細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『愛、アムール』この壮絶な孤高で至上の愛。

2013年01月19日 | Weblog

●1月18日(金)13−00 築地<松竹本社3F試写室>
M−007『愛、アムール』Amour (2012) les film de Losange / x films creative pool 仏
監督/ミヒャエル・ハネケ 主演/ジャン=ルイ・トランティニアン 配給。ロングライド ★★★★☆
パリに住む音楽教師の老夫妻は、ある朝、食事中に妻エマニュエル・リヴァの意識が寸断したことに驚く。
医者に診てもらい脳障害が見つかったので、手術を受けて退院した。
しかし車椅子から立てない症状が悪化する。
娘たちや友人も、老人ホームでの介護を薦めるが、夫のジャン=ルイは自宅介護に徹する。
アパートは比較的に裕福に見えるが、車いすで動き回るには不自由だ。
そして映画は、この堕ちて行く老夫婦の日常を、ドキュメンタリーなほど緻密に見せるのだ。
「ああ、もういい加減にして、入院させたら・・・」と娘のいうように、我々も苦悶する。
しかし、ジャン=ルイは、かたくなに介護を続けるのだ。
中庭からハトが部屋に2度も飛び込んでくる。これが老夫婦の意識の化身なのだろう。
そして、夫の意識も、すこしずつ夢うつつになっていく。このスロウダウンが恐ろしい。
これが老人夫婦の実態だし、愛情の姿も壮絶に落下していく。
人間の終焉を見つめた残酷なような視線だが、その向こうに大きな愛情が見える。
ラストで、コートを着た夫婦が外出していくエンディングに、心から讃辞を惜しまない。
一切の背景音楽を廃して、現実音だけで描く監督の人間凝視は、これこそが「アムール」だと言うのだ。
アカデミー作品賞ほか、多くのノミネートを果たしているミヒャエル・ハネケ渾身の秀作。

■渋い当たりだが、意外に伸びてそのままライトスタンド入り。
●3月9日より、Bunkamuraル・シネマほかでロードショー