Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

海洋政策研究財団支援連続講座東京海洋大学大学院合同セミナーが開催されます

2012-08-31 | 水圏環境教育
地球規模での水圏環境の悪化が著しい。日本にいるとその悪化を理解できないが世界に目を向けると相当深刻である。例えば,海ゴミ。300万トンを超えるというプラスチックゴミが太平洋を漂っている。フロリダ州では海面が上昇し一部の年は近い将来水没するという。アラスカの氷河は毎年40m溶け出し,北極海は解氷し大型船の航路となった。台湾では海流の変化により名物のカラスミの原料となるボラがとれなくなったという。実は日本も深刻である。人口が集中する場所,農業や養殖業が盛んな地域は窒素分が地下水や海底の蓄積し深刻な状況である。

さて,どこから手をつけていけばいいのであろうか。私は,人口の8割が集中する沿岸域ではと思う。沿岸域は人類にとって最も生活しやすい場所であると同時に最も人類によってダメージを受けている場所であるからだ。実は,生物生産も豊かであり地球温暖化の原因となる二酸化炭素も沿岸域での吸収率が高い。沿岸域海底のヘドロ化が深刻であるがこのヘドロが地球温暖化の原因の一つであり,その防止策が明らかにされつつある。

沿岸域は漁師や港湾管理者などの専門家ばかりでなく,レジャーを楽しむ人々だけでなくすべての人類にとって大切な場所である。沿岸域を総合的に管理しようという考え方が世界的に重要な課題となり,台湾,韓国,中国も自国の沿岸域の管理に力を注いでいる。日本はようやく2007年に海洋基本法ができてから重い腰が上がり始めた。戦後になって海洋から遠ざかった教育を受けている私たちとって,沿岸域の総合管理といってもぴんとこないかもしれないが,日本は島国であることを頭の片隅に入れておく必要がある。

本講座は、海洋政策研究財団のはからいにより「総合的沿岸域管理の教育カリキュラム等に関する調査研究事業」の成果を活用し,日本をリードする教授陣による「沿岸域総合管理」に関する講義を開催することになった。この場を借りて関係各位に感謝申し上げます。博士後期課程を対象とした合同セミナーであるが,水圏環境問題に関心ある多くの方々にご参加をいただきたい。



場所:東京海洋大学2号館100B教室18:00~19:30 入場無料
2012年10月4日(木) 沿岸域総合管理連続特別講座ガイダンス 
~沿岸域総合管理はなぜ必要か~  海洋政策研究財団常務理事 寺島紘士

2012年10月11日(木) 海洋総合的管理政策概論+海洋管理政策特論
~総合的管理の考え方とその手法:国内関連法制概括~ 放送大学副学長 横浜国立大学名誉教授  来生新

2012年10月18日(木) 海洋基礎生態学特論 
~海洋の基礎生産と生態系:富栄養化と肥沃化はなにが違うのか?~ 高知大学副学長 深見公雄

2012年10月25日(木) 生態系機能学特論 
~沿岸生態系の機能と生態系サービス~ 琉球大学教授 土屋誠

2012年11月1日(木) 陸域海域相互作用特論 
~沿岸生態系の相互関連性~ 琉球大学教授 土屋誠

2012年11月8日(木) 応用海洋物理学  
~里海創生論~ 九州大学教授 柳哲雄

2012年11月15日(木) 陸域海域相互作用特論 
~里海づくりにおける陸域と海域の関連性~ 広島大学名誉教授 松田治

2012年11月22日(木) 沿岸域工学特論 
~海浜地形変化、津波と対策施設の機能~ 日本大学教授 小林昭男

2012年11月29日(木) 沿岸域計画特論 
~ウォーターフロント開発とミチゲーション制度~ 日本大学教授 横内憲久

2012年12月6日(木) 沿岸域社会学特論 
~沿岸集落による地先の海の利用と管理~ 東海大学准教授 関いずみ

2012年12月13日(木) 国内海洋管理関連法特論+国際海洋管理法制特論 
~海洋基本法・基本計画と沿岸域の総合的管理~ 横浜国立大学特任教授 
                  (一社)海洋産業研究会常務理事 中原裕幸

