ICUROK!!

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Marry her.

2018年12月28日 00時39分37秒 | 映画

2018年の私的映画10選など。

『ジオストーム』
ローランド・エメリッヒもドン引きするレベルの不真面目映画オブ・ザ・イヤー。地球規模の大災害を描いた唯のありふれたディザスタームービーかとおもいきや、ドラマ部分を含めノリと勢いだけで(はて、どこかで……)グイグイ推し進めていく超展開っぷりに度肝を抜かれ、劇場では終始心の中でサムズアップしていた作品。
とにかく物事が前のめりで進み展開が早い。重大な判断が必要な箇所はすべて即断即決。意思決定の際に、「吟味する」「他人を疑う」などという余地は一切無い。特に気象コントロール衛星技術者に転職したマイク・バニングの弟くんのフィアンセ(シークレットサービスである)が陰謀を阻止するために大統領拉致という懐かしのジャック・バウアーばりの超越した手段を即決するところは爆笑もの。そしてフィアンセのドンパチ賑やかな活躍を目にした大統領が弟くんに向けた一言“Marry her.”は今年一番の名台詞だとおもう。一々役者陣も真面目な顔して演技続けるの大変だったろうなと現場の苦労を勝手に想像してしまうのだった。
それはそうと、台風への対処法がシャークネードと同じ爆薬だったのだけど、台風被害の大きかった本年を振り返りつつ、本当に有効なら是非とも実現していただきたいものである。

『戦狼/ウルフ・オブ・ウォー』
スコット・アドキンスの中華服姿艶めかしい前作からガラリと雰囲気が変わり、安直な言い方だが何処を切り取ってもクライマックスという中華資本をぶち込みまくったアクション超大作。ウー・ジン自ら監督を務め三作目もやる気満々で物凄いシリーズに作り上げている。
話としては色々な方面から怒られそうで、某国営放送でもプロパガンダ映画扱いだったが、それで済ませてしまうには勿体ない壮絶なエネルギーに満ちたアクションの完成度に脱帽。個人的に呼吸困難に陥るレベルで大好きな場面といえば、戦車がドリフトして宙を飛ぶという戦車道行進曲が聞こえてきそうな戦車チェイスアクション。メイキングを見ると制作陣は戦車版ワイルドスピードを目指していたようだが、「バターになっちゃいますよ」的シーンを差し込むなど、これ絶対にガルパンファンいるだろ!とおもわざるを得ない仕上がり。しかもこの戦車道シーン、実際にウー・ジンが戦車操縦しているから大したもん。
ステイサムのサメ映画しかり、今後も潤沢な中華資本による作品が増えていく流れに対し色々物申す方々もいらっしゃるようだが、バンバン金使って面白い作品を作っていってもらえれば言うことなしだ。

『マンハント』
大人になって良かったなぁとおもえた作品。高校生くらいの時分に観ていたら物凄いこき下ろしていたんだろうなと……。
全体的に90年代くらいのアクション映画のノリで本当に緩くて穴だらけなんだけど何処か憎めない。一見するとダサいようで、一周回ってカッコイイという境地に辿り着く。ウー校長のファンとして、こんな時代になっても未だジョン・ウー美学は健在であり、監督悲願の企画を本邦で実現できて本当に良かったねと、唯々祝福するのみである。手錠を繋いだチャン・ハンユーと福山雅治のラブラブっぷりにチョウ・ユンファとダニー・リーの姿を重ねる。他にも冒頭から楓林閣のカチコミをおもわせるような銃撃戦をおっぱじめたり、福山氏がティ・ロンばりの日本刀さばきを見せつけたりするなど、セルフオマージュをあちこちに散りばめつつ、最後は青空の下“For a better tomorrow.”で締めるのも実にオツ。大阪舞台の割には殆ど関西弁が出てこない謎はさておき、國村準、池内博之、殺意の波動に目覚めた倉田保昭先生など脇を固める役者陣も大変素晴らしかった。

