―――― なぜ、ネット民は、誰が聴いてもデマと分かりそうな言説に、こうもわらわらと群がるのか?
―――― 彼等はコロナ薬について科学的な検証を試みようとはしない。足を使って自身で有識者と会って調べようともしない。
―――― 彼等は調べない。調べずに否定する。否定して、自らのいびつな夢言説にひたすらしがみつくだけだ。
―――— リチャードコシミズがそうだった。Q のエリもそうだった。平塚正幸も、神真都Qの連中もそうだった。
―――― 名古屋の寺尾介伸と一時親しくしていた黒川敦彦氏も、おなじ轍を踏んで、エリコの路を下りはじめてる。
―――― いまや陰謀論は世界中から疎まれ、蔑まれている。それも徹底的に。だけど、彼等は彼等の日陰者言説をいっかな捨てようとはしない。
―――― それは・・・なぜだ?
僕が多くの陰謀論者( 注:この呼び名ももう死語になりつつあるけど )とバトルしつづけてきて感じたこと ―――
たとえば懐かしのあのリチャードコシミズ!(笑)
いまはもう落ちぶれきってしまって、彼のことを覚えているひとも希少だと思うけど、2006年のワールドフォーラムで世に出たころの彼の勢いはまことに凄いものがあって、ネットニュースの No1 から No 10 までをすべてRK記事が独占する ――― といった途轍もない人気爆発を巻き起こした男でもあったんですね、彼は。
時代的にいうなら彼登場以前には、在特会の桜井誠という存在がいたんです。
ヘイトスピーチで一世を風靡したあの桜井誠のこと、あなたはまだ覚えてられますか?
まだあのころはネットの黎明期であって、あの桜井誠こそが少年期のネット ――― 特にでかかったのが動画配信 ――― を使ってのしあがった最初期のイノベーターであった、といえるんじゃないのかな?
いうなれば、リチャードコシミズは彼の配信モデルを継いだわけです。
そして、桜井氏と同様、彼にも偏狭だけれど異様にパワフルに語れる話術の才があった。
語られる内容自体に目をむけてみたら、全然大したことないんです。
全部が全部、海外の陰謀論から切り抜いてきた、根拠も証拠もない陰謀ネタの焼きなおしばかりなんだから。
ただ、彼の場合、それらの曖昧模糊としたガセな原材料をコーティングするのが上手かったんだな。
なにより講壇上のリチャードコシミズは、自身の言説を動画で発信するときには、それを信じきってましたから。
その意味、彼はかの麻原彰晃と同様の、一種の宗教者( 幻視者 )であったともいえる。
ポンコツのガセネタを集めて、彼はネットの仮想空間のなかに、自らの王国をつくった。
僕はああいったの、彼流のサティアンだったと思ってますがね、時代と運がそれにたまたま味方した。
彼の提示した「 正義の陰謀ネバーランド 」はたちまちのうちに大きな流れとなり、実社会のなかでのたうつ多くの居場所のないひと、存在係数が破綻ぎりぎりの自閉者たちが、わらわらと、吸い寄せられるように、この擬似空間にやってくるようになった。
そうした構造を弁えていたから、これを潰すことは容易でした。
僕等は彼の全国講演に焦点をあて、その予定会場に彼の講演内容について報告するだけでよかった。
彼の場合、そのころはまだ桜井氏から継いだ「 〇〇人差別 」をやってましたから。
ネットの差別撤廃の整地は当時まだ遅れていましたが、現実社会ではもうそんなのはとっくに済んで、軒並み禁句になっていましたからね。
2019-9-14 の埼玉の長瀞講演会など警察沙汰になった案件も幾件かありましたが、会場の規約を一方的に破っていたのは、いつもコシミズサイトのほうでしたし、昭和のいちばん黒い面を前面に出した、恐竜みたいなRK理論なんかが、こうした時流を乗りきれるわけがないんです。
当然、僕等は次々と彼の講演を潰すことに成功し、最終的には彼の講演活動のすべてを停止させることができた。
彼の講演活動の母胎となっていたネット基地もどんどん潰していきました。
biglobe、wordpress、楽天、エキサイト、はてな、Ameba、Note、FC2、muragon、Seesaaa、TicToc、youtube・・・
裁判を含めたイザコザはまだまだあったけど、詳細はもう忘れちゃった(笑)
けれども、こうしたネット陰謀論の第1世代である本家リチャードコシミズが衰退していくにつれ、彼のお弟子筋から「 第2世代の陰謀論 」といった勢力が新しく立ちあがっていったのです。
具体的にいうなら、それは2021年米国連邦議会襲撃事件の最大因子のひとつとなった Q 、その翻訳者として twitter で活躍し、Qの日本代表として動いていた、
QAnon の Eri( 彼女はRK独立党の出身。当時のHNはよかとよ。現在はテレグラムに逃亡し、活動状況等は不明 )―――
もうひとりはコロナの第1波、第2波、第3波の混乱のさなかに、渋谷で毎週クラスターフェスなる迷惑イベントを派手に行い、全国的な話題になった国民主権党の平塚正幸( ああ、この名出すの懐かしいな! 彼もQの Eri 同様リチャコシ独立党の出身者。どっちとも僕は直接知ってる )―――