2012年12月20日(木) 合意形成概論 
~合意形成の理論と制度~ 東京大学教授 城山英明

2013年1月10日(木) 海洋と沿岸域に関するリテラシー特論 
~海洋と沿岸域に関するリテラシーの考え方~ 東京海洋大学准教授 佐々木剛

2013年1月17日(木) 海洋環境保全学特論 
~沿岸海域の環境諸問題:原因、メカニズム、そしてその解決策~ 高知大学副学長 深見公雄

2013年1月24日(木) 沿岸域総合管理とキャリア形成 
~東アジア海域における沿岸域総合管理の取り組み~ 海洋政策研究財団研究員 脇田和美

臼澤みさきちゃん,石川さゆり,谷村新司他と共演,NHK歌謡コンサート 8月28日20:00~

2012-08-27 | 臼澤みさきファンクラブ
8月は暑い日が続いていますが,芸能関係も暑い。大友監督の「るろうに剣心」YORIYASU監督の世界初の水圏環境教育映画「嫌われ者のラス」など話題が絶えません。今度は
被災地から14歳で7月に歌手デビューした娘の同級生大槌町出身臼澤みさきちゃんがNHK歌謡コンサート(明日夜8時)出演です。 

透き通る歌声に鳥肌が立ち,暑さが吹き飛ぶようなとてもすてきな歌声です。大友監督やYORIYASU監督にあやかってみさきちゃんにも大ヒットを期待しています。

リスクをコントロールするのは誰なのか。

2012-08-23 | 水圏環境教育
ある方からリスクマネジメント協会のご案内を頂いた。
大震災の教訓からリスクマネジメントへの関心が高まっているようだ。
リスクをコントロールするのは誰なのか,それは組織を構成する一人一人であるという(リスクマネジメントとは)。一人一人が認識を高め,責任ある決定や行動するという水圏環境教育と方向性が一致しています。また,一人一人の意見が反映されるためにブレーンストーミングの考え方が必要であり,その意見を反映するためには組織が柔軟である事が条件となる,とのこと。
それでは,どのような理論に基づき,そしてどのように人材を育成し,どのような組織を作っていくべきなのか。
ラーニングサイクル理論に基づいた水圏環境教育の視点からアプローチしてみたい。

台湾国立海洋科技博物館を訪問しました

2012-08-22 | 水圏環境教育
国立台湾海洋科技博物館の陳麗淑博士を訪問しました。

潮境研究センター3階より撮影

台湾では,2010年に国家プロジェクトとして海洋教育がスタートし,小学校において海洋教育が導入された。基隆市には国立海洋科技博物館ならびに付属潮境研究センターが全台湾の海洋教育の中心的な役割を担っている。

(1)海洋体験施設「潮境研究センター」
潮境研究センターは本館から車で10分のところにある。
小学校の学校教育の一環として小学生を対象としたダイドープール学習,海洋科学研究の手法を学ぶ水槽施設,深海生物,海洋基礎調査を紹介する展示スペースを解放している。

潮境研究センター近くのタイドプール。ここでは,地元小学生の授業の一環としてタイドプール学習会を定期的に行っている。
小学校教師に対する海洋教育に関するリカレント教育も実施されている。
海洋研究だけではなく,研究の様子を理解するための施設として工夫されている。サンペドロのカブリロ水族館のレイズナーサリー施設と同様のコンセプトである。残念ながら日本でこのような施設は見た事がない。

センター内の水槽。クマノミが水族館施設展示のため乱獲され,減少している事から増殖に取り組んでいるという。


ここの白いラインの外側が見学ゾーン。誰でも見学しやすいように整備されている

また,夏休みは台北を中心とした政府関係者への施設案内を行っている。私が訪れた際にも,大型バス2台のった関係者が台北市から見学に訪れていた。

海洋だけでなく淡水も重要であると陳博士は語っていた


深海の特別展

深海の甲殻類が展示されていた

しんかい6500のパネル。台湾近海の深海は日本の潜水艇で調査されている

海洋を調査するための器具の展示

(2)海洋教育プログラムの模索
 海洋教育の具体的なプログラムについては,現在模索中でありどのようなプログラムがよいのか現在試行錯誤をしている,という。台湾では,座学を最初にした方がいいという意見と,実際の現場が重要でありその後に講義した方がいい,という2つの意見があるという。学校の状況に依存しているので一概には言えないが,子どもたちの環境をよく理解した上で,プログラム開発を行う必要性があるのではないか,環境に対する意識を高め,生態系の重要性を教えるのは大変時間がかかるので,段階的にステップバイステップでプログラムを組み立てる必要があることのではないか等の意見交換を行った。
台湾では生き物には興味を示すが,海洋科学的なことにはあまり興味を示さない。どこの国でも共通の課題であろうか。特にアジアの国は西洋生まれの科学について理解を進めるためのプログラムが必要である,また質問をどう組み立てるかによって子どもたちの興味関心を高めることができる「質問をもとにした学習」(Inquiry based learning)の共同研究の必要性を提案した。

