JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

「M」

2009-10-04 | 映画(DVD)
「M」1931年 ドイツ 監督:フリッツ・ラング

1930年代のベルリンで、幼い少女ばかりを狙った連続殺人事件が発生した。警察の必死の努力にも関わらず犯人逮捕の目処は立たず、市民や暗黒街の犯罪者たちは彼ら自身の手で犯人を捕まえる事を思い立つ。
手がかりはないかのように思えたが、被害者の一人エルジーが誘拐されたときに口笛が聞こえたことに気付いた盲目の売り子により、一人の男に焦点が絞られた。チョークで「M」(ドイツ語で殺人者を意味する「Mörder」の頭文字)のマークを付けられた男は、徐々に追い詰められてゆく。



フリッツ・ラング初のトーキー作品なんだそうである。
これはもう無声時代から温めていたと思われるアイデアが溢れ出す作品で、トーキー1作目にして完成度の高い、音の使い方。

前半はなるほど、猟奇殺人を巡るサイコスリラー映画の始祖と言われる展開、映像手法に納得しながら鑑賞。

不吉な童歌。
ペール・ギュントの「山の魔王の宮殿にて」の口笛。
舞い上がる風船。
犯人の残虐性と市民の恐怖を巧みに表現する光と影。

しかしそれだけでは無かった。後半は急に装いが変わって群集心理を扱う問題作。実はここからが本領発揮だったのだ。
その扱う題材は80年近く経った現代でも充分考えさせられる内容。
それは犯罪を憎悪する群集心理の恐怖から、精神鑑定に逃げ込む殺人鬼。加害者に過剰に守られる人権といった正当な法の裁きへの疑問。裁判員制度の導入までも・・・
アンダーグラウンドの裁判の中で唯一殺人犯の人権を訴える弁護士に対して
「あなたには子供が居るのか」と迫るご婦人に群集の怒りは爆発。

ずんぐりタイプで目ばかり大きいペーター・ローレの殺人犯が裁判で見せる恐怖の表情が印象的。

ちょっとこれだけ奥の深いサイコサスペンスってあるだろうか。

池袋 新文芸座

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