第29作『あじさいの恋』の冒頭部分では、北アルプスの風景が2回、映し出されます。
●雪をいただく北アルプス
木崎湖北岸の踏切を電車が走り去ったあと、カメラが振られて北岸の桟橋周辺の遠景が映し出されます。そのあと、カメラが北岸に移動し、桟橋にたたずむ寅さんを映し出します。この2つの場面の間に、北アルプスの風景が挿入されています。ただ山の姿が全て映っているわけではないので、山に詳しくない人には、特定しにくいです。そこで北アルプスの画像を片っ端からネットで検索したら、それらしい山がありました。
木崎湖の少し南から撮った北アルプスです。国道148号から一本道をは入ったところです。左の高い山が蓮華岳(れんげだけ)、右の高い山が岩小屋沢岳(いわごやざわだけ)。遠くから撮っていますが、ちょっと動いただけで、山の重なり方が違ってきました。また家も建て込んできているようでした。このあたりのような気がしますが…。
●大出の吊橋と北アルプス
映画が本編に入る直前、歌とスタッフ紹介が終わったところで、再び北アルプスの風景が映し出されます。こちらはあまりにも有名で、観光パンフレットやカレンダーなどの写真に多用されています。撮影場所は北安曇野郡白馬村。大出公園付近から撮った北アルプスです。
大出の吊橋の右側にある茅葺屋根の民家は、木々に隠れて見えませんでした。うしろの北アルプスはしっかり見えていました。真ん中の尖った山は白馬鑓(しろうまやり)、その右は杓子岳(しゃくしだけ)と白馬岳(しろうまだけ)です。
第29作『あじさいの恋』の公開は、1982年12月でした。もう40年近く前のことです。
ロケ地を回ってみると、山や湖など自然環境は、ほぼロケ当時のままでした。木崎湖の北岸では、寅さんがたたずんでいたあの桟橋は、なくなっていました。南岸では気になったことがあって、帰宅して検索してみました。それは旅館です。すると、映画に映り込んでいた山水、ろまんす、川端館、いずれも検索できませんでした。もしかしたら、すでに廃業しているのかも知れません。南岸の湖岸付近が、何かスッキリした感じがしたのは、少しずつ寂しくなっているからかも知れません。そう感じました。