横浜市都筑区耳鼻咽喉科

南山田(センター北と北山田の間)の耳鼻咽喉科院長のブログ。

アレルギー性鼻炎とは

2012-09-12 08:51:59 | 院長ブログ

アレルギー性鼻炎とは、家の中の埃(ハウスダスト)やダニ、スギや雑草の花粉などが鼻の中に入ったとき、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状を起こす病気です。原因となるダニや花粉を抗原と呼びます。

もともとアレルギーの体質をもっている人が、何年か(ときに数ヶ月)の間抗原を吸い続けていると、体の中に抗体というものが増えて、アレルギーを起こす準備状態ができます。その後にさらに抗原が鼻に入ると、その抗原と粘膜の細胞に付いている抗体とが反応して、症状が起きるのです。

スギ花粉症では、抗体が増える(アレルギーの準備状態)のに最低2シーズン必要で、発症するのには3シーズンほどかかると言われています。スギ花粉がほとんどない北海道でシラカバ花粉症だった方が、横浜に転居されて3年目からスギ花粉症を発症することは、よくあることです。

最近は毎年多くの花粉が飛散するため、3歳で花粉症を発症する子もいます。小学校高学年では、4割もの児童で、スギ花粉に対する抗体が増えていて、その1/3が既に花粉症を発症していると言われています。残りの2/3の子たちがいつ発症するか、発症しないですむのか、予測する方法はありません。

アレルギーの体質をもったお子さんでは、多くの場合、乳児期にアトピー性皮膚炎、幼児期に気管支喘息が発症して、そのあとで鼻のアレルギーが発症します。このように次々と新しいアレルギーの病気が始まる状態は、アレルギー・マーチと呼ばれますが、私が開業前に勤務していた同愛記念病院の小児科部長だった馬場実先生が提唱された概念です。長年にわたって多くの喘息のお子さんの治療に全力を注がれた馬場先生の、御実感であったと思います。アトピー性皮膚炎や気管支喘息は、大きくなると軽くなることが多いですが、鼻のアレルギーだけは大人まで続くのが普通です。

60~70歳まで、自然寛解することはあまりありません。

年齢別有病率 (鼻アレルギー診療ガイドライン2009年版)

最近になって、耳鼻咽喉科医の立場から、喘息よりアレルギー性鼻炎の方を先に発症する子も少なくなく、そういう子に対して早く治療を始めれば、喘息を発症させないですむ可能性があるということも言われるようになり、これを早期介入と呼んでいます。しかし、早期介入に関しては、具体的にどのような子に、どのような治療を、どれぐらい行えばよいのか、分からない点がまだたくさんあります。

 

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秋の訪れ

2012-09-12 08:35:19 | 花鳥風月

テニスUSオープンが終わりました。男子はマレーがジョコビッチに勝利。ビッグ4の一角でありながら、ひとりグランドスラムの優勝の無かったマレーですが、先般のオリンピック金メダルに続いての優勝です。これで、今年のグランドスラムは、ビッグ4が皆1回ずつ優勝したことになります。

 

西洋朝顔が元気です。この花は、真夏より秋の方が旬です。そろそろ秋の気配が見えてきました。

 
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喉頭蓋炎と扁桃周囲膿瘍ーのどの炎症を甘く見るなー

2012-09-11 11:04:14 | 院長ブログ

一昨年9月にこのブログを始めたのが何日だったのか確かめてみると、始めたときは全く意識していなかったのですが、9.11だったのですね。一昨年の9月11日にこのブログを始め、今日で2年になります。

研修医のとき、まずたたきこまれた事がふたつあります。ひとつは、”人を見たら癌と思え”。乱暴な言い方ですが、重い病気を見落とさないためには、診察の時は常に最悪の事も想定して、小さな変化も見逃すな、という意味です。

