Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

食の本有的価値(Food Intrinsic Value: FIV)とは何であろうか?

2016-08-11 | 水圏環境教育

「地域にある食の本有的価値(森川海と人との時空間的つながり)を理解・共有することによって森川海に生活する人々の共感力が高まる。ひいては森川海が一体となった地域のレジリエンス,持続可能性が高まっていく」との考えを紹介する。
1 食べ物とは何か?
皆さんはどのような食べ物をいただいているだろうか。
その食べ物は大半が森川海とそのつながりの中で育まれた物だ。また,食べ物は,突如この世に現れた物ではなく,人々がそれぞれの地域に誕生したころにはすでに存在していた。食べ物があったから定住できた。すなわち,空間的,時間的つながりの中から生まれた物である。そのことを体験を通して理解していくことが必要だ。食べ物は,人間と自然との接点である。本来,食べ物を食べるとは,体験が伴うものである。体験を通して,食べ物はどのような関わりを持っているのか,理解できるようになる。しかし,今現在,食べ物のほとんどが大手スーパーで買うようになっている。本来あったはずの体験が消え失せ,見た目,広告,宣伝,など目先の価値で選択する事が多くなったのではないか。その結果,食べ物の本来の価値,すなわち森川海と人との時空間的つながりが理解できなくなったのではないか。

2FIVの中身とは?
 FIVの理解は単なる体験から理解するだけではなく,体験を伴いながら食べ物の本来の意味を理解するためのプラットフォームである。プラットフォームとは在来知 (Tradisional Ecological Knowlegde)と水圏環境リテラシー基本原則(Fundamentals of Aquatic Marine Environmental Literacy 等の科学知(Scientific Knowledge)を融合したものである。FIVは人々が持つ体験と知識体系とを共有する役割を果たす。プラットフォームを身につけると,森川海と人の時空間的つながりを科学的に理解,説明できるだけでなく,在来知の立場から説明できるようになる。そのことが,流域の人々がFIVを理解することはお互いのつながりを理解することになる。


レジリエンスと持続可能性

2016-08-06 | 水圏環境教育

レジリエンスと持続可能性は,しばしばいっしょに議論される。
本来別々の物であったが,レジリエンスが高まることにって持続可能性も高まるとの考えが通説になっている。ここで述べた通説とはアメリカの研究者が唱えている,レジリエンス理論である。

この場合は,社会の発展には4つの段階があるという。この段階を乗り越えられるかがレジリエンスにかかってくる。レジリエンスが十分にあれば4段階を進めることができ持続可能な社会となる。

この理論を基に,縄文時代をレビューすると,狩猟採集民の時代と栽培民とで大きくレジリエンスが異なるという。すなわち,狩猟採集民は比較的な多様な食べ物を食しているが,栽培民となると単一栽培が中心となり,収穫量が一気に踏めそのことで人々が集まって来るようになり人口のピークを迎えるようになる。しかしながらその後,嘘のように人口が減少する。今までは寒冷化によって人々が離れたとの仮説を立てている。

このような状態は,今まさにグローバル化の時代と軌を一にする。グローバル化の波の中で効率的な栽培方法で作物が作られ,安い物を大量に生産し消費者をコマーシャルで攪乱させ最終的に大企業が儲かるような仕組みとなっている。最終的には,大企業の一人勝ちとなり,どんどん自然が破壊されていく。大震災が発生すると流通がストップし物資が不足する。

今まさに,閉伊川流域は風前の灯火である。確かに,グローバル化によって便利は良くなった。。しかし,今現在,持続可能な生活を維持できるのは80歳以上の方々だけである。この人たちがいなくなったら,伝統文化は途絶えることになる。

ここからが私たちの出番である。すなわち,在来知をいかにして後世に伝え残すのか。それが閉伊川流域での森川海とそのつながりを基調とした環境教育プログラムだ。それぞれの地域にいる人々がお互いの地域を理解し合うこと,そして外部の人々も加わり,流域の価値を理解するのである。その価値が共有されたときに共感力が高まる。レジリエンスの定義はあるがどのようにして育成するかについて議論が不足している。私たちは,共感力がたかまることでレジリエンスの高い地域社会が構築されると考えている。

また,本有的価値はプラットフォームとして理解することが必要であると考えている。本有的価値は在来知をその在来知を科学的に意味づけをする水圏環境リテラシー基本原則や科学的調査が含まれている。この水圏環境リテラシーは,国際的な取り組みとして
アメリカ,ヨーロッパの人々と共有されている。貨幣価値ではない,本有的価値による物事の考え方をグローバルで共有することによって持続可能な社会の実現に大きく貢献するであろうと思っている。

そのムーブメントがサクラマスMANABIプロジェクトである。

 


森川海流域圏の持続可能性

2016-08-03 | 水圏環境教育
閉伊川流域における本事業の環境教育と地元大学との接点を模索し,今後継続的に活動を実施するための支援体制について様々な意見交換を行った。その中で大きなテーマとなったのは,アカデミック分野がどれだけ地域の生活や産業に貢献するのかである。本事業の大きな目的である持続可能な社会を構築するために,果たしてこれまでどれだけアカデミアが貢献できていたのか,疑問視する地域住民も多い。特に,地域に根ざし長年にわたって持続可能な一次産業に従事した人々にとってアカデミアは決して十分に評価されていない。農学栄えて農業滅びるという言葉があるが,まさにサイエンスの発達と共に持続可能性が消失した例は数多く存在する。果たして,アカデミアが岩手の閉伊川流域圏にどれだけ持続可能性を担保できるのか。そのためには,単なる自然科学のみならず,人文科学的なアプローチが必要になってくる。そのための大学組織の役割も欠かせない。しかしながら,現在の日本の大学にはそうした役割を果たす部署は存在せず,研究者単位で役割を担っていると言えよう。事業が終了しても持続的に継続的に実施していくためには,地元大学とどのような連携が必要なのかこれからも検討していく必要がある。