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科学技術はまだ未熟

2016-07-23 21:01:48 | 基本的な考え方
🌸科学技術は、まだ未熟🌸


私たちは、ここ200〜300年、人類を幸福にするものとして、

神に代わって科学、特にその社会的成果としての技術に、

信頼と大きな期待を寄せて歩んできたと言っても過言ではない。

にもかかわらず、その結果は、

主体であるはずの人間が、巨大な科学技術の前におびえつつ

非人間的なストレスに満ちた生活をせざるをえない状況を現出してしまった、と言わざるを得ない。


このような社会状況を前にして、科学技術は未だ幼い段階にあるということを、

社会全体が認識しなければならないのではないだろうか。

つまり、教育を始めとする社会活動のありようを、

知的科学情報の蓄積のみならず、

自然や人間に対する深い共感性や、美に対する芸術的感覚などを

重視したものに変容して行かねばならないと考えている。

そして、自然の保護や温かい人間関係の醸成を目指し、

多様性を重視した自然共生的な人間活動を目指す必要がある。

森林、自然の中で成長し時を過ごすことで醸成されるこのような自然への強い共感性や、

美に対する芸術的感性は、21世紀の科学技術の中心である医学の人間化をすすめる原動力になるものと期待される。


そこでは、人間の意味を十分に味わえるという意味で、クオリティー・オブ・ライフ(quality of life:QOL)あるいは、

自然と人間の双方に長期に安定した共生を約束するグローバル・アメニティー(global amenity)が重要な社会概念になるだろうと考えている。

そしてこのように、真の意味で高度な科学技術を目指すことで、

人々は安心と幸福感に満ちた人生を約束されるのではないかと考えた。


その後、健康の質そのものに対するWHOの新しい考えも健康の再定義として提示された。

健康とは、身体的、精神的、社会的な質を持つと同時に、spiritual(スピリチャル)な、well-being(ウェルビーイング)の、dynamic(ダイナミック)な状態であるとして、

健康の持つspirituality(スピリチュアリティー)が、

人間の尊厳の確保や、クオリティーオブライフ:QOLを重視するために本質的なものである

とする健康再定義議題が、1998年1月のWHO執行理事会において審議され、

「総会で討議すべきである」と決定されている。

しかし、結果的には総会議決事項とならず、

時間をかけて議論すべきであるとする意見が強く、spirituality(スピリチュアリティー)を重視する方向で、現在のWHOの健康の質の議論は進行している。

これら一連の健康再定義に向けた議論も、

自然環境の持つ人間の深い精神世界に対する癒し効果の解明が、

21世紀において重要な健康課題である、

とする動きを軌を一にするものと考えられる。

いま、森林医学研究への期待は、歴史的にもきわめて大きい、といわねばならない。


(「森林医学」より)