中国語の授業が終わるともう夜の8時半をまわっている。
語学学校から拙宅へと徒歩25分くらいの道のり。
17日の月曜日、語学学校を出て少し歩いたところで、3歳ぐらいの可愛らしい男の子の手
を引いた綺麗な若いお母さんに呼び止められた。
道でも訊かれるのかと思いきや、
「チャーハイズ ハイ メイ チー ワンファン ナ。 ○×▽※★◇?」
(この子、まだ晩御飯を食べていないんです・・・・・・・。)
ときた。
見るところ身なりもこざっぱりとしていて、お金がないようには見えない。
しかし、どうやらお金の無心らしいことは判る。
一呼吸おいて、中国式に返答をしてやった。
「ウォー イエ ハイ メイ チー グオ ナ。」
(私もまだ食べていないんです。)
こう答えると、むこうが
「じゃぁ、一緒にご飯を食べましょう。」としか返答のしようがなく、
むこうが食事を誘った会話形式になるため、
この場合、お金を払うのはむこうさん、
というのが、中国社会の常識である、と咄嗟に思ったからである。
母子は何も言わずに立ち去っていった。
いや、今思えば実の親子かどうかも怪しくなってくる。
このように、ここ北京では、お金を無心する方法も様々である。
何も言わず、何も書かず、ただひたすら目の前に空き缶を置いてみすぼらしい身なりで
道に座る者。
仏教寺院の入り口付近で小鍋を片手に、片っ端から参詣者に声をかける老夫婦。
などなどこれ以外にも、ここには書きにくいような様々な無心の方法を見てきたが、
先週金曜の夕方、帰宅途中に、ある若者を見た。
自転車での旅行中という基本設定らしい。
結構、高そうな自転車と荷物一式、サイクリングスーツにヘルメット、まぁ
小遣いには不自由してなさそうな、自由人かドラ息子の風体である。
曰く
「自転車で旅行中です。財布を落としてしまいお金がありません。どうか助けて下さい。」
そんなことが紙に書いてある。
旅行中にそんな丈夫な紙と太いマジックを持ってることからして怪しい、ツッコミどころ
満載である。
しかし、本人が出した「見せ金」かどうか、皿に中にはお金がある。
そこでフト思いついた。
「北京を旅行中です。前門で財布をスラれてお金がありません。どうか助けて下さい。」
(※ 過去の記事「後悔、役に立たず」をご覧ください。)
こう書いて、いっちょ坐ったろうか、との考えが一瞬頭をよぎったが、さすがに
そんな大それたことをする勇気は持ち合わせず、いまだに預金を引き出すための銀行カード
が再発行されるのをひたすら待っているのである。
さて、ここまでお読みいただいて、皆さんはどう思われたでしょうか。
「いまだに乞食(※ ここではあえてこの言葉を使いました。)がいるなんて、
中国って貧乏な国なんだ。」といったような中国に対するネガティブな感想をおもちの
方が多いのではないでしょうか。
「やっぱり、中国って・・・。」といったところでしょう。
しかし、実際に缶やお皿にお金を入れて通り過ぎる人たちを沢山、ほんとうに沢山見てきまし
た。
彼らの行動を見て、
「中国人がお金を入れるのだから、この人、本当に困っているのかもしれない。」
そう思って、私もお金を入れたことが何度もあります。
東京で「乞食」をして生活できるでしょうか?
もちろん物価は違いますが。
北京には、「乞食」をして糊口をしのぐ生活、これを支えてくれる心優しい中国人がたくさん
いるように思います。
円安で海外旅行はあきらめ気味の皆さん、北京へようこそ。
お金がなくても何とかなる、ここはそんな街です。