細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『一命』で魅せた海老蔵の鬼気迫る眼力。

2011年07月13日 | Weblog

●7月12日(火)13−00 五反田<イマジカ第2試写室>
M−081『一命』Death of a Samurai (2011) 松竹映画
監督/三池崇史 主演/市川海老蔵 ★★★☆☆
重厚で悲壮なサムライ悲劇だ。
徳川の天下太平の時代。無職の身となった武士たちは生活に困窮していた。
柔軟に転職などと器用な真似のできない彼らは、食い詰めた上、大名の庭先で切腹を申し出る。
「狂言切腹」で門前払いされるのが落ちだが、子供と妻の病気の金に困った若侍の瑛太は、タケミツで腹を切った。
家族をすべて失った海老蔵は、単身、大名の屋敷に訳ありの切腹を申し出た。
この設定は、武士道の極論だろうが、ドラマは舞台劇のような緊迫した口上と問答で盛り上がる。
ほとんど暗い武家屋敷の奥座敷と、雪の舞う中庭で、しかも強面の侍ばかり。
本格時代劇の主演を演じる海老蔵は、あの歌舞伎の眼力とゆっくりとした口上で、さすがの貫禄だ。
久しぶりに重量感のある演技には気迫があり、あの勝新太郎を思わせ、これからも楽しみだ。
しかし映画の方は一貫して重苦しく、時に自然の木々のインサートはあっても、とにかく暗く重い。
ドラマのシェークスピア悲劇のような展開から、監督は敢えて明るさや甘さは避けたのだろう。
今年のカンヌ映画祭でも、世界の審査員達は恐らくこの暗い意固地な作風には、当惑し閉口しただろう。
それにしても3D映像にする必要性はどこにあったのか、画質の暗さが効果も殺してしまっている。
できれば普通の2Dで、もう少し明るい画調で見たかった。

■高く上がったセンターへのフライが、暗くて見失ったセンター頭上を越えてツーベース。
●10月15日より、松竹系でロードショー