和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

あとがき。

2009-08-19 15:54:13 | いつもの日記。
そんなわけで、突発企画、SS(※脊髄反射小説)でした。
休み休みとはいえ、さすがに6個も書いたら疲れるわ!
でも、不思議とネタ切れ感はなかったなあ。
・・・ネタと呼べるほどのものじゃないからですね。ええ。分かっていますとも。

さて。
ちょっと1作ずつ丁寧に振り返ってみましょうか。
自分でも全然読み返してないので、ある意味楽しみです。

【1.彼女と喧嘩】
1作目、まだペース配分がつかめてないですね。ちょっと長い感じかなあ。
事前に「ドS彼女、っていうか『放課後プレイ』」っていうのを考えていたので。
何かこう、微妙にしっかりしてる作りになってしまいました。
どんな反省だ。
でも、会話の流れとかオチとかは完全に即興ですねー。
つーか、この主人公はだいぶイカれてますな。
多分これ、彼女が始めてウチに遊びに来る日のハナシだよなあ。
なのに、忘れて友達とカラオケ行ってましたーって有り得ねえよそれ!?
うん、やっぱりテキトーな作りです。
あ、でもなんかこのギャルゲー脳になってるところは嫌いじゃないかも。
あと、別に僕は黒ストッキングフェチじゃありません。

【2.壊れていく、この世界で。】
タイトルは、Pierrotの名曲より。
これはオチから書き始めた作品ですね。
オチの一文が最初に浮かんで、じゃあそれを最初に持ってくればすぐにでも書けるな、と。
あと、外に買い物に出かけたら、超暑かったんでこんな世界観になりました。
主人公の女性は、ようやく書けたよ!という「ですわ」キャラ。
でも、作品が短すぎて書いた気がしない・・・。
ま、いずれ再挑戦するってことでどうかひとつ。

【3.かぼちゃとプールと蝉の声】
ジャイアントかぼちゃ、昔育ててたんですよ。
まさに作中のごとく、夏休みの学校に出向いてですね。
なので、作中の小ネタ(水は枯れるギリギリであげる、とか、大会が存在する、とか)は
当時の話をそのまま持ってきただけです。
あ、今読み返して気付いたけど、夏休みに入って中盤くらいですよね、これ。
その時点で芽しか出てないようなら、正直9月の大会には間に合いませんね。
あと、芽が出てるレベルでギリギリまで乾燥→一気に水遣り、をやると死にます。
多分。
・・・適当だなぁ。自分。
良いんです。何かこう、色々青春してる感じが書きたかっただけだから。

【4.洗脳テレビ】
ある意味一番チャレンジャーな作品。
本作はフィクションであり、実際の人物・団体などとは一切関係ありません。
って強調しておかないと色々マズい気がする。
ま、考えなしの恐怖ってやつは始末におえんなぁ、っていうハナシ。

【5.お引越し】
昔から好きなタイプの話に、「ミステリアスな友人」というのがあります。
何を考えてるのかサッパリつかめない感じの友人の話ですね。
それに、何だか不思議な友人関係ってのもミソ。
その辺は、多分大学時代からの友人達の影響ですね。あいつらみんな不思議すぎる。
(逆に言わせれば僕の方が不思議なんだろうケド)
・・・とまあ、なんかそういうのを短く書こうと思ったらこんな感じになりました。

【6.ハッピーバースデー】
最初に浮かんだのは、子どもを亡くしても誕生日のお祝いを毎年続ける女性の話。
なんかサイコっぽくなったのは、最初の2段落くらいを書き終えたくらいからですね。
自分は頑張ってるぜ!と書いてしまうと、実はダメダメでした~と続けたくなるのが
人情ですよね。
そんなわけで、結局最終的にはいつもの和泉節って感じに仕上がりましたとさ。

こうやって振り返ると、意外と普通に見えない?
・・・見えませんかそうですか。
いや、何か手直しすれば普通になりそうな作品もちらほらある気がして。
やらねーけども。
良いんだよ、これはこれで味があって!(逃げ言葉)