(3)基隆市小学校での海洋教育の実際
現在,市内の3つの小学校が博物館と連携して海洋教育を推進しておりウエブページで紹介されている。
基隆市和平國小での陳さんの講演のようす
八斗国小海洋日活動

(3)各郡に設置されている「海洋教育資源センター」
また,台湾はカウンティー(郡)ごとに海洋教育資源センターを設置しており,将来的にはこのセンターが博物館と連携し全国のネットワークを形成して海洋教育が全国的に組織的に展開されるという。日本型シーグラントに求めている理想の形である。
また,博物館が中心となって毎年9月にICCの一環としてビーチクリーンアップも行っており,日本の大学とも連携しているという。


(4)海洋科技博物館本館の「区域探索コーナー」
本館の海洋科技博物館は,船の形をした5階建ての建物。現在は区域探索コーナーだけが開館している。

海洋科技博物館の区域探索コーナーは,地元の基隆市の昔の港町を再現したフロアである。7月に開館したばかりであり,7月は地元,8月は基隆市の全市民を対象に開講している。
展示内容は,50年ほど前に実際に行われていた地元の漁業が紹介されている。子どもの頃体験した漁村生活を懐かしみ涙ぐむ来館者もいるという。
海女の展示コーナーでは珊瑚石で作ったハウスで子どもたちに海産物を食べされている光景が再現されていた。

海女さんの家庭での一般的な食事風景
この地域はかつて資源が豊富だったが,50年前に港湾施設ができてから水産資源が減少の一途をたどったという。

港湾施設が出来た現在の八斗子漁港 青い建物は完成予定の海洋科技博物館(ここはかつて日本が戦前に建てた発電所。最近まで稼働していたという)

八斗子地域の新造船の餅巻き風景(日本の方式が受け継がれているという)

(5)海洋教育における「国際協力の必要性」
陳博士はオーストラリアの大学の海洋生物学科で博士をとり10年前に博物館職員として採用された。元々コーラルリーフフィッシュの専門であったが,博物館就職とともに海洋教育研究に専念している,という。今は,来年度以降に開館する海洋科技博物館の新館準備と,海洋教育プログラムの開発と作成に取り組んでおられる。

研究室外観。研究室には日本の大学で博士を取得した研究員が勤務していた。不景気のため博物館の開館が遅れているという。

教育は重要であるが,予算の面から後回しになりがちである。海洋の価値を高めていくためには研究のみならず教育に関する国際的な連携が重要であり,これからも綿密な連携を図っていくことを約束して,再会を誓った。陳麗淑博士が作成した基隆市海洋教育資源中心をご覧いただきたい。

台湾の海洋教育には韓力群・佐々木剛論文「東アジアにおける海洋教育 : 台湾の地域連携教育 を中心にして」に取り上げられている。

水産庁「魚の国のしあわせ」プロジェクトがはじまりました

2012-08-10 | 水圏環境教育
水産庁は,「魚の国のしあわせ」プロジェクト実証事業をはじめることとなった。

この事業では,5つのコンセプト(味わう、感じる、暮らす・働く、出会う、楽しむ)に基づき、国民の皆様に実感してもらうため、生産者、水産関係団体、流通小売業者や各種メーカー、教育関係者、行政等、魚に関わるあらゆる人々が一体となって進めていく取組のようです。

この取り組みは水産基本法の第8条,第23条,第31条,第32条に関連する。

(消費者の役割)第八条  消費者は、水産に関する理解を深め、水産物に関する消費生活の向上に積極的な役割を果たすものとする。
(人材の育成及び確保)第23条 3 国は、国民が漁業に対する理解と関心を深めるよう、漁業に関する教育の振興その他必要な施策を講ずるものとする
(都市と漁村の交流等)第31条 国は、国民の水産業及び漁村に対する理解と関心を深め・・・(中略)必要な施策を講ずるものとする。
(多面的機能に関する施策の充実)第32条 国は、水産業及び漁村が国民生活及び国民経済の安定に果たす役割に関する国民の理解と関心を深め・・・(中略)必要な施策を講ずるものとする。


このプロジェクトが短期で終わることなく,国と事業者がしっかりとしたプロジェクトデザインを作成し,各市町村単位で一丸となって実施していきたいものである。