遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

エピ + ジェネティクス

2011-12-06 22:41:08 | BIONEWS
がん細胞:増殖を半減させる酵素特定 東大チーム
エピジェネティクスです。染色体DNAが巻き付いてるコアタンパク質の修飾状態の変化で調節・・・というか・・・わかる?? ヒストンって4種類あって、それが2つずつで8量体で出来てて・・・というか・・・わかる?? そのうちのひとつ"H3"のN端テールの端っこから4番目のリジンがメチル化されると遺伝子発現が『オン』、9番目のリジンがメチル化されると『オフ』・・・というか・・・わかる??
んで、問題なのは、記事に出てくる「ヒストン脱メチル化酵素」というのが、どのメチル化リジンのメチル基を外す酵素なんやねーん!! というところ! わかる?? 記事書く人はそこまで勉強して書かなあきません。文系だからちゃんと分からなくていいというのは甘えだ。プロが読んでも正確に分かるように情報を提示するべき。中途半端な科学情報がどんだけ世間に迷惑をかけるか、そろそろまじめに反省してほしい。

後で、論文検索してとっておこう・・・。

ジェネティクス、つまり、遺伝学というのは、要するにDNA上の配列の違いによる生物の形質変化というか生理機能の違いを指標にして生物のありようを明らかにしようと、まあ、そんな感じの学問なのです。でも、DNA上の配列に違いがなくてもその遺伝子の機能や発現プロファイルが変化することが起こります。これは後天的に状況に応じてDNAの高次構造や結合してるタンパク質の状態を変えることで制御されてたりするんですな。これが『エピジェネティクス』。最近、ちょっと流行なのだ。『エピ (epi)』という接頭語は、『上位の』とか『外の』とか意味をつけてくれるわけであります。古い遺伝学で、ミトコンドリアとか多コピープラスミド、それからプリオンみたいなのを"episomal"という言葉で表現することがありましたが、それは細胞質遺伝での言葉でして、エピジェネティクスとはちょいと違います。純粋にジェネティカルな、つまり、遺伝学的な因子というのは『メンデルの法則』に従うものです。そこら辺の区別がちゃんとつけば、(遺伝屋的に)とてもよろしい♪

癌化のプロセスでこのエピジェネティカルな変化が1段階かんでいるというのは、だいたいコンセンサスを得ていると思われまして、ヒストンのメチル化状態をムリヤリ変えてやれば、癌細胞がころっといくのは、まあ、想定内。細胞が老化していプロセスでも関わっているし、iPS細胞が今ひとつうまくいかんのはこのエピジェネティカルな状態を完全にリセットしきれてないからとも言われておりますれば、流行るのもいたしかたないですな。そんなわけで、おいらもこれをばけんきうしております。

本日のお酒:白菊 純米吟醸 + 宮崎芋焼酎 黒霧島
コメント
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