何かやってて意外と楽しかったので、いずれまたやろうかと思います。
コメント (6)
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【SS】ハッピーバースデー

2009-08-19 15:49:32 | 小説。
8月19日は、息子の誕生日だ。
例年通り、近所のケーキ屋でバースデーケーキを買い、あの子の好きなハンバーグを作る。
幸せそうな笑顔を思い浮かべながら。

旦那とは、昨年離婚した。
私と彼は、きっと一生分かり合えないということが分かったから。
価値観の相違と言うのか、思考の食い違いと言うのか。
それは分からないが、とにかくもう一緒にいられないと思った。
婚姻届という紙切れ一枚で始まった夫婦生活は、離婚届という紙切れ一枚で簡単に終わった。
ちなみに、慰謝料その他は全くもって貰う気はない。
私は自立したひとりの大人なのだ、という自尊心がそうさせた。

実際、私は人より――というより、男よりもずっと仕事ができた。
離婚して1年で管理職への出世が決まったし、給料も十分に貰えている。
あんな薄情で頼りない男なんかいなくても、立派に家庭を守っていけるだけの財力があるのだ。
それに、母である私の方が包容力だって優れているだろう。
些細なことに目くじらを立てることもないし、今日だって仕事を早く切り上げてお祝いの準備をしている。
私は、母であり、父なのだ。
私が、自分と息子を守ってゆくのだ。
そう思うと、心の底から力が漲ってくるのを感じることができる。
そうだ、私は生きている。
逞しく、強く、生きている。

ハンバーグを焼き上げ、付け合せのポテトサラダを盛り付けたところで、携帯が鳴った。
元・旦那からだった。
何を思って、今更・・・。
とにかく、私は電話に出ることにする。
「はい」
なるべく事務的に、そう言った。
「やあ・・・久しぶり。元気にしているかい」
「ええ、元気よ。貴方は?」
「うん、俺もまぁ、元気にやってるよ。寂しくないわけじゃないけどね」
電話越しに情けなく笑う。
本当に、弱い男。
「それより、さ」
そして彼は、本題を口にする。
「今日、あの子の誕生日だったろ。もしかして・・・今年もお祝いをするのかい?」
「当たり前でしょう。母親だもの。貴方と違って、ちゃんと子どもの面倒は見ているのよ」
そう、彼は薄情な人だった。
子どもの誕生日も素直に祝えないような、常識のカケラもない人だった。
だから・・・そんな子どものことを何とも思えないような人だから、私は彼と別れたのだ。
「はは、参ったなぁ、こりゃ・・・僕は僕なりに、子どもを愛していたつもりだよ」
「適当なことを言わないで。不愉快だわ。用件はそれだけ?」
「あぁ、いや、待ってくれ。もうひとつだけ」
未練がましく、彼が引き止める。
今更何を言おうというのだ。
「まぁ・・・何だ。もう、そういうのはやめにしないか」
「そういうの・・・?」
「分かっているだろう、俺が何を言いたいのか」
分からない。
・・・分からない。彼が何を言おうとしているのか、分からない。

「もう、死んだ子の誕生日を、まるで生きてるかのように祝うのはやめた方がいい」

死んだ子。
死んだ、子?誰のこと?何のこと?
かれがなにをいっているのかわからない。

「別に、あの子の誕生日に思いをめぐらせることをやめろなんて言わない。
 でも、あの子は4歳で死んだんだ。今、ケーキの上にロウソクは何本立っている?
 ・・・6本じゃないか?
 あの子はもう年を取らない。成長しない。だから、大きな服もランドセルも要らない!」

うるさい。
うるさい、うるさい、うるさい!