この2人がなんといってもリチャードコシミズから派生した、ネット陰謀論第2世代の草分けでしょう。
特にQ-Eri の虚名は、当時爆発的な信者を獲得していた「 トランプ現象 」の煽りを受けて、信じられないほどの拡散率を見せたものです。
海外メディアで Eri についての特集記事が組まれたくらいだから、少なくとも彼女は知名度の点にかけては、師匠であるリチャードコシミズを完全に凌駕したことになる。
これに続いた国民主権党の平塚正幸( さゆふらっとまうんど )も国内での知名度なら負けちゃいない。
コロナ襲来真っ盛りの時期に、山手線のノーマスク軍団による占拠イベントで超ド級の全国的顰蹙を巻き起こし、さらには都知事戦に立候補したり、住居侵入で逮捕されたり、立花孝志のNHK党に関連したり・・・さまざまな浮き名を流したものです。
この2人にはリチャードコシミズが持っていたような弁舌の力は、全くなかった。
けれども、閉ざされたネット空間の檻からかたくなに出ようとしなかった師匠に対して、この2人には、現実世界でパフォーマンスを繰り広げる能力と覇気があった。
Q-Eri はトランプの人気上昇と共にワケワカメなクラッシュ言語を駆使して twitter を媒介にのしあがり、さゆふらこと平塚正幸は、コロナの席巻で恐怖に陥った人々を嘲笑うような「 コロナは風邪 」「 俺たちはマスクなんてしない!」といったアンチパフォーマンスでのしあがっていきました。
ただ、どちらとも本質は、月でした。
太陽の放射の輝きを反射できる間しか輝けない宿命っていうのかな? 独力で自ら輝ける力量はどっちもなかった。
だから、トランプ現象が下火になり、連邦議会襲撃の件でのQの取り締まりがはじまると、Q-Eri の牽引力も幻のように消えていったわけ。
そして、平塚正幸の顰蹙フェスも、第3世代の陰謀論軍団「 神真都Q 」の新たな台頭により、新鮮味を失い、徐々に飽きられていきました。
コロナの真っ最中にノーマスクで山手線に乗りこむより、ワクチン接種会場に多数で乗りこんで一般人の接種を妨害して捕まったりするほうが、そりゃあどう考えても顰蹙度も迷惑度も上だし、何よりセンセーショナルですからねえ。
最終的に平塚正幸は女子中学生を妊娠・出産させたことをFRASHにすっぱ抜かれ、政治生命を失い、テレグラム内に逃亡した Eri 同様、しめやかに消えていきました。
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しかし、今日ここで僕が問題にしたいのは、そのような陰謀論者との黴臭い過去のバトル話なんかじゃなくて、そうした陰謀論者各々の内面についてなんです。
いかにして彼等は陰謀論にのめりこんだのか? あるいは、のめりこまずにはいられなかったのか?
そうした陰謀論者の宿命に関して、今回は光を当てていきたいと思います。
僕が思うに、陰謀論の会合にやってくるひとって、例外なく大人しくって、どことなく自閉してる趣きを感じさせるひとが多かった。
初期のころには、そうしたヒッキータイプじゃない、普通社会でもやり手というしかないT社長だとか、大坂の水野さんだとかの例外もありましたが、それはやっぱり少数派の部類であって、大部分の参加者は、対面した際にオープンマインドよりも自分護りの鎧のほうを感じさせるタイプのほうが圧倒的でした。
かくいう僕も独立党にいた時代にあるひとから、
―――― なんでマイケルさんみたいなひとがこんな独立党みたいなところにいるんですか? と戸惑いまじりにいわれたことがある。
彼のいった「 こんな独立党みたいなところ 」といったフレーズには、自身へのやりきれない嫌悪と本当のところは独立党を掃きだめととらえているようなビターな自棄とが混在していて、そのあまりにも後ろ向きなオーラに対して、僕はつい黙りこんでしまったものです。
講演会後の懇親会にしても同じような気配は常にありました。
党首が音頭をとって乾杯するじゃないですか? それぞれの席でみんな杯をあげて乾杯! ってやる。
当然みんな笑ってね。
普通ならそこからにぎやかな酒宴に一気に雪崩れこむんですけど、独立党の場合はそうじゃない。
乾杯後の会話の花が咲くまでに、一瞬の間があくんですよ。いくらかぎこちなくて重苦しい感じのね。
さあ、いよいよ問題の会話のはじまりだけど、ああ、心配だ、何から喋ったらいいのかな? みたいな。
会話っていうのは基本生モノのはずでしょう? 考えて用意してきた話題を予定通り開陳する、なんていうのはたぶん会話じゃない。
会話の命はいつだって即興のアドリブのなかにしかないんですから。
でも、当時の独立党在籍者には、会話が苦手な内向的な対人恐怖タイプが圧倒的に多かった。
ベースがAの音を出したらギターが一弦解放のEの音を何気に鳴らして、さあ、ぼちぼちいつものジャムをはじめよか? みたいな自然体はどこにもなかった。
誰もがなんか不自然体なんです。
ぎこちなくって息苦しいんです。
そのぎこちなさを振り切るように、どこからか誰かが思いっきり構えてこういうわけです。
―――― リチャード先生のいってた日航機墜落のときの、赤いシャトルの話はやっぱヤバイよねえ!?
