「晶はね、平等という言葉が分からなくなったよ」
学校の生徒は皆平等、そう教えられてきた。
晶も――伊織も、楓も、碧も、青葉も、朝日も。
そして。
「伊月のことも、平等だと思ってた。でも何か違うの」
何故だろう。
皆友達で、皆大好きなのに。
伊月も同じ――そう思うと、何だか凄く、疑問が湧いてくる。
誕生日には、伊月だけ皆と違うプレゼントをあげている。
教室の席替えで伊月の隣になるようにズルをしている。
伊月の部屋の前を通る時だけドキドキする。
伊月だけ、明らかに違う。
晶はおかしくなってしまったの?
「伊月のことだけ平等じゃないんだね、晶」
と、伊月がその低い声で優しく言った。
「そうなんだ。変だよね」
「そうだね、晶は悪いことを考えているんじゃないかな」
悪いこと。
伊月は何でも知っている。
大人が読むような古い本を隠れてこっそり読んでいるからだ。
だから、伊月が言うことはいつだって正しい。
「いいかい晶、それを昔の人は『サベツ』と呼んでいた。
でもサベツは悪いことだから、皆でやっつけてしまったんだ。
教育の行き届いた今でも、時々サベツをする人が出てくる。
そういう悪い人は、子供の内に大人がやっつけてしまうんだよ」
「ええ? 晶、やっつけられちゃうの? 嫌だよ!」
「大丈夫、伊月が黙っていれば済む話だ。
だから、晶は悪い考えを自分で治そうね」
伊月は、晶の頭を撫でながらそう言った。
サベツ。
初めて聞く言葉だった。
平等はいいことで、サベツは悪いこと。
晶は伊月をサベツしている。
だから晶は悪い子。
そう思うと、晶はスッキリした。
悪い子だと言われたのは嫌だけど、治せばいいんだ。
でも――。
伊月だけは平等じゃない。
晶の、特別。
その気持ちをなくすのは、何だか悲しい気がした。
「じゃあ、伊月はもう自分の部屋に戻るね」
「うん、ありがとう」
と言いながら、晶は手近にあった椅子を持ち上げて。
伊月の後頭部を思い切り殴りつけた。
晶の部屋の床が、伊月の血で赤く染まる。
それはなんだか、嬉しかった。
晶は伊月にしてみたいことがあった。
伊月の服を全部脱がして、裸にしてしまうんだ。
伊月はもう動かないから、晶の好きにできる。
晶より筋肉が固い気がした。
胸は晶のように膨らんでいない。
足の間にあるこれは――何だろう?
晶にはない。
一通り体を眺めた後。
これでもまだ足りないと思った。
顔を舐めてみたり、胸を触ってみたりしたけど、足りない。
もっと、伊月とひとつになりたいと思う。
舐めるより、触るより、もっともっとひとつに。
そうして晶は、伊月を食べることにした。
全部食べ切るのにどれくらいかかるかな。
その間は、ずっと幸せだな。
晶はそう思って、伊月を部屋のクローゼットに押し込んだ。