「貴方が何を言っているのかサッパリ分からないわ!あの子は今日、6歳になるのよ!」
「何を言ってるんだ!いい加減、こっちへ帰って来い!俺は・・・君のことが心配なんだ」
「私を心配する必要なんてないわ!仕事も上手くいっている!ひとりであの子を守っていける!」
「・・・じゃあ聞くが、君は今、一体何の仕事をしているんだ?」
「仕事?・・・私の仕事は、そう、アレよ。システムエンジニアよ!」
「それは俺の仕事だろう。それに、仮にシステムエンジニアだとしたら――
 子どもと一緒にいられる時間なんてそうそう取れるはずがない。君も良く知っているだろう?」
「いや、そんな、だって!ちゃんと毎月お給料は銀行に振り込まれているわ!」

「それは、俺が君へ支払っている慰謝料だ」

「い、慰謝料・・・?」
「この話も、もう何度もしているだろう?
 ひとりでは生きていくことも出来ないだろうから、慰謝料ってカタチでお金を振り込むって」

分からない。
何も、何も分からない。

あの子は死んでなんかいない。
私はあの子を守っていける。
私は自立した、仕事のできる女なのだ。

――全部、嘘だというの?

私は慌てて預金通帳を開く。
今月の給与振込を確認する。
きっと、きっと――社名と給与振込である旨が記載されているに違いないのだ!

しかし、そこには、社名も給与という文字もなく。
ただ、無機質な数字の並びが記載されているだけで。

じゃあ、私は。
私が、頑張っていると思っていた日々は。
あの子との、幸せな日々は。
一体、何だったというのだろうか。
私の記憶も、思いも、丸ごと全部、嘘なのだろうか。

「おい、聞いているか、おい!」

遠くから、懐かしい男の声が聞こえた気がした。
だけど、そんなのどうでも良かった。
私には、あの子との生活こそが全てなのだから。
こんなことで、こんなところで、落ち込んでいられない。
そうだ、お祝いの準備をしなくちゃ。
可愛い我が子の、6歳の誕生日。
ハンバーグとポテトサラダ、そして大きなケーキで、お祝いをしなくちゃ。

私は思考に蓋をして、ゆっくりと立ち上がる。
そして、ハンバーグとポテトサラダとケーキをテーブルに並べて。
「お誕生日、おめでとう」
と、誰もいない部屋でひとり呟いた。
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【SS】お引越し

2009-08-19 14:31:58 | 小説。
毎日のように遊びに来る幼馴染がいた。
だらだらとゲームをしたり、本を読んだり、一緒に遊んでると言えないような日が大半だったと思う。
「よう」「じゃあな」
だけしか喋らないこともあった。

夏休みの最終日、例によって彼がうちへと遊びに来た。
おう、と挨拶だけして、クーラーも効いていない部屋でぼんやりと漫画を読む。
ふたりとも宿題は済んでいたのだが、僕はやっぱり憂鬱だった。
「夏休み、今日で終わりだな」
「あぁ」
「明日からまた学校かー、めんどくせぇー」
「そう言えば」
彼は、何度読み返したか分からない漫画に視線を落としたままで言う。
「俺、今日引越しするから」
「は?」
「だから、明日からは違う学校に行くことになる」
「・・・マジで?」
「うん、マジで」
あまりにも急な発言に、僕は何だか騙されたような気分だった。

結局その日は、昼前に帰って。
次の日、本当に学校には来なかった。
それでもまだ、何だか信じられないような、夢を見ているような、不思議な気分だった。

当然、それ以来彼はうちに遊びに来ていない。
一度電話が来たが、何だかあまりにもいつも通り過ぎて、悲しいとか寂しいとか思う暇もなかった。
それでも僕は、彼を親友だと思っていた。
何も喋らなくて良い関係。
ただそこにいるだけの存在。
何だか、そんなのが心地よかった。
少し経って、本当にどこかに行ってしまったんだと理解できて、やっと少し寂しくなった。

