瀝瀝(れきれき)散歩道

瀝瀝というのは「水が音をたてる様子/風が音をたてて吹く様子」つまり、「ありのままの風景」ということでしょうか。

意外にややこしい謝罪の仕方〜民間の例から

2017-06-21 19:40:38 | 日記

今日は、大雨注意報が出ています。
みなさん、お元気でしょうか?

昨日からネコとの生活に入りました。
休養中ですから、穏やかな時間が流れています。

さて、30代後半〜40代頃、中国の文化遺跡の通訳兼ガイドとして日本と中国を行ったり来たりしていました。
すでに子どももいる私でしたが、アルバイト(日雇い計算のスタッフ)としては家計のためにありがたい仕事でした。



ある時、W大学とN大学の合同の高句麗王朝の遺跡調査のスタッフ(通訳兼ガイド)として、中国遼寧省と北朝鮮の国境地帯に入りました。
調査隊の長はW大学の名誉教授でした。
70代近い方でしたが、白髪でハンサムで若い頃はさぞかしモテたでしょう、という渋い男性でした。
しかし見た目とは違い、性格はめちゃくちゃ短気で、ほぼ怒鳴りっぱなしの石頭、、、しかし、旅行会社にとってはお得意様、、、まさに扱いにくいお客様でした。
名誉教授のアカデミックな業績は立派なもので、調査隊にはわざわざ休暇をとって参加した教授の弟子たちがいっぱいいました。

教授は教授ですから、常に周りの者に対して上から目線でものを言います。
私も「子どもがいるのに、ここで何をしている!子どもや夫の世話はいいのか!」と説教されました。
「はい、教授のおっしゃるとおりです、、本来ならそうしたいのですが、なにぶん生活が苦しいので、、」

当時、主人は靴職人修行中でしたから、本当に中国に出稼ぎに出ないと生活は大変でした。
すると今度は「そんなに大変なのか、、、」と同情されました。もちろん
「はい、、、励ましてくださりありがとうございます」と答えましたが、、、。

その後、遼寧省の大連から瀋陽経由で高句麗王朝の遺跡のある集安という小さな都市に行きました。
ここには好太王碑や将軍塚などがあり、現在は世界遺産に指定されています。




道は非常に悪く、バスはぬかるみにはまり、乗っている乗客全員で後ろから押す、なんてこともありました。
また、中国の田舎のレストランの衛生状態はひどく、教授の一言で「トマト」ひとり3個を食べて、昼食が終わりになったこともあります。

山に差し掛かると、「カタクリ」が群生している場所がありました。
またまた「教授の一言」で全員がバスを降り、その日の夕食に日本のおかずを加えるため、カタクリの花を摘むことになりました。
そして宿に着くと、「さっきのカタクリと地場のたらの芽を天ぷらにしよう」と教授に言われました。
中国人のコックさんは「天ぷらの作り方」がわかりませんから、なんと!「私が」厨房に入り教えることになりました。

一生食べきれないくらいのカタクリとたらの芽の天ぷらを大皿に盛り上げ、もう勘弁して〜と言うまで食べたことを覚えています。



しかし、事件は起こるべくして起こりました。

もともと教授は中国人に対する差別がひどく、4日ほど経った時に日本語の分かるガイドに
「ばかやろー、何やってんだ!だから、中国人はダメなんだ!」と怒鳴ってしまったのです。一瞬にしてその場は氷つきました。
「バカヤローとはなんだ、失礼じゃないか!」とめちゃくちゃ怒るガイドさん。
私は「この人は悪気はないんだけど、ごめんね。許してあげてください」となんどもお願いしました。
が、教授はその後もガイドに悪口を言い続け、とうとうガイドは仕事を放棄して帰ってしまいました。

そうなると、教授の怒りの矛先は私に向きました。
「バカヤロー、お前は何やってんだ。次のガイドをすぐに手配しろ!客をなんだと思っているんだ!」
参加者全員の前で怒られましたが、お弟子さんたちは慣れているのか、関わりたくないのか、誰も何も言いませんでした。

私は人前で怒られたので、恥ずかしくて涙がこぼれそうになりましたが、これも仕事と割り切らなくちゃと
「申し訳ございません!本当にすみません」と85度まで頭を下げて、何度も詫びました。
しかし、教授の怒りは収まりません。その後、15分ぐらい怒られ続けました。
もちろん口答えはしませんでした。相手はお客様ですから。

その晩、悔しくて涙を流しました。



さて、改めて謝罪について考えてみたいと思います。
皆さんの職場と民間での謝罪の方法が同じかどうかはわかりませんが、
今回は不幸にも上記の名誉教授のような人に出会ってしまった場合、どうしたらよいか、、、難しいですね。

仕事でもプライベートでも、人の信頼を裏切り、怒らせてしまった時は、理不尽であれ、
1 まずは徹底的に謝る、ことが大切だと思います。何を言われてもです。何度でも謝ります。相手は傷ついているのですから、、、
2 次になぜこんなことが起きてしまったのか、原因をよく考えて、整理してから話します。相手が聞いてくれないとしても対策を述べます。
3 ここで言い訳から入ってしまうと逆効果です。相手の心情を逆なでしましうからです。
 相手の誤解だとしても誤解を作ったのは間違いないので、わかってくれるまで忍耐を持って謝罪します。

第2ステップとしては
1 相手とは連絡を取りたくないのはよくわかりますが、相手は信頼を裏切られて怒っているのです。時間が経てば経つほど事態は悪化します。
2 ここで大切なのがコミュニケーションの取り方です。
3 時間をおくことも大切ですが、謝罪の気持ちや具体的な迷惑への対策をとことん考えて実行することはさらに重要です。
4 相手の方が「そこまでしてもらって恐縮です」というくらい謝ります。こちらのミス、不注意が発端となっているのですから、
 「やりすぎ」ということはありません。

怒らせて信用を失うことは、仕事でもプライベートでも大きな後退となります。信用を速攻で回復するなんてできないのです。
時間と労力と忍耐力が必要です。
相手は自分が馬鹿にされている、と受け取ったわけですから
謝罪も「この人は口だけか?!」と思われないよう誠心誠意です。

一度信用を失うと、信用を築いた時の10倍も20倍もエネルギーを必要とします。

最後に、名誉教授御一行様は無事日本に帰国しました。
私は2週間で5キロも痩せました。
一生忘れられない旅になりました。

帰国して、雇い先の会社からは、怒られた時の対応が良かった、と褒められました。
特別賞与などは出ませんが、信頼を得ることができ、次からの仕事が増えました。
我慢した甲斐がありました!
また、怒って帰ってしまった中国人のガイドから連絡をもらい、「次に大連に来る時は連絡して、ご馳走するから」と言われました。
実際に次に大連に行った時には「海鮮料理」の大ご馳走をいただきました。

我慢し続ければ、時々いいことも巡ってくるのですね。











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