河童アオミドロの断捨離世界図鑑

ザスドラス博士の弟子の河童アオミドロの格安貧困魂救済ブログ。

メープルシュガーとシナモンティー(第15回)あの頃

2008年03月04日 | 試作品
そうじゃなあ、わしの「あの頃」は

ばあさんとの新婚旅行かのう

宮崎の熱海温泉の混浴風呂じゃった

吹き抜けの空から見える月がフェニックスを照らしてとてもきれいじゃった

風呂上りのマッサージチェアと卓球が極楽じゃった

ばあさんも今頃はベテルギウス星雲のどこかにおるじゃろうて


宇宙はあなたがすべてのものと出会うためのチャンスをくれておる

それが時間や人の生きておる意味じゃよ

どの人の一生も無限の時間なんじゃよ

じゃあ、窓際の席に座りなさい

心の中ばかり見てるより、窓の外に答えがあるかもしれんよ


メープルシュガーとシナモンティー(第14回)ピュアシュガー

2008年03月03日 | 試作品
鉄郎は薄いコーヒーに角砂糖を落としながらよく言っていた

「僕はこの角砂糖の結晶みたいな純粋でピュアな感じが好きなんだ」

「でもそれは間違っている。白い砂糖がピュアで、じゃあ
メープルシュガーはピュアじゃないってわけ?」

「メープルシュガーは純粋な砂糖と純粋な楓のエッセンスで出来てるのよ」

「ガンジス河がきたなくて、ペットボトルのエビアンがきれいってわけはないのよ」

「ガンジス河はヒマラヤからの純粋な水に、純粋なアメーバや、純粋な微生物が混ざっているのよ。」

「きれいか、きたないかは、その物には関係無いの。見てる側のココロの問題なのよ。月から昇ってくる地球はきれいだったでしょ。世界中で戦争が起こっていて、核爆弾が何発も爆発していて、何万人もの子供が餓死していてもね」

「ガンジスは世界で一番不潔で、同時に、世界で一番美しいのよ」

メープルシュガーとシナモンティー(第13回)蹴上上水にて

2008年02月27日 | 試作品
学食でカレーライスを食べているとメープルが来た

「京都に行かない?蹴上の水道橋が見たいんだ」

蹴上の上水は緑の多いきれいな所だ

僕はスケッチをしないのでカメラだけ持ってきた

オリンパスのOM-1、軽くて使いやすい

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上水ぞいの小径をときおり選んだ
夏の盛りの日もそこだけ涼しくって

名もない蔦や柳がひくくたれこめて
絵を書く私達 それぞれひとりにさせた
まるで先の人生を暗示するように

みんなまだ
気づかずすごしていたんだわ
ずっといっしょに歩いてゆけるって
だれもが思った

拝啓。今はどんな絵 仕上げていますか
個展の案内の葉書きがうれしかったの
臆病だった私は平凡に生きている

みんなまだ
信じてすごしていたんだわ
ずっといっしょに歩いてゆけるって
だれもが

いつまでも
私の心のギャラリーにある
あなたの描いた風景は
悲しいほどお天気

「悲しいほどお天気」松任谷由実

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「顔や体の形ってどうやって決まるんだろうね。生まれた時に完成予想図があるわけでもないのにね。DNAに外から見た形を決める能力があるんだろうか・・・」

