大晦日の朝を迎えた。というか、一年間を何事もなく無事に過ごし
なんとかこの日を迎えることができたと言っていい。(コロナ禍の
なかをかいくぐって)。
あまり読書に割く時間はなかったが今年読んだ本のなかでおもしろ
かったものを取り上げてみることにした。
その一つに磯田道史著『江戸の備忘録二十』というのがあげられる。
さて、江戸時代の人、特に武士らはどんな正月を過ごしていたのだろうか。
まず年賀状について。葉書で年賀をする風習は江戸時代の武家の習慣に
根ざしているらしい。
武士は狭い城下町に集まって住んでいる。正月になると、年始回りと
称して、武士は手に名刺を持って同僚の屋敷二十軒ぐらいを挨拶して
回ったという。商人などは名刺がわりの手ぬぐいや扇子を置いて
まわったという。
次に、お正月にあげるお年玉について。
江戸時代は大人もお年玉をもらったらしい。
加賀藩士・猪山家の家計簿には「正月。町方その他より、すしなど
年玉とて」とあって、取り引き先の町人などから(おすし)のお年玉が
きていたとある。
また、猪山家ではお年玉の(切りもち)を配っていたという。
これは途中から現金支給に切り替えたらしい。
武士は出費ばかりだが、お供する草履取りの懐には一日で一万円
ほどが入ったという。
磯田氏の歴史ものは古文書等の史料を読み込んで書かれているので
リアリテイ感が強く、しかも平易な語り口であるためか分かりやすい
読み物となっている。