あまのはらふりさけみれば・・・・

北京で単身赴任生活2年、帰国後も中国ネタを書き綴ります。

三島由紀夫未発表書簡

2014-07-12 00:08:53 | 日記
 以前から気になっていた本だが、ようやく先週末に読破することができた。

 さて、拙者の幼少年期の鮮明な記憶、テレビの前にかじりついた経験は、
1 東大安田講堂攻防戦(S44 1969年1月  当時満4才)
2 三島由紀夫切腹(楯の会)事件(S45 1970年11月 当時満6才)
3 浅間山荘事件(連合赤軍)(S47 1972年2月 当時満7才)
の三つである。

 子供ながらに大変なことが起きているということだけは理解した。

 三島由紀夫の作品は、そうした幼児期の鮮明な記憶が障害となって、深層心理
のどこかで、忌避して読まなかったわけだが、大学生になってそれまでの国語の
勉強から解放された気楽さからか、新潮の文庫本を明治以降の時系列に片っ端か
ら読むうちに、必然的にたどり着いたのであった。

 文学作品と娯楽作品の双方を書くことのできた氏は、日本の文学史上でも特筆
すべき逸材であることは衆目の一致するところであろうが、一方でこのやはり、
全く持って時代錯誤も甚だしい不可解な自決事件は、氏に対する正当なの評価を
妨げていると言ってよかろう。
 ただ氏自らが語ったように、老いさらばえた三島由紀夫を見たかったか、と問
われれば、傲慢にも拙者、「否」と応えるのだろう。それここれも氏が黄泉路に
たたれたということを知ってのことでもあるのだが。

 閑話休題。

 この書簡集は、すでに日本国民となられたドナルド・キーン博士に宛てられた
一連の書簡である。

 実に率直な表現で公私ともに相談をし、なによりお互いに信頼・尊敬をしてい
た間柄がうかがわれ、氏の作品のような洗練された文体、研ぎ澄まされた構図と
いうものの欠片もなく、一個人の不通の書簡であることが何やら、氏に対する見
方を変えてくれるような読み物となっている。

 三島好きと三島嫌いは、定家ほどではないにせよ、はっきり分かれると思う。
 三島嫌いな方に、是非とも薦めたい一冊である。

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