温風茶館(おんぷうちゃかん)

好きなことを温かく語ろう。おひとりさま茶話会気分のいよいよ還暦ブログ。

『蜘蛛巣城』(くものすじょう)

2014-11-13 15:00:00 | Weblog
11月9日の「シューイチ」。
宮崎駿監督がアカデミー賞の名誉賞を受賞されたのに関連して、
黒澤明監督との対談(1993年)がちょこっと放送された。

時代劇を作りたいという宮崎さんに、
シェークスピアを日本の時代劇でやったらどうですと黒澤監督。
なにか思案がありそうにもごもごしている宮崎さんが、
「室町(時代)はどうですか?」と切り出すまでの間(ま)が、ことばのやりとりよりも面白い。
黒澤監督がたばこに火をつけるライターの音まで意味ありげに聞こえる。

黒澤監督のシェークスピアというと、
戦国時代版マクベスの「蜘蛛巣城」だね。
画面もストーリーもどろどろに暗くて、同じ黒澤作品でも
「隠し砦の三悪人」や「椿三十郎」などの痛快時代劇とはまるで違う、
爽快感ゼロの映画だ。
けど、単純に善悪で線引きできない混沌とした物語は、
宮崎さんの「もののけ姫」とも相い通ずる。

この「蜘蛛巣城」のラストがすごい。
主君を殺して城主になった武将(三船敏郎)が、
最後は自分も家来に殺されるのだが、
反旗を翻した兵たちが三船に向かって一斉に矢を射るシーンがある。
壁に矢がぶすぶす刺さる中を三船が逃げまどうのだが、
雨あられの矢はどうやって撮ったんだろう?
今ならCGを使うだろうけど、当時(1957年)は
そんなものないしなあ。と思っていたら、
なんと弓道や流鏑馬の名人を集めて、ほんとうに射っていたらしい。
最もシンプルだけど、最も危険。どうりで鬼気迫るわけだ。

この、生身の体温が伝わってくるようなところが、古い映画のおもしろさかな。

こういう、黒澤監督の撮り方と、自分は町工場のオヤジと言い切る
宮崎さんの現場へのこだわりに、執念に似た共通点を感じるのだった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする