食堂かたつむり 著者小川 糸
《内容》
衝撃的な失恋のあと、倫子は故郷に戻り、実家の離れで食堂かたつむりを始めた。ここの料理を食べると、恋や願い事が叶うというまことしやかな噂とともに、食堂は評判になるが・・・・。



―――世に中には、個人の力だけではどうしようもないことがあることは知っている。自分の意思で動かせることなんてほんのわずかで、ほとんどの出来事は、大河の流れに流されるまま、誰かさんの大きな手のひらの中で意思とは関係なく進行する。
―――
本当は、ありがとう、と伝えたかった。
私を生んでくれて、どうもありがとう、と。
けれど実際には、声が出なかった。
哀しくて悔しくて、自分が情けなくて、私は今にも涙が零れ落ちそうだった。
《内容》
衝撃的な失恋のあと、倫子は故郷に戻り、実家の離れで食堂かたつむりを始めた。ここの料理を食べると、恋や願い事が叶うというまことしやかな噂とともに、食堂は評判になるが・・・・。



―――世に中には、個人の力だけではどうしようもないことがあることは知っている。自分の意思で動かせることなんてほんのわずかで、ほとんどの出来事は、大河の流れに流されるまま、誰かさんの大きな手のひらの中で意思とは関係なく進行する。
―――
本当は、ありがとう、と伝えたかった。
私を生んでくれて、どうもありがとう、と。
けれど実際には、声が出なかった。
哀しくて悔しくて、自分が情けなくて、私は今にも涙が零れ落ちそうだった。