そして”のどの急性炎症を甘く見るな”ということ。

喉頭というのは、喉の一番奥、のどぼとけの裏、声帯のある所ですが、ここがのどの中で一番狭く、しかも息の通り道は、この一カ所しかありません。ここが腫れて塞がれば、窒息です。喉頭蓋というのは、喉頭を守っている蓋なのですが、この蓋が炎症で腫れ上がることは、それほど珍しいことではありません。これが、喉頭蓋炎です。あるいはむくんでいるときは、喉頭蓋浮腫と呼んだりします。この病気になったら、一般に、窒息の危険が去るまで入院治療が必要になります。時に息の通り道を得るため、気管切開が必要になることもあります。

喉頭は、口を開けても見えません。このため喉頭蓋炎は、急速に進行することの多い病気ですが、内科の先生には診断できないこともあります。のど痛みが非常に強いのに、口を開けてのどを見てもたいして悪くないときは、この病気を疑って、耳鼻咽喉科で喉頭ファイバー(内視鏡)による診察が必要です。

また扁桃腺(正確には口蓋扁桃)の周りには、スカスカの線維しかないスペースがあり、そのスペースはずっと下の方まで、はっきりりした境界なしに深頸部から縦隔(心臓の周り)まで続いています。扁桃炎が、その周囲まで広がり、そこに膿が貯まってしまうのが、扁桃周囲膿瘍です。こうなると、強力な抗菌薬と、針を刺して(穿刺)膿を抜くことが、必要になります。重症の場合は、切開して入院治療が原則ですが、軽症であれば穿刺だけで治ることも多いです。しかし、一度なると、繰り返すことも多く、その場合は口蓋扁桃を手術で摘出する必要があります。

深頸部膿瘍は、扁桃周囲膿瘍以外の原因でも起きますが、これは本当に、命に関わる状態です。一般には、頸部を切開して膿瘍を開放し、ドレーン(膿を排泄させるための管など)を留置する、手術が必要になります。早期に治療すれば良いのですが、大学病院に勤務していた頃、紹介されていらしゃった時点で既に進行しており、手をつくしても救命できなかったこともありました。

耳鼻咽喉科は、耳や鼻の病気を診るだけではなく、頭頸部の手術を行う科です。開業医は、手術まではできませんが、咽喉頭や頸部の病気をしっかり診断して、適切な病院に紹介するのも、耳鼻咽喉科開業医の役目です。

 

 

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日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会の記録から

2012-09-10 18:35:59 | 院長ブログ

今日、日本新薬のMRさんが、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会記録集というパンフレットを持ってきてくれました。私の参加しなかった今春の学会での、好酸球性副鼻腔炎に関する発表の要約です。詳しい内容については、もう一つのブログ”好酸球性副鼻腔炎”の方に書きましたので、ここでは、個人的なことをひとつ追加です。

パンフレットの内容をざっと見ていて、”好酸球性副鼻腔炎モデルマウスにおけるデキサメタゾンペシル酸エステルの作用”という題の発表があったのですが、その参考文献”Development of a murine model of chronic rhinosinusitis.” の共著者の最後のひとりBolger WEという名前に眼が止まりました。

Bolgerと言う名前に、心当たりがあったのです。私がスウェーデンにいる頃、ビルという若いアメリカ人が、同じ施設にやってきました。初めは私が指導して、数ヶ月間、一緒に副鼻腔炎の研究を行ったのですが、お互いに若く、小さい子供を連れての海外留学で、なおさら親近感が持てました。でも帰国してからは、アメリカの学会で一度会っただけで、その後20年近く、音信もありませんでした。それでも大学にいる頃は、英語の学術雑誌もたくさん読んでいましたので、副鼻腔炎の画像診断などの論文の著者に、彼の名前を見つけることがありましたが、開業してからは、それもなくなっていました。

そのビルの名字が、Bolgerです。世界で副鼻腔炎を専門にしている先生は、耳鼻咽喉科の他の分野に比べて多くありません。その中で、Bolger、ビルというのはウィリアムですから、ファーストネームのWも合っています。これはビルではないかと思って、インターネットで調べると、まさしく、あのビルでした。

そして、論文の共著者の最後の一人は、そのグループのリーダーであることが多いです。ビルの現在の所属は、彼が卒業した医科大学だということまで分かりました。もしかしたら、母校の教授になっているのかも知れません。しかも、この論文の内容は、あの頃一緒にやっていた仕事の延長です。懐かしくまた嬉しく、当時のことを思い出しました。

