ビートルズ二作目のアルバム「ウイズ・ザ・ビートルズ」は1963.11.22にイギリスでリリースされた。
書店に村上春樹の『一人称単数』が新作コーナーに置いてあった。
パラっとめくり読みすると、見覚えのあるタイトルが目に入った。
「ウイズ・ザ・ビートルズ」である。
何故見覚えがあるかというと、この短編は実は昨年雑誌文学界に
発表されていたのを読んでいたからである。
ほかにも二編ほど読んだ覚えのあるものが収録されていた。
著作のなかで春樹も述べているように、'60年代の中頃には日本
にもビートルズ旋風が席巻していて「ラジオをつければほとんど
いつだってビートルズの曲がかかっていた。僕もビートルズの曲
が同時代的に好きだった」という状況だったのである。
私はそれより少し年上なのでビートルズ人気の真っただ中にいた
というわけではなかったし、その当時は彼らの歌うものはあまり好
きになれなかったと言っていい。
当時の('60年代~'70年代)私は彼らよりジャズの方が圧倒的に好
きだった。私はジャズに”いかれた”若者の一人だった。
村上春樹もジャズやクラシックをよく聴いていたらしい。
ガールフレンドができてデートに映画を見に行く場面がある。
引用すると
「映画はミュージカルのサウンド・オブ・ミュウジックだった。
ガールフレンドはそのミュージカル映画が大好きだった。映画
のサントラ盤も買って何度も聴いていた。僕としてはジョン・
コルトレーンの演奏するあの魔術的な『マイ・フェバリット・シングス』
の方が好みだったが」
下線部は私が勝手に引きました。
当代の人気作家と比べるのも気がひけるが、この部分は同感できる
ところであり共鳴もできるところである。
私としては、コルトレーンもいいがベニー・ゴルソン・テナー・サミット
による「マイ・フェバリット・シングス」の方が好みである。
生粋のジャズ・ファンからすればミュージカル映画などは甘たるくて
聞いてらんないよ、と、村上春樹なら言うかもしれない。