何も言わずに引っ越していった彼は、どんな風に思ったのだろうか。
元々感情を表に出すタイプではなかったし、そんな彼をどこまで理解できているのか分からない。
彼もやっぱり寂しかったのだろうか。
だから、ギリギリまで何も言わず、日常を続けて行ったのだろうか。
それとも、単に常識のないヤツだったのだろうか。
・・・それも否定できないな、と少し笑った。

いつかの電話で聞いた声は、それなりに元気そうだった。
なら、まぁ、今のところはそれでいいか。
僕はそんなことを思いながら、自分のベッドに寝転んで、彼のお気に入りの漫画に手を伸ばした。
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【SS】洗脳テレビ

2009-08-19 13:40:53 | 小説。
こんな噂を聞いた。

テレビというのは、ひどく受動的なものである。
例えば、同じような情報入手ツールであるインターネットは、自ら探さない限り何の情報も示さない。
しかし、テレビはスイッチひとつで情報を垂れ流す。
ユーザーは、特に考えることもないままにそれを受信するのだ。
だから、テレビは受動的なツールだといえる。
さて、その特性を利用――悪用して、人々を洗脳しようとする輩がいるらしい。
昔から、放送終了後の砂嵐を見ていると云々、という話は存在するが、そんな回りくどいことはしない。
堂々と、日中に、さりげなく自然に普通に放送されているというのだ。
その洗脳内容は、日本を滅ぼそう、というもの。
国民から希望を奪い、意思を奪い、思考を奪い、国の内側から滅ぼそうというもの。
なるほど、テレビを鵜呑みにする人間に対しては意外に効果的なのかも知れない。
そして更に、そんな洗脳番組に対して非人道的であるなどといった批判は通用しない。
なぜならば、日本では表現の自由というものが存在するからだ。
報道に関しては、嘘を伝えてはいけないという決まりがあるが、彼らは別に嘘をつく必要はない。
ただ、国民の絶望を煽るだけでよいのだから、都合の良い事実を偏向して伝えれば良いだけだ。
だから彼らは裁けない。
そして、日本という国はやがて崩壊していくだろう。

「お前、バカじゃね?そんなことして誰が得するってのさ」
「そうかもしれないけど。でも、間違ったことを言ってるわけじゃないと思ってさ」
「間違ってないけど正しくもないだろ。ある一面だけを取り上げてぎゃあぎゃあ騒いでるだけさ」
「まぁ、そうだけどさ」
「くだらない都市伝説だよ。斧男やメリーさんの方がいくらかリアルで怖いんじゃね?」
「そうかなぁ」

確かにそうかもしれないな、と思った。
別にテレビは襲ってこない。
直截的な害はない。
だったら、斧を持った男がベッドの下に隠れてたり、見ず知らずの女の子が電話してきたりする方が怖い。

「そうさ、そんな話、つまんないね。日本が滅びるとか、中二病だろ」
「うん・・・そうかもね」
「日本はずっと安泰さ、平和そのものじゃん。それを滅ぼそうとするやつなんかいるわけねー」
「うん、まあ、そう・・・かもね」

言いつつも、一概にそうとは言えないよな、と思った。
日本を滅ぼそうとしている人間なんて、沢山いるんじゃないだろうか。
この国を取り囲む、青い海の向こう側とかに。
そして、海を渡った彼らが、言葉巧みに『洗脳テレビ』を作らせ、流させている可能性は否定できない。
そう考えると、僕はやっぱり、怖くなるんだ。
だって、そんなの僕にはどうにも対処できないのだから。
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【SS】かぼちゃとプールと蝉の声

2009-08-19 13:15:04 | 小説。
ジャイアントかぼちゃ、というのをご存知だろうか。
正式な名前は、確かアトランティックジャイアント・・・だったと思う。
そのまんま、超でっかいかぼちゃで、基本的に食用ではない。
ただ、その異常なまでの大きさから観賞用として用いられるというものだ。

僕らの中学では、何故か我々生き物係(正式には園芸部)が夏休みの間にこれを育てている。
顧問の先生によると、出来たかぼちゃは9月ごろに行われる大会に出すらしい。
そんなわけで。
蝉の鳴くクソ暑い真夏の朝から、僕はこうして学校の花壇で水撒きをしている。

