( 新宿から富士山 )
< 日本の街並み百選のこと >
「日本の街並み百選」という取り組みがある。日本の歴史ある古い街並みを大切にしようという、こういう取り組みは良いことだ。
ただ、「パリの街並み考」からはじまったこの文章の趣旨とは、少し違う。
ここで書いてきたのは、そこで生活して(働いて)、休みの日には散歩することが楽しみで、散歩の途中、カフェなどで一服して、「わが街はなんて美しいんだろう」、と思えるような街はどこか、ということである。
例えば、「百選」の富山の五箇山は、街並みとはいえない。高野山は、一般人が働いて生活するというわけにはいかない。木曾の妻籠や馬籠も、誰でもが住んで、働いて、散歩を楽しむというような「都市」ではない。街という以上は、最低、尾道ぐらいの都市規模を想定している。
ただし、「百選」を否定しているのではない。
[ 東 京 ]
( 銀座四丁目 )
遠い昔、学生時代、4年間、東京に住んだ。
東京の杉並区に下宿して、電車に乗って、夕方、西のビルの向こうに、富士山がくっきりと見えたときは、感動した。
大阪に職を得て以後、出張で何度も東京を訪れたが、仕事が終わればすぐに引き上げていたから、今の東京についてはほとんど知らない。
とにかく、パリやウィーンと比較するのは気の毒だが、日本の大都会として、東京は綺麗な街だと思う。
何よりも、樹木が多い。
これは、江戸時代の大名屋敷の名残である。諸大名が上屋敷、下屋敷を構え、さらに旗本屋敷もあって、江戸は何といっても武士の町であった。大名屋敷や大きな旗本屋敷には、日本庭園があった。その大大名の屋敷跡の庭園が、今も、そのまま著名な公園になったりしている。
それに、東京はからっ風の強いところだから、私が住んでいた中野区、杉並区あたりの住宅街も、一軒一軒が樹木に囲まれていた。新緑のころ住宅街の木の塀や垣根の道を行くと、木漏れ日が緑に染まっているようで、気持ちよかった。
そういう街だから、東京には、人それぞれに、休みの日に散歩したくなる街並みがあるだろうと思う。
遠い昔は、「銀座の恋の物語」であり、「有楽町で逢いましょう」であったりしたが、この前、東京に行ったときは、表参道などもなかなかなのでは、と思った。
(表参道のオシャレなカフェ)
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