『イコライザー2』
冒頭から高速鉄道に揺られて世界最強のコックさん映画かなという、前作の闇の必殺仕置き人スタイルから今作は完全に歩く死亡フラグ寄りのスタイルに変貌を遂げたマッコールさん。マッコールさん自身のキャラクターを掘り下げつつ、ナメたらアカンお仕置きイコライジングアクションもパワーアップしており続編の在り方として正しかった。街のチンピラ集団に加わりそうになっていた近所の青年への説教や、例の「一度しか殺せないのが残念だ」の名台詞シーンをはじめ、マッコールさん前作以上に滅茶苦茶怖い。
ラジオ放送などでハリケーンが迫っているという伏線を張りつつ、人々が避難した無人の街を最後の戦いの舞台に持っていく展開がとても好き。冷静かつ着実に一人一人敵を屠っていくマッコールさんの姿にペイルライダーのイーストウッドの姿を重ねつつ、キャラの掘り下げも完了したところで是非とも三作目をお願いしたいところだ。

『レディ・プレイヤー1』
毎年のことながらあれこれ書いているとこの辺でバテてくるな……。
さて、“スピルバーグがまたやった”というべきこの作品。80年代に映画にポップカルチャーに…そういったものが大好きで本当に良かったとおもえる一本だ。小ネタが分からなかったとしても冒険映画として普通に面白い。
本作品はやはり何といっても最後に強大な力に対してオアシスの皆が立ち上がりハチャメチャになって戦う場面のあのテンション。レゴムービーのクライマックスにも似たあのゾクゾク来る感じが堪らなく好きで劇場でニヤニヤと鳥肌が止まらなかった。本作を観た後におもわずシャイニングを見返したんだけど、オマージュへの作り込みが物凄く細かくてひたすら感心。また、CG構成が主体の場面であろうとキメ画の構図が完璧でさすがはスピルバーグ様様だと改めて感服したのであった。
なお、この映画、主人公の描き方に注文付けたくなる場面もあったが、冷静に考えたら童貞オタクに彼女ができたらそうなるわなと妙に納得して自己解決してしまったのだった。

『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』
冥府魔道に生きるデル・トロの子連れ狼。前作よりアクション要素多めに入れつつ、陰惨な流れは相変わらず。
理不尽な仕事は空回りを続け、上層部の手のひら返しに翻弄されて、運命がすべて呪われたかような負のスパイラルに堕ちていく様は自身の境遇にも重ねてしまい冷静には見ていられなかった。今年亡くなってしまったヨハン・ヨハンソン作曲の劇伴、デェェェェウ…デェェェェウ…が精神にズビズビ効いてくる。完全に死んだかとおもったデル・トロがラストに死んだ目で新人採用面接に登場してくださったので三作目はいかほど陰鬱な作品になるのか期待大。
それはそうと、この作品といえば、やはりあの話題になったアディオスショットに尽きるだろう。仕事でクソみたいな連中と接するたびにあれをお見舞いしてやりたくなってしまうよね……。

『若おかみは小学生!』
大方の方々と同様、当初はキャラデザと文科省云々の宣伝文句にこれどうなのよ…とやや疑いの目で見送ろうかとおもっていたのだけれど思い切って観て良かった。
おっこちゃんの両親が事故で亡くなってしまうところが話の契機なので重い話にもなるのだけど、そういった悲しみ諸々背負いながら、同じように大切な何かを失った人たちと触れ合っていく中で、前を向いて生きていこうとするおっこちゃんの姿に最後はもう手前の汚れた目からも汁がドバドバになってしまった。吉田玲子さんの脚本にハズレなし。
キャラデザどうなのよと言いつつ、蓋を開けてみれば全体的に物凄く作画が良いし、季節の移り変わりなど美術、演出が物凄く細かいところまで丁寧に配慮されて作り込まれていて、異例のロングランになったのも頷ける完成度。

『ピーターラビット』
あの世界一有名なウサギの可愛らしい平和な作品かとおもったらとんでもねぇ。人間との血で血を洗う壮絶なバトルを繰り広げるバイオレンスコメディだった。
冒頭スズメたちが可愛らしく歌いながら登場したところを容赦なく撃墜するという出オチから勝負あった感。こんな悪い顔したウサギ見たことねぇ。人間を倒すためならアナフィラキシーショックからまさかの爆破までどんな手段も厭わないピーター兄貴に惚れ惚れ。これを観る前に実家で少しだけ原作を読んだのだが、こいつら葉っぱでもやってんのかというテンションかつ斜め上を行く掘り下げ方で殆ど意味がなかったというとんでもない作品だった。

