”風の歌を聴け”
この小説は作家村上春樹が初めて書いた
小説である。(本人が村上ラジオの中でそう言っている)
1970年代のことだから、五十年近くも前のことである。
春樹とは同時代の自分も二十代を終えようとしていた頃である。
春樹いわく。その頃、文章についての多くをデレク・ハートフィールド
に学んだという。彼は八年間作家としては不毛な闘いを続けそして死んだ。
その最後は悲惨だった。
「1938年。ある晴れた日曜日の朝。右手にヒトラーの肖像画を抱え、
左手に傘をさしたまま、エンパイア・ステート・ビルの屋上から
飛び降りた」のだという。
村上春樹が何故そのような作家に強い関心を持つようになったのか
という事が自分の最大の関心事である。
”風の歌を聴け"という作品にはそのことが語られている、ように
思われる。