「今日もあっついねえ!」
背後から、元気な女の子の声が聞こえた。
クラスメートの小野さんだ。
「あ、うん、暑いね」
女の子とどう接して良いか分からない僕は、バカみたいに言葉を反復した。
「また例のかぼちゃ?毎朝大変だね」
「うん、まぁ」
「夕方とかじゃだめなの?」
「うん、えと、昼過ぎると地面が熱くなって、お湯を撒いてるみたいになっちゃうから」
すると、小野さんはうんうんと大げさに頷いた。
「そっか!そうだよね、かぼちゃもお湯かけられたら嫌だよね!」
「そうだね・・・あと、毎日ってわけじゃなくて」
「あれ?そうだっけ?」
「うん。2、3日に一回」
あれ?と今度は大きく首をかしげて、大きなハテナマークを浮かべる。
「毎日水あげないと、枯れちゃうんじゃない?」
「ええっと、その、枯れる寸前まで放置して、それから一気に水をやると大きくなるんだって」
「へえ~!そうなんだ、知らなかったよ!」
目を大きく見開いて、感心したように彼女はそう言った。

「小野さんは、今日もプール?」
「うん、暑いからねー。本当は毎日来たいんだけど」
小野さんは、学校の近所に住んでいるらしく。
市民プールの代わりにいつも学校のプールで涼んでいる。
「っていうか」
「ん~?」
「小野さんも、毎日じゃなかったんだね」
「うん、そだよ。2日に1回とかそれくらい?さすがに毎日は来ないよぉ」
あははっ、と快活に笑う。
夏の太陽のような、眩しい笑顔だった。
「あれ、でも、私達ってなんかいつも会ってるよね?」
「え?ああ、そうだね」
「お互い毎日じゃないのに・・・なんか、ちょっと不思議だね」
「偶然だよ」
「うん、そうだけど。その偶然が、なんかこう、不思議じゃない?」
言われてみれば、そうかもしれなかった。
2分の1や3分の1って確率は、1回や2回なら割と起こる方だと思う。
でも、3回、4回と連続して発生することは殆どないはずだ。
不思議といえば、不思議・・・かな。

大きな如雨露で、ざぶざぶと水を撒く。
渇いてひび割れかけた土は、一瞬その水を弾いた後、驚くほど素早く吸収していく。
僅かに芽を出したかぼちゃは、あとどれくらいで実をつけるだろうか。
過酷な夏の日差しをものともせず、たくましく成長していく植物が、何だか少し頼もしい感じ。
「それじゃあ、またね」
小野さんは、楽しげに笑って僕に手を振る。
「うん、ま、またね」
不自然にドキドキしながら、僕も手を振る。
蝉は、相変わらずうるさく鳴いていた。
今日も一日晴れらしいから、蝉も一日中鳴いているのだろう。
――ああ、もう、あっついなあ。
だけど、また明後日くらいには水をやりに来なくちゃな。
面倒な仕事だけど、何だか少しだけ、楽しみな気がした。
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【SS】壊れていく、この世界で。

2009-08-19 11:48:28 | 小説。
世界はもうすぐ、滅亡する。

巨大化した太陽は大地を、海を、人々を焼き尽くし、大陸の8割は砂漠と化した。
僅かに生き延びた人々は、オアシスを中心とした小さな集落で、身を寄せ合うように生きている。
私も、そのひとり。
集落の外からやってくる人々に、食料や薬――そして武器を売ることを生業としている。

「失礼――」
軽鎧に身を包んだ男性がひとり、私の店にやってきた。
久しぶりのお客様だ。
「いらっしゃいませ。何をご所望でしょうか?」
「食料と、この辺りの魔物と相性の良い武器が欲しいのだが」
「はい、でしたら――」

