!ルクトゥン OR DIE!
馬の骨軍団の大合唱でAXが揺れている。熱い、熱すぎる、十万石まんjy。NengさんRangさん踊る踊る。平沢師匠は今回もThe Whoかはたまたプレスリーかギター弾きつつ腕をぶん回す。というわけで、最高の盛り上がりで全曲終了。
まあ、終わったときには私もはしゃぎすぎて息切れでえらいことになってたよ。恋なんかして無いくせに胸が苦しくってさ。嗚呼、日々の不摂生よ。
さてはて、今回のライブでは師匠のレーザーハープ捌きが以前より上達していたようだ。手の動きが総じてなめらかで余裕すら感じる。こっそりスタジオの鏡の前でポージングしつつ練習しているのだろうか…。いずれにしても、ギター片手に弾き語りするフォークなヒラサワやマイクスタンドで歌うロックなヒラサワなど、またいつもと違ったテイストのライブで楽しませていただきやした。また、今回はチケ取って下さった方をはじめオフ会で知り合った馬の骨仲間さん達に会えてよかったよ。折をみて集まろうってことになったようだしね(笑)。
こうして、還弦主義は見事フィナーレをかざったわけだけれども、2枚のアルバムに2回のライブ、そしてTwitterとの連携によって数々の“事件”も起きて実に濃密な企画だったと振り返る。ちなみにライブ終了後のMCではTwitterしばらく続けますとのことだったので、また何ぞしでかすのか、あるいはしでかされるのか、引き続き注視していきたいところ。
そうそう、還弦企画の中でアルバムに収録されなかったライブ向けの再アレンジ楽曲「ルクトゥン OR DIE」や「星を知る者」についての扱いはどうされるつもりなのだろうか。また、“P-MODELその他の楽曲”くくりについては投票行ったままそれっきりだし(気が向けばやるよみたいなこと書いてあるけれども…)。個人的な希望としては、還弦主義終了記念みたいな形で、今回のライブで夢みる機械やLEAKの導入で使われた楽曲なんかもセットでmp3配信してくれないかしら、なんて思ったりするのだけれども。ひょっとして、公式スケジュールの“2011/01 音源(内容未定)リリース 豪華アイテムになる予定”って、このことか…?豪華アイテム…??と漠然とした期待を抱きつつ…。
まあ、そんなこんなで、8760時間強お疲れ様でしたということで、あんまりダラダラ書いていても仕方が無いのでそろそろ仕舞にしよう。最初に「さらっと書いておく」とか言いながら、案の定長くなっちゃったじゃないの。日にちが開いてしまったもんだから断片的な記憶を辿って余計に疲れたぜ。
というわけで、最後は忘れないように、今回のライブで学んだ教訓を書き記しておこうと思う。
「使った物は片付けましょう」