すると、テーブルを越えて、うん、そうだそうだ、あれはホントにヤバイ、みたいな声があがって、会話らしきものが一応ばらばらとはじまる。
座をにぎわしている鎹( かすがい )は、いわゆるRK理論のなかの一種の定型フレーズです。
誰もがその種の定型フレーズを交換しながら、かろうじてなんとか喋ってる。
アルコールが徐々に効いてきて、そんな座にもとりあえず普通の酒宴みたいな会話の花が咲く。
でもね、それは普通の会話の擬似でしかなくて、みんな、一生懸命普通のひとみたいに振る舞うのがこの会のほんとの目的なんじゃないか、と僕はいつも思ってました。
――――― いやいや、あれにはニッポンのIT技術者の特別チームが乗っててね、彼等の開発したオペレーティングシステム( OP )が途轍もなく優秀でさ、マイクロソフトにしてみれば、これから販売して世界中を制覇させるはずの Windows にとって凄い障害だったんだよ。それを一掃させるために国家的規模で米軍が動いたっていうのが、実はあれの真相なんだよ・・・。
大きな声でいわれたそんな台詞に、座がドッと湧く。
僕も一応、おお、とかいってたんだけど、内心は切なくて、淋しかった。
だって、誰も腹を明かしてないんだもん。
自分の本当の感情が選んだ言葉をいうんじゃなくて、RK理論のなかの適当フレーズを借用して、それを交換しあって互いに自己満してるだけなんだもん。
皆が皆、足並みをそろえて、「 普通のひとごっこ 」という架空の芝居を打っている気がした。
自分内の本当の感情での交友をやれないひとたちが、リチャードコシミズの撒いた定型フレーズを借用しながら互いに喋って、笑って、いかにも自分たちが「 あたりまえの普通のひと 」みたいな演技をして、それに酔って・・・
つまり、RKの陰謀論は、マッチングアプリみたいな社交場として機能していたんです。
それも社会の第一線でバリバリやってるひとらの慰安のための娯楽場じゃなくて、もっと底辺向けの、社会枠から落ちこぼれてしまったひとらのための地下酒場。
リチャの語る大言壮語は、さしずめそんな安酒場の建付けのチャチさを誤魔化すための、光量だけギラギラとあくどいネオンサイン。
俺たちは真相を究明する精鋭軍団だ~! とリチャードコシミズは叫んで、党員のみんなもその台詞に酔って狂喜していたけれど。
それを信じてる奴は僕の見るかぎり誰ひとりいなかった。
人見知りで口下手で付き合いの苦手な ――― 自分のことをダメ人間と規定している連中が、その自分縛りの枷をほんの一時だけ忘れにくる場所。
よくいって、裏町のくたびれた安酒場 ―――。
きつくいって、落ちこぼれ人のための難民キャンプ ―――。
党首のリチャードコシミズを含め、精鋭なんかどこにもいやしない・・・。
ほかのカルトのことは僕は知らないけど、たぶんほとんどのカルトってこうした場なんじゃないか、と思いますね。
存在係数の低いひとたち、あちこちの関係から弾かれて居場所を失いかけたひとたちが、ノアの箱舟に乗るときみたいな決意をこめて、こうしたバーチャルゲームにわざわざ溺れにきていたんですよ。
―――― あれの置かれた救いのない貧しさといったら、私もずいぶんいろんなことを見てきましたが、とても口では言えないほどでしたよ。身寄りの者にはみなそっぽを向かれるし、それにあれはえらく気位が高くってね、人に頭を下げる女じゃないし……ちょうどその頃、私も男やもめで、死んだ妻が残した14の娘と2人暮らしでしたがねえ、あれの苦しみを見るに見かねて、手をさしのべたわけですよ。あれの窮状がどんなにひどいものであったかは、教養もあり、教育も受け、名門の出であるあれがですよ、私のような者の申し出を受けたことでも察せられるというものです。嫁にきましたよ! 泣いて、手をもみしだきながら ――― きたんですよ! どこにも行くところがなかったからです。分かりますか、分かりますかね、学生さん、もうどこにも行くところがないというのが、どんなことか? いやいや、あなたはまだお分かりになってない……(「 罪と罰 」より )