・・・魔物。
そう、太陽が巨大化してすぐに、世界には魔物と呼ばれる怪物があふれ出した。
それは既存の生物が突然変異したものだ、と学者様は言う。
突然変異だか何だか知らないが、生活を脅かすものは排除したいし逃げ出したいと思う。
だから、彼らのような戦士が必要なのだ。

なるほど、とお客の男性は呟いた。
「この辺りの魔物は皮膚が硬い。私の剣もこの通りだ」
すらりと抜いた見事な剣は、実に見事に歯こぼれていた。
「ええ、ですから、ここでは主に切れ味よりも重量に拘った武器を扱っておりますわ」
それは、女の私では両手で引きずるように抱えるのがやっとの大剣だった。
つまり、切り裂くのではなく叩き潰すためのものである。
「皮膚は硬いのですが、意外と押し潰すような衝撃には弱い――と、伺っております」
私は当然、闘ったことがないので伝聞になってしまいますが。という但し書きを忘れない。
「うむ、確かにこれならば効果がありそうだ」
言って、とても安いとは言えない額をさらりと支払ってのける。
名のある戦士なのかも知れない。
「お買い上げ、ありがとうございます。あとは、食料でございますね」
「ああ、できれば日持ちの良いものを頼む」
「承りました」
恭しくお辞儀をし、在庫の棚から干し肉などの保存食を適当に引っ張り出す。
戦士は、店内の椅子に腰を下ろすと、ぽつりぽつりと自らのことを話し始めた。

「私は今、かの『魔王』を倒すための旅をしていてね」
「まあ!『魔王』を!?」
『魔王』とは、この事態を招いた張本人のことである。
つまり、太陽を不自然に巨大化させた者。
それは人間を辞めた人間であり、半人半魔の化物だと言う。
一説では、魔物は全てその魔王が作り出したものではないかという話もある程の存在だ。
そして――。
「では、お客様は『勇者様』なのですね?」
「ああ――確かに、人は私をそう呼ぶ」
そして、魔王を討つ者を、我々は敬意を込めて勇者と呼ぶ。
「素晴らしいですわ。そのような偉業、我々には到底まねできることではございません」
「よしてくれ、まだ本当に目的を達したわけではない」
とは言いながらも、口元には笑みを浮かべる勇者様だった。
「いいえ、『魔王』に挑むその姿勢が、既にご立派ですわ」
「そうかな」
「ええ、ええ。そうですとも」
私がにっこり笑ってそういうと、勇者様はまんざらでもないように照れて頭を掻いた。
少し幼さの残る印象だった。

袋にいっぱいの食料と水を受け取り、代金を支払うと、勇者様は笑顔のまま店から出て行った。
その背中に、私は精一杯の声援を送る。
「きっと!きっと魔王を打ち倒してくださいませ!」
勇者様は、振り返ることなく手を上げてそれに応えた。

世界はもうすぐ、滅亡する。
どうか、その前に。
きっと、世界を救ってくださいませ。
ええと・・・確か、57人目?の勇者様。
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【SS】彼女と喧嘩

2009-08-19 10:23:38 | 小説。
「ざっけんじゃないわよっ!?」
彼女はひどく怒って、僕の脛を蹴りながら叫ぶ。
「痛ってーな畜生!いや、ごめん僕が悪いんだけどさ」
「ったり前でしょバカ!」
「・・・いや、何も泣くことないじゃない」
「は!?泣いてないし!意味分かんないし!っていうかあたしがこれくらいで泣くかっ!」
がっつり泣いてらっしゃるじゃないですか。
って言ったらもう一発蹴られた。超痛い。

ま、本当に、悪いのは僕なんだけどね。
彼女と約束してたの完全に忘れて、クラスの男友達とカラオケ行って。
帰ってきたら家の前で半泣きの彼女が待ってたわけだから。
後で気付いたけど、携帯の不在着信が10件越えてた。
マジでやっちまったなー・・・。