『カメラを止めるな!』
ひたすらワンカットで撮ったゾンビ映画程度の情報で観に行ったらワンカット以後の第2部からが本番だったという構成の妙による勝利。映画作りを主軸に置いた作りということもあって、かつて黒歴史量産集団の片隅に在籍していた私個人的にも響く作品であった。
先に構成の妙と言ったように、あの伏線がここでこうなるのかという爆笑答え合わせが随所に散りばめられており、劇場内はドッカンドッカン大盛り上がりだった。上映後に自然発生的に拍手が起こる場に居合わせたのは久しぶりで、劇場の空気感含めて良い作品だったとおもう。

『映画 HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』
なっげぇタイトル!というわけで10作目は悩んだ末こちら。プリキュア15周年ということで、なんとまあ、恐ろしいことでしょうね奥さん。初代を観ていたあの頃あたいはまだまだ可憐な学徒であったわけで……。
プリキュアシリーズは正義の押し売り感を強く感じるようになってからうんざりして観るのを止めていたのだけれど(女児アニメを真剣に見るな)、現在放送中のハグプリは久しぶりにちゃんと観続けられている。時代に即した価値観を取り入れて先進的なものの見方をした作りで感心しきりなのだ。そんなこんなで初めて劇場でプリキュア映画を観たのだけど、とても温かい気持ちになったよね。個人的にやっぱり初代が好きだというのと、その他思い入れのあるキャラたちが出てくるとやはりこみ上げてくるものがあるね。15周年にふさわしい打ち上げ花火のような作品で、お兄さんもお姉さんも心の中でミラクルライト振っていたぞ。


さて、そんなこんなで、今年は昨年に続きというか昨年以上に決定打が無く非常に悩みまして、良い映画というよりは、個人的に楽しかった映画、何度も見たくなるような映画といった観点を重視して選別した結果であります。また、振り返ってみると、『SPL狼たちの処刑台』や『タクシー運転手約束は海を越えて』をはじめ、昨年同様アジア映画の当たりも多かった一年だったとおもいます。

では、例により各種オマケの大賞をば。まず女優賞は『万引き家族』より真夏の気怠い午後に汗だくになって一緒にそうめん食べたい女優No.1で現在朝ドラでも大活躍中の安藤サクラさんに決定。そして男優賞は『マッド・ダディ』『マンディ地獄のロード・ウォリアー』でガンギマリ演技&魅惑の顔芸でスクリーンを彩りつつ今後どこへ向かうのかさっぱり分からないキャリアを積み重ね続けているニコラス・ケイジに決定。
今年の銃撃戦大賞はハイウェイでマイケル・マン作品のような硬派なガンファイトを見せてくれた『ザ・アウトロー』。劇伴大賞は先述の『ボーダーライン』の陰鬱テーマや『マンディ地獄のロード・ウォリアー』でのトリップ映像との融和が見事だった故ヨハン・ヨハンソン氏へ。ベスト・オブ・説教は『イコライザー2』のマッコールさん。入浴シーン大賞は『ニンジャバットマン』のゴリラに。お家で飼いたい可愛い動物大賞は『ザ・プレデター』のプレデター犬。護られたい二の腕大賞は『犯罪都市』のマ・ドンソクへ。最後に、理性を狂わせるショタ大賞は『ペンギン・ハイウェイ』のウチダ君に決定です。皆さんおめでとうございます!

来年は年明け早々に『クリード炎の宿敵』『マイル22』をはじめ期待値爆上げのラインナップで始まり、ガルパン最終章第2話も待っているわけで、相変わらず句読点のように「辛い」「辛い」言っている毎日でありますが、おっこちゃんのように前を向いて生きねばなりませんな。作品を万全の態勢で楽しむために精神状態を健全に保つべく、来年も好きな事には全力で身も心も金もブッ込んでいく所存であります。
それでは、皆様良い年をお迎えください。