上は「 罪と罰 」の登場人物マルメラードフにドストエフスキーがいわせた台詞なんですけど、この居場所がないって表現は実に恐ろしい。
うん、マジに恐いです。
昭和のころにはこうした落ち武者たちは、網走番外地だとか釜ヶ崎だとか飛田だとか山谷とかに流れていくのが相場だったんですが、平成の世になってネットっていう画期的なツールが登場した。
登場時には、これ、見知らぬ他人同士がいつでもどこでも結びつける、まさに夢のツールだってノリでした。
けど、時が経ってネット利用者の数がメガ級に増加していくと、そのバーチャル世界のなかでも現実の世界と同様、うらぶれてスラム化していく層がやっぱりできてきちゃったんですね、これが。
重すぎるコンプレックスに心乱れた連中がヘイトな感情で結ばれて、憎っくき社会を嘲笑う復讐空間。
僕は、個人的にこういうのを「 ネットスラム 」と呼んでます ――― 。
ネット陰謀論第1世代のリチャードコシミズは、その先駆け。
第2世代の独立党出身の平塚正幸、QーEri の両名もむろんそこ戸籍の住人です。
第3世代の「 神真都Q 」以降のワク絡み連中は独立党圏外から派生した口だけど、連中なんかもたぶんそう。
ドナルド・トランプ主導の米国連邦議会襲撃事件で一気に世界的潮流となった彼等は、コロナの襲来とともに、その「 現実ヘイト 」の視点をすべて「 反ワク 」のアングルに持っていくことによって結びつきます。
有象無象の匿名の自閉者たちの支流がこの流れに加わり、地下水道みたいな彼等の非社会的な水流は、僕等の現実社会の底で、一種の腐臭を発しながらより大きな流れへと変化していきます。
疎外された人間が小癪な社会プロテストみたいな思いでついやっちまった、あの幼稚な「 スシローペロペロ事件 」なんかも、案外、彼等がああした活動をはじめるいちばん素直な動機というか、案外核心だったんじゃないのかな?
あれにQ的な陰謀論デマと反ワクの「 ノーマスクデモ 」なんかを混ぜてシェイクすれば、ねえ、たちまちのうちに現在社会のシャドウたる、彼等のもの悲しい内面の肖像が描きあがる・・・。
ネット陰謀論第一世代のリチャードコシミズはメジャーなツールからはすべて追い出されちゃって、その名を覚えているひともまばら ――― みたいな落ちぶれ状態にいまじゃ落ちこんでしまったけれど、彼も現在では「 アビガン( 本来はインフルエンザ薬 )」や「 イベルメクチン( 本来は駆虫薬 )」を救世薬とする零細陰謀論にシフトして、いまだ彼を信じているブラックピーポーを顧客に、かろうじて糊口をしのいでいる状態です。
家族からもとうとう切られちまってね、わずかな年金と信者からの寄付にすがって生きる現在の彼の姿は、僕にとって「 陰謀論の象徴 」みたいなものなんですよ。
もうね、見てるだけでうら悲しいの。
シェディングとかいう魔術語を持ちだしている信者連も彼とご同様。
たぶん、あと2,3年も経たないうちに、すでにセピア色になりかかっている「 陰謀論 」なんてコトバは死語になり、誰からも忘れ去られてしまうんじゃないでしょうか?
もっとも、未来は誰にも見えません。
僕にしてもあかねさんにしても先のことは全く分からない。
いいにくいことをいっぱいいったけど、僕自身にしてもこの僕言説が100% 正しいものだとは思っていない。
だだね、彼等の行く道が、現在居住してる世界が、光のあたる楽しいところだとは僕はどうしても思えない。
そんな暗いヒッキー部屋に息をひそめていつまでも震えていないで、1度、窓をあけて野外の景色を眺めてみたらいいと思う。
それで全部が変わるなんておめでたいことは僕も考えてはいないけど、何かが変わるきっかけぐらいは掴めるかもしれないからね・・・。
この記事を、現実否定のネガ世界に生きる、居場所のないあらゆるひとに捧げます ――― お休みなさい。