「と、とりあえず・・・上がる?」
玄関の鍵を開けながら、様子を伺うように尋ねる。
「っく、まぁ、上がるけどさ・・・」
普段強気な彼女は、涙をこらえるのに必死だ。
ドアを開け、一人暮らしのワンルームに彼女をお通しする。
普段からそこそこ掃除はしている方だと思うけど、彼女を上げて良いレベルかどうかは知らない。

「ええと、まぁ、適当にその辺座ってて」
「・・・ん」
「何か、飲む?つっても水かコーヒーしかないけど。コーヒーで良いかな」
「・・・ん」
「砂糖とミルクは多目・・・だよな?」
「・・・ん」

やっべえ、激怒ってるよこの人!
さっきから、一回も目ェ合わせてくれねーもん。

「はい、コーヒー」
自分の分と合わせて2杯のコーヒーを狭いテーブルに置く。ソーサーって何ですか。
「・・・・・・」
彼女は、無言でそれを口に含む。
「あー・・・ええと」
「まずい」
「うん、いや、ごめん」
「は?何が?」
うわーやべーマジ切れパターン入りましたよコレ。
「ええっと・・・コーヒー、安物しかなくてさ」
「んなことどうでも良いのよバカ」
しかも選択肢間違えましたよ。2択で。50%で。
今日はもう、何をやってもダメな気がした。
「あ、あと、その、約束・・・すっぽかしてゴメン」
「謝る順番が逆でしょバカ死ね」
あー、やっぱり順列は重要でした。そりゃそうか。
「いや、その・・・うん。ごめん」
「るっさいわね、それだけしか言えないのバカ死ね消えろ」
だんだん暴言が酷くなってる!?
急に友達に誘われてさ、とか言い訳してもダメだろうな、これは。
つーか火に油って気がする。
「ほんと、くどいけどゴメン。埋め合わせに、何でもするからさ?」
「・・・何でも?」
うお、食いついた・・・。
しかし、ここは、止むを得ないというか何と言うか。ええい、突っ走れ自分!
「う、うん、何でも。僕にできることなら」
「じゃあ永遠の命を頂戴」
「どう考えても無理だろ!?」
「世界征服させて?」
「スケールがでかい!」
「ギャルのパンティーおくれ?」
「薄々気付いてたけど、神龍じゃないからな僕は!?っていうかそれは微妙に可能だけど!」
「勿論冗談よ、このド低脳が」
「酷い罵倒だ!」
「ふう・・・仕方ないわね、じゃあ、そうね。跪いてあたしの足をお舐め?」
「う」
「何?まさか出来ないとでも?」
そりゃあ、可能か不可能かで言えば、可能だけど。
なんつーかそれは人間の尊厳的にアウトじゃないでしょうか。
「ホラ、許して欲しければとっととやる」
コーヒーを置いたテーブルに座り、足先を僕の口元へ向ける。
短いスカートから伸びる黒いストッキングが、妙に艶かしい。
「いや、つーか、ストッキング越しかよ」
「何?生脚がいいのこの変態」
「ストッキング越しってのもそれはそれで変態なんじゃ・・・」
「ごちゃごちゃうるさい」
はいそーですねごめんなさい。
これはもう、覚悟を決めるしかないのかなぁ。
ああ、さようなら人間の尊厳。
お父さんお母さん、何となくごめんなさい。
「じゃ、じゃあ・・・」
意を決して、そっと彼女の足に手を添える。
瞬間、ぴくりとその足が痙攣した気がした。くすぐったかったのだろうか。
「あ。勿論『約束すっぽかして申し訳ございませんお嬢様』と言ってからね」
「何が勿論なのかがさっぱりだが」
「うるさい」
「・・・『約束すっぽかして申し訳ございませんお嬢様』」
「・・・・・・うん」
・・・なんだその微妙な顔は。嫌ならやらすなよ。
そして僕は、ゆっくりと、そのストッキングで覆われた足に舌を近付け・・・。

