岐阜市の長良川河畔にやって来ました(2021/12/22)。1987年の夏、ここで『男はつらいよ 第38作知床慕情』のラストシーンの撮影が行われました。
夏の長良川といえば、鵜飼です。例年、5月中旬から5か月間行われますが、一番賑わうのは夏です。その夏の鵜飼が無事に行われるよう、毎年七月中旬、長良川河畔にある新明神社で水難防止と鮎供養を兼ねた「長良川まつり」が行われます。そこに寅さんがやって来るという設定で、撮影が行われました。
映画が最終場面にくると、長良川に来ていた寅さんからとらやに届いた暑中見舞いが読まれます。
読み終わると画面は、とらやから長良川河畔に切り替わります。
長良川のどこかというと、地図に十印がついている新明神社の前あたりです。
長良橋から撮影現場を見ると、現在はこうなっています。十印の場所は、写真真ん中にある舟の少し向こうになります。
さて映画では、長良川河畔を岐阜第一高校のブラスバンド部が行進するなか、寅さんが暖簾をかき分け、うなぎ屋から通りに出てきます。
残念なことに、うなぎ屋は、もうなくなっていました。犬の散歩をしていた人に尋ねると、平野屋さんだそうです。確かに画面には、「野屋」の文字が映っています。うなぎ屋の跡地は、隣のホテル石金の駐車場になっていました。
また、撮影当時この道は対面通行が可能で、交通量もありました。しかし現在は、この地域にある旅館やお店の関係者を除き、車での通行はできなくなっていました。
寅さんは、行進する隊列の間を横切って、向こうに渡ります。
橋の欄干のようなガードレールは、当時のままです。右に見えるのが長良橋です。
道路を横切った寅さんは、上からオレンジ色のテントの店をのぞきます。
うなぎ屋の後ろの建物は、屋根の上にあった看板が取り払われ、色はベージュに塗り替えられていました。また新明神社に植えられていた木々は切り倒され、神社の駐車場になっていました。
寅さんの視線の先では、店を出したポンシュウがうたた寝をしています。
ポンシュウの店は、階段を下りた左にありました。
ポンシュウのところに下りて行った寅さんは、岐阜の暑さに弱っていたポンシュウに代わって商売を始めます。自慢の啖呵売の炸裂です。
長良川の対岸に、山裾が見えます。この山は、岐阜城がある金華山です。行った日は、ここに舟が置かれていて、うまく写真が撮れませんでした。角度が少し、ずれてしまいました。
商売を寅さんに任せたポンシュウは、川岸にとまっていた屋形船の近くに下りて行きます。
コンクリートの階段と緑色に塗られた2本の鉄柱は、当時のままでした。
終わりを告げる音楽のボリュームが上がると、画面は金華山の上から見た長良川河畔の光景に切り替わります。
この光景を撮れるのは、当時は金華山山頂の岐阜城天守閣でした。そこから見おろすと、駐車場になったうなぎ屋の跡地や、木々がなくなった新明神社がしっかり確認できました。
レンズが徐々に引かれて画面は長良川の北方の遠景になり、映画は終わります。
撮影当時と比べると、ビルが少し増えているようです。
この映画が撮影されて、すでに30年以上が経過しました。寅さんが出てきたうなぎ屋はなくなり、新明神社の木々は切り倒されていました。また新明神社の前の道は交通規制がされていて、一般の車は自由に通行できなくなっていました。歳月の経過を感じさせられました。しかし長良川の流れや金華山のたたずまいは当時のままで、ほっとしました。