最近は企業不正のドミノ倒しが続いています。長時間労働の過労自殺はもとより、大企業の粉飾決算やその他のコンプライアンス違反が後を絶ちません。コーポレイトガバナンスなどあったものでは有りません。ここまで大企業が凋落するとは一体誰が予測できたでしょうと思っていたら、自分が既に予測していました。
いきなり自分のブログの本日のアクセストップに6年前に書いた記事が出てきたので読んでみたら、まさに今の企業の姿を予測していました。認知症気味になってはもはやこのような文章はかけなくなりました。
興味のある方は下記一読を・・・
http://blog.goo.ne.jp/holisticdiarymk/e/7f570517af4a84912c3560f40daae546
2010年に出版した本です。上記ブログはこの本の15章から取ったものですが、今日はその16章の「社格崩壊」の記事内容をアップしました。
その⑯社格崩壊時代の到来(特別編)
―株式会社・人体論―
また悪い癖が出て、前章につられ今月も先へ進めませんでした。元々「社格崩壊」では本を書こうと思っていたくらいですので、一章だけでは済みませんでした。最近書店でピーター・ドラッカーの書籍コーナーをよく見るようになりました。彼はビジネスマネジメントの教祖とも言われ、古くはダイエーの社長や新しくはユニクロの社長が良く語っており、既によくご存じの方も多いかと思います。私も最近一冊読んでみましたが、企業崩壊が起こっている現状では大変参考になる本でした。リーマンショック以来、確かに多くの企業がイノベーション(技術革新)とネクスト・ソサエティ(未来社会)を模索している最中、適書と言わざるを得ません。しかし心療内科産業医としての感想としては、働く人の「貢献」という言葉が出てきても、反対から読んだところの「健康」という言及がほとんど見られないのが残念でした。もちろん私が言う健康とは心身両面での健康です。
先日、日本産業衛生学会に出席しましたが、そこではjob-engagement(仕事熱中度)という言葉が盛んに語られていました。実際はそれが組織活性度という概念で語られていたようです。すなわち字数が少ないので結論を言いますが、これからの企業は第3次予防のメンタル不調者対応より、残された健常な勤労者を如何に活性化させ、効率性を上げ企業業績を上げていくかに関心が集中して来るであろうということです。メンタルヘルスの1・2次予防を超えて生産的なポジティブメンタルヘルス(積極的メンタルヘルス=私の造語)を取り入れていこうという流れです。しかしjob-engagementをチェックする問診票は、何十年昔に既に作られた攻撃型性格、悪くいえば仕事に対する貢献度が高いワーカーホーリック(仕事中毒)の病的性格をチェックするものとほとんど変わりませんでした。
確かにもはや時代は勝ち組、負け組ではなくて存続組、消失組の時代になってきていますので、気持ちも分からない訳ではありません。しかし、その生き方はタイトロープ(綱渡りの時の張りつめたロープ)の上を歩くようなもので、私生活とのバランスがかなり難しい生き方となります。私の問診表の組織活性度のチェックでは、攻撃型性格と生活満足度のバランスの取れた問診チェックからなっています。私はJob-life engagement(仕事―生活熱中度)すなわち仕事にも私生活にも熱中した生き方が大切と思います。勤労者に貢献を求めるのではなく、貢献は勤労者の良くマネージメントされたビジネスモデル下で自発的に出てくるものでなければなりません。そのことを分かりやすくするために「株式会社―人体論」を考えてみました。
以前、お金を人体でいえば血液と喩え、お金の流れは人体の活動を維持する血流であると言いましたが、企業の組織は人体で言えば文字通り臓器組織のことです。臓器の組織細胞は同様の目的を持った作業を行う従業員達ということになります。例えば腎臓は排泄関係を肝臓は解毒関係を担っているわけです。肝臓と腎臓は組織が異なりますが、どちらが重要でどちらが偉いと言うこともありません。人体の臓器を操作する神経系や内分泌系は人事労務と言うところですが、それも臓器からのフィードバック(命令系に対して抑制的に働くこと)作用があり一方通行ではありません。全ての細胞や臓器は上下関係が無く、他の細胞や組織に貢献するように出来ており、その貢献の結果として人体が健全に機能することを、全ての組織や細胞が知っているのです。このように社員が競争し合うのではなく、協力し合うことにより企業業績が上がるということを知らなければなりません。
人体が弱ったり病気になったりしたら、健康な臓器組織をコストカット(出来ればコスト調整と表現したい)するのではなく、病気の臓器組織を活性化させなければなりません。そういう意味では企業の組織活性度を知る事が必要です。組織分析や企業診断(本来の企業診断は儲かる企業かどうかの診断ではありません。何処が悪いかの診断です。)なくして健康な企業になり得ず、存続組にもなれません。
うつ病を治すには薬物療法と精神療法が必要です。しかしうつ病を完全に治すことが出来るのは実は「人間の絆」です。絆を取り戻せばうつ病は必ず治ります。その絆とは人体で言えば、人体の細胞間や臓器間の様にお互いに助け合い貢献するという意味の絆の事なのです。日本にうつ病が多く元気のない企業が多いのは、働く人の多くが絆の病に陥っているからです。そんな状況で、さらに社員にタイトロープを渡らせるような組織いじりや方向付けは、結果的は企業の力を弱らせます。むしろ最近運動会や文化祭が復活している企業がありますが。それはそういった絆を高めるところに、存続組への活路を見出そうと模索しているのではないでしょうか。
これで広い意味でのラインのケアを終わります。これからは各論に入って行きますが、事例や治療方法を述べながら、分かりやすくメンタルヘルス向上の「ワザ」を披露して行きます。取りあえずは対人関係の具体的な向上方法である交流分析について3回、あらゆる緊張を取るリラクセイションの方法である自律訓練について2回ほど語る予定です。乞うご期待。