「い、いや、いやいやいやいやいや、やっぱなし!」

急に、彼女は僕の手を振り払うように足を引っ込める。
「つーか!あんたもこんなこと本気でやろうとしてんじゃないわよ!」
「な、お、お前がやれっつったんじゃねーか」
「うるさい、バカ!有り得ねぇよ、バカバカバカ!」
ばたばたばた。
僕の顔を蹴り上げんばかりに、両足を上下に激しく動かす。
「ちょ、落ち着けアホ!」
「な――アホって!アホって言った!?」
「いや、お前だっていつもバカバカ言ってるじゃねーか」
「バカは良いの!でもアホはダメでしょ常識的に考えて!」
「何でだよ、基準がわかんねーよ」
「バカは可愛いからいいの!」
「意味わかんねー・・・」
「はぁ!?そんなこともわかんない・・・わ・・・け」
そこで、今度は足をぴたりと止めて、スカートの裾を直す。
「・・・・・・み、見た?」
「・・・は?何を?」
「何を、って・・・そりゃ、その、す、スカート・・・の」
「あー、そりゃお前、そんなスカートで足バタバタしたら」
――無言でアゴを蹴られた。
「痛ェなコラ!?」
「バカ、アホ、死ね!スケベ変態強姦魔!」
「うおぅ、何でそこまで言われなきゃならんのだ!」
つーか今普通にアホって言いましたよねお嬢様!?
「そんな無防備に、っつーか攻撃しながら見せられたってエロくも何ともねー!」
「エロっ・・・て、この、うぐっ」
泣きそうになりながら、これ以上直しようもないスカートの裾をぎゅっと握り締める。
・・・言い過ぎた?
「・・・も、もう、スカート穿かないっ」
「それはまた・・・極端な」
「うるさいっ、穿かないったら穿かないっ」
「いやー・・・その、可愛いと思うぞ?スカート」
「でもどーせあたしが穿いても、え、エロく・・・ないんでしょ?」
あれ?
・・・なんだ、今度はそんなところに引っかかってたのか?
これは、挽回のチャンスかもしれない。
僕の目には見えるぜ、はっきりと――彼女の胸元に浮かぶ選択肢ウィンドウが!
「そんなこと・・・」
「え?」
僕は、今度こそと気合を入れて、心のカーソルを導く。

「そんなことない!お前は十分エロいぜ!黒ストッキングとか!」

その後、何故か泣き喚きながら殴る蹴るの暴行を加えて、彼女は逃げるように帰りましたとさ。
ああ、空気が読めるようになりたい。
せめて50%の選択肢くらいは間違えない程度に。
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予告。

2009-08-19 00:08:22 | いつもの日記。
先ほどまで山本さんがウチに遊びに来てたんですが。
そこで少し話題になった「脊髄反射小説」(略してSS)をやってみようかと思います。
実は、明日までお盆休みなんですが、若干ヒマなんですよねー。
で、お盆休みのうちに何か小説書きたいなー、というのが元々ありまして。
あと、最近あまりにも小説書いてなかったので、リハビリも兼ねまして。

というか、そもそもSSって何よ?っていう定義から行きましょうか。
脊髄反射、なんてややこしい言葉を使ってますが、要は考えなしに書いた小説、
ということです。
普通だったら、冒頭や山場、結末などの大雑把な流れを考えて、キャラを作成・配置して、
肉付けして作っていく感じなのですが、その辺を一切やりません。
もう、書きながら考える。
っていうか書いてから次を考える感じ?
そうやってインスタントに書き上げる小説を脊髄反射小説と呼ぶことにします。

次に、具体的なルール。
(1)一度思いついたら途中でやめない!何があっても書き切る!
(2)面白がってもらえるかな?受けるかな?ということは全部無視!考えない!
(3)書いてしまったら、誤字脱字などを除いて修正はしない!
要するに、引かぬ!媚びぬ!省みぬ!という漢らしいルールですね。
漢らしいとか言うな。

そんなわけで、明日決行です。
どうなることやら。
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