遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

グアニン四重鎖構造

2006-10-01 19:19:16 | たわごと
9月29日のエントリーで貼った図はDNAのグアニン四重鎖構造の模式図で、けっして怪しい図ではありませんので自由に閲覧してくださってけっこうでございます。ずいぶん昔に学会発表で使ってた図です。なんでこんなこと書くかというと、今日『れ』さんに会ったときにこれは見てはいけない図だと思って思わずウィンドウを閉じたと聞いたからっす。

グアニン四重鎖というのは組み替えの中間体やテロメアでできる構造として提唱されていましたが、細胞内でこれができていることを証明した人はまだいないと思います。いるのかな?テロメアの構造は電子顕微鏡でD-loop-T-loop構造をとってわっかになってるということが示されましたが、これは間期の構造だと思っています。合成期にはほどけるはず。染色体は線状構造なので端っこは断裂点でありますから二重鎖切断修復系のタンパク質群がくっついています。しかし、修復してしまったら染色体が別の染色体とくっついたり、それそのもので環状化したりするので修復系タンパク質群はくっついているのに修復しないというややこしい状況に置かれています。あるDNA組み替えの専門家が始めてD-loop-T-loop構造を見たときに「これこそ組み替えの中間構造だ」と言ったとか聞きましたが、きっとそうなんでしょうね。
「染色体複製の末端問題」として、複製に連れて短小化していくことが上げられ、テロメラーゼの存在が予言されましたが、僕はRNAプライマーの分だけ複製してできる1対の姉妹染色分体の長さがそろわなくなることも「染色体複製の末端問題」だと思っています。3'側と5'側を鋳型にしたときにでき上がる末端の長さがそろわないのです。テロメアはリピート配列なのである程度はそろわなくてもいいかもしれませんが、あまりにちぐはぐだと進化的に問題でしょう。それをそろえるのもテロメラーゼの役割ではないかと思っています。そろえるにはC-rich鎖が消化されて露出したG-rich鎖を束ねると物理的に長さをそろえやすくなります。そのためにグアニン四重鎖構造がとられるのではと想像しています。この構造は物理化学的に非常に安定で90℃くらいに熱さないと解けないそうです。生体内ではありえない温度ですから酵素でほどきます。その酵素がRecQ型ヘリカーゼです。テロメアが組み替えで伸長されるときにRecQ型ヘリカーゼが必要なのはテロメアの複製中間体の処理にこの酵素がいるからではないでしょうか。

こんな想像を公式な場で言えないので、こういうブログで自由に書かせてもらいました。僕が想像してたことが後に間違ってたことなんていくらでもありますから、軽くスルーしてくださいね。さて、上の仮説を確かめるにはどんな実験が必要かな?

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今日貼った写真は6月の学会で訪れた京都の街で撮ったものです。白黒フィルムで撮ったものをスキャナーでネガから取り込みました。たまにアナログな写真を撮ると楽しいですね。
コメント (2)
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