インターネットで賃貸検索してると
「家賃11000円、敷金礼金0円」というのがあった
おっつ、今のわてにぴったりじゃん、と思い、現物を見に行った
森を抜け、墓場を抜け、金星台の山のふもとに着くと、そのアパートは在った
窓ガラスは割れ、壁にはヒビが入り、人の住んでいる気配が無い
中に入り、暗い廊下をうろうろしていると一室のドアが開き
「何をしてるんだ」
とおじさんの声がした
「あっつそのあの、もっきり荘はここですか?」
「何が目的だ、地上げ屋か」
「いや、ここに住もうと思って・・・」
「ここはもうすぐ取り壊しだぞ、不動産屋に出てるはずがない
わしが最後の住人じゃ」
「あれ、インターネットでワンルーム三帖11000円って出てましたよ」
「そりゃ安いな、でもここは全室四畳半だし」
その時デジャブが襲ってきた
そういえば、この部屋とこのおじさんはどこかで見たことがある
狭い廊下、万年床、小さな流し台、共同トイレ、タバコで変色した壁、
棚いっぱいのレコード盤、
中野区の西武新宿線沿いに在った気がする
「取り壊しは中止になったんか?くわしく教えてくれ」
「いや、もっきり荘はここじゃないのかもしれんです
また調べて連絡します」
「お願いするよ、今日はこれからバイトだから、明日また電話してきてくれ
ほれ、電話代20円だよ」
「ありがとうございます、20円いただきっと」
そうして、そのおじさんと別れたのだった
これは今日の半分実話である