あまのはらふりさけみれば・・・・

北京で単身赴任生活2年、帰国後も中国ネタを書き綴ります。

限界集落株式会社

2015-02-07 14:13:02 | 日記
 いまNHKの土曜ドラマで放送されている。
 ちょうど、本邦では今日が第2話の放送である。

 この原作について、年末に書評を執筆したのだが、先日、北京で発行され
ているあるフリーペーパーの2月号に掲載された。

 昨年夏に書店で偶然手に取り、買い求めて読んだものだが、ドラマ化され
ると知り、他の本を取り上げる予定だったものを急遽変更した。
 1月4日に書き上げた、本年の初仕事でもあった。

 以下、約550字、掲載するので、ご笑覧いただき、ご意見などお聞かせ
願えたら幸いである。


『限界集落株式会社』
(小学館文庫 黒野伸一 著)

1月下旬放送開始NHKドラマの原作。

 限界集落。その定義を知らずとも概ね見当がつくだろう。
 一言で言えば、近未来に消滅する集落のことだが、この言葉以上に、人口減
により900近い自治体が消滅するとの昨年5月の調査報告をご記憶の方も多
かろう。
 さて、東京育ちの主人公は、起業のためにIT企業を退職し、亡祖父の家で充電
するつもりが、村での様々な出会いを経て農業での起業を思い立つ。
 東京と地方、資産家とそうでない者、農業に悲観的な者とそうでない者、行政
・農協とその枠からはみ出す者、老若、男女といった様々な対比軸を通じて物語
は進行していく。主人公を含む3人の主要登場人物の視点で時間軸を進める展開
により、そうした対比が一層鮮明になってくる。
 なんら取り柄のない地域・人間と思われていたものが、内に秘めた力を発揮、
東京や社会に挑んでいく。本作は農業、農村に関する夢物語だが、絵空事でない
現実味のある筋書きとなっており、作者の周到な下調べが窺われる上質の娯楽作
品に仕上がっている。
 なお、先に「そうでない者」といった表現を使ったのは、悲観と楽観のような
単純な対比だけが正解ではないということが、本書のメッセージの一つだと思っ
たからである。