メープルは僕の顔を描きながら難しい事を言っていた。

「メープルって芸術家より科学者に向いてるんじゃないの。そんなことより、うまく描いてよ」

「素材が良ければ、出来上がりは自然と芸術になるのよ」


メープルシュガーとシナモンティー(第12回)科学とアート

2008年02月16日 | 試作品
銀河鉄道トリプルナインの機関車は「科学」で出来ておる。

が、客車は「アート」で出来ておる。

科学は物事の真実を探ってそれをつきとめる。

しかし、アートはその事が真実かどうかはどうでもええんじゃ、

例えば、虹のようにすぐ消えてしまうマボロシのようにハカナイものを残そうとする努力がアートじゃよ。

アートの役割は、世界中に散らばっている「永遠のカケラ」のようなものを復元する事なのかもしれん。

カケラが何で出来ているかを解明するのは科学じゃ。

しかし、どこまで分析したところでその本当の意味はわからん。

大切なのは宇宙の広さを測定する事ではなくて、宇宙を感じる事じゃ。

わしは毎朝、駅で機関車と客車の連結器に油を差す。

この仕事を6000億年続けておる。それだけじゃ。

哲学?哲学の時代は3000億年前にとっくに終わっとるよ。

さて、メープルさん。

あんたが物事の真実にドキドキしたいなら機関車のほうへ、

生きてる事の意味にドキドキしたいなら客車のほうへ、

乗りなされ。



メープルシュガーとシナモンティー:挿入歌「コンパス」

2008年02月16日 | 試作品
「コンパス」

作詞:花岡弘康
作曲:大塚清二
編曲:大曲桑男
歌:平田犬

いつの日かまた行こうと地図を見る
北極星の位置を永遠に焼き付けた
そうだねと答えた君の目は
僕の後ろを見ていた

大好きと描いたキャンバスは
まだ心のギャラリーに
僕の胸をふさいで
息苦しいんだ

この道を行けなくても
この川に流されても

決して変わらない
決して狂わない
僕らだけのコンパス

恋も夢も閉店時間もごちゃ混ぜにしていた
君の似顔絵を見せたらヘタクソと言った

恋も夢も始発電車も希望だらけだった
君の目は僕のウソを見ていた

この道を曲がっても
この犬に噛まれても

決して曲がらない
決して変わらない
僕らだけのコンパス

この坂を転げても
この猫に踏まれても

決して戻らない
決して回らない
僕らだけのコンパス

メープルシュガーとシナモンティー(第11回)ほんとの青空

2008年02月13日 | 試作品
学生時代、私は空の青を描くのに苦労していた。

リキテックスのコバルトブルーは夏の空を描くのにぴったりだった。

でも鉄郎は出来上がった絵を見ていつも

「冬の青空だね、お正月の晴れた空みたい」

と言っていたっけ。

あの時塗った青は、まだ今も同じ青さのままかしら。

昔見た青空は、今よりもっと青くて深かったような気がする。

あの頃の鉄郎へ

変わらないのはアクリルの青とコンピュータの画像だけよ。

本物のココロは色あせて、朽ちて、やがて消えてしまう。

消えるからこそ本物だということなのよ。

メープルシュガーとシナモンティー(第10回)心の五線紙

2008年02月13日 | 試作品
メープルを初めて見たのは1年前の学祭の教室だ。

竹内まりやの「五線紙」をヤイリのギターで弾語りをしていた。

窓際の彼女の顔が逆光で文字通りまぶしくて見とれてしまった。

「~あの頃の僕らは美しく愚かに、愛とか平和を歌にすれば
それで世界が変わると信じてた~」

僕らも20年後にはそんな風に昔を振り返るのかな。

僕だけはずっと変わらないと思うけどな。

少なくともメープルの事は今日も明日も20年後も変わらず好きだと思うよ。

メープルシュガーとシナモンティー(第9回)思い出の微粒子

2008年02月11日 | 試作品
銀河鉄道の客車がなぜ木造かだって?

そりゃ「思い出のメモリー」じゃよ。

木の細胞は、その隙間に、その時代の空気を溜め込むもんさ。

その時代の乗客の想いもいっしょにね。

古い図書館や博物館に行くとよくわかるじゃろ。

木の床、古い柱、高い天井。そのすべてにこれまでの記憶が眠っておる。

本のページの間にも想いは眠っておる。

カセットテープもビデオテープも同じじゃよ。

テープはそのうずまき構造の隙間にその時代の空気の微粒子を含んでおるのじゃよ。

メープルシュガーとシナモンティー(説明書)

2008年02月11日 | 試作品
メープルシュガーとシナモンティー(説明書)
作者もよくわからなくなってきたので覚え書き。

河内長野の美術大学の同じ同好会に所属する佐藤楓(メープル)と茶川鉄郎。
学生時代の鉄郎とその20年後のメープルの世界が同時に存在する。
そのパラレルワールドをつなぐのは銀河鉄道トリプルナイン。
世界の始まりを知る、銀河鉄道の始発駅に住む謎の老人。
人生とは何か、幸せとは何か、時間とは何かを、するどく解き明かす。

本来、イラスト付きのはずが、絵が追いつかない。


メープルシュガーとシナモンティー(第8回)

2008年02月11日 | 試作品
学校が休みの時はよく母の故郷の紋別で過ごした。

冬の流氷と夏の海風。着陸前の窓から見える、風に波打つ麦畑。

おじいちゃんは、健康の秘訣は毎朝飲む牛乳だといっていた。

私は牛乳が苦手だけど、なぜか、おじいちゃんの牛乳だけはおいしかった。

鉄郎はいつも私に手紙をくれたっけ。

あの頃の思い出は、今頃は、20光年先の宇宙に有るのかも。

銀河鉄道から大きな望遠鏡でのぞけば、あの頃の私たちが見えるのかな。

宇宙が永遠とすれば、私が生きているこの瞬間はいつも永遠までのちょうど半分の位置なのかもしれない。