(月の巻)

御父冷泉院御母贈皇太后起子
三條院 御諱居貞。寛弘八年即位長和五
年譲位寛仁四年崩御三条院
こゝろ
にも
あらで
うきよに
ながらへ
ば
よは
の 恋し
月哉 かるべき
(花の巻)

三條院
こゝろにもあらで
うきよにながらへ
ばこひしかる
べきよはの
月かな
後拾遺集雑
上に例なら
ずおはし
まして
位などさ
らむとおぼ
しめしける
ころ月のあ
かりけるを
ごらんじて
とある。
○御製の御心はもとよりの御
やまひもおもくおはしますうへ

御こゝろくるしめさせたまふこと
おほければ御位さらせたまは
んの御こゝろもつかせたまひ
とふも久しうおはしまさ
じとおぼしめせどもし
さもなくてみ心の外に
ながらへさせたま
はゞ禁中のこの月
をおぼしいだして
恋しかるべきとよま
せたまへるなり。また
詞花集に月を御らん
じてよませたまふとて
秋にまたあはんあはしもしらぬみは
こよひばかりの月をだにみん
これかれ思ひあいするにいと
あはれなる御うたともなり
栄花物語玉のむらぎくの
巻見合すべし。