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風邪(鼻症状)

2012-09-09 23:17:18 | 院長ブログ

しばらくの間、クリニックのホームページの耳鼻咽喉科の病気の説明を充実させるため、このブログを利用していきます。まず、風邪の鼻症状について。

いわゆる”風邪”は、上気道、つまり鼻やのど(咽喉頭)の、ウイルスによる炎症です。鼻汁、鼻づまり、のどの痛み、咳といった耳鼻咽喉科の局所の症状の他に、熱、頭痛といった全身症状も伴うので、内科や小児科を受診される方も多いと思いますが、耳鼻咽喉科の専門範囲の病気です。とくに10日以上粘性の鼻汁や痰がらみの咳が治らないときは、細菌性の鼻副鼻腔炎になった可能性があり、耳鼻咽喉科で診断と治療を受けていただきたいと考えます。

 

数年前にJOHNSという雑誌で、”かぜ診療のステップアップ”という特集をしたとき、私は”鼻閉・鼻漏への対応”という章を担当しました。以下はその抜粋です。

 *風邪は、軽度であれば自宅療養でほとんど治癒します。しかし、症状を和らげる対症療法が必要な場合もあり、また細菌性の鼻副鼻腔炎を併発すれば、その治療が必要になります。鼻や咳の症状が1週間10日と続くようなら、細菌性鼻副鼻腔炎の可能性がありますので、耳鼻咽喉科を受診していただきたいと思います。

*鼻閉・鼻漏は見方を変えればウイルスの侵入を鼻腔で食い止め、排出しようという防御機構でもあります。

*鼻汁の中には、ウイルスや細菌の他、炎症を重症化、遷延化させるさまざまな物質も含まれるので、鼻汁を鼻内から取り除くということは、単なる対症療法以上の意味があります。

*風邪の鼻閉・鼻漏に最も一般的に使われるは抗ヒスタミン薬ですが、アレルギー性鼻炎の症状に大きくかかわるヒスタミンは、風邪ではどれほど重要な働きをしていない可能性があります。しかし、第一世代の抗ヒスタミン薬(比較的古くからあり、市販薬のほとんどがこれ)には、抗ヒスタミン作用の他に、中枢作用(眠気、興奮)とともに、抗コリン作用(副交感神経抑制)という副作用があり、鼻腺からの鼻水の分泌を起こさせる副交感神経を抑制することで、鼻水を減らす効果があります。

*抗ヒスタミン薬の問題は、中枢(脳)の副作用があること。とくに小さいお子さんの風邪では、熱性けいれんの誘因になる可能性があるので、十分注意が必要と考えられます。私は小さいお子さんの風邪には、抗ヒスタミン薬は出しません。

*第二世代の抗ヒスタミン薬(比較的新しく、病院で出すアレルギー薬の多くがこれ)には副作用が少ないのですが、抗コリン作用が弱いため、鼻水に対する効果も第一世代ほどは期待できません。

*鼻づまりが高度である場合には、血管収縮薬(交感神経作動薬)の点鼻を使うことがあるかも知れません。市販の点鼻薬のほとんどがこれです。鼻粘膜は血管が豊富なので、血管を縮めれば粘膜も縮むからです。しかしこういった薬は、血管を縮めるだけでなく、中枢に対する作用もあって、2歳未満には呼吸抑制、循環抑制、嗜眠などが起こりやすく、禁忌です。2歳以上でも注意が必要で、使わなければならない場合でも、薄めて使います。 成人では、短期間での副作用は少ないですが、長期間使うとリバウンドがあって、かえって鼻づまりを悪化させることがあります(薬物性鼻炎)。

*以前はエフェドリン様の交感神経刺激作用のある薬の入った総合感冒薬がありましたが、重い副作用のために販売中止になりました。漢方の麻黄も風邪の鼻閉に有効とされます。麻黄の主成分はエフェドリンなので、これも小児に使うのは、注意が必要